研究課題/領域番号 |
20K01487
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 (2022) 常葉大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
林 昌宏 愛知学院大学, 法学部, 准教授 (00632902)
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研究分担者 |
川島 佑介 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (60760725)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 地方港 / サバイバル戦略 / コンテナ港 / クルーズ船 / 地方分権 / 中央集権 / 国土交通省 / 港湾間競争 / 国際競争力強化 / 清水港 / 茨城港 / 地方分権的な制度 / 集権的な国家政策 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、港湾をめぐる集権的な国家政策が顕著となっているところで、地方政府が管理・整備を続ける地方港のサバイバル戦略の特徴は、どのようなものなのかを明らかにする。この問いに対しては、地方分権的な制度と集権的な国家政策のねじれの中で、サバイバル戦略がいかにして形成され、実行されているのかに注目しつつアプローチする。これによって本研究が捉えるのは、集権的な国家政策が導入され続けている一方で、地方分権的な制度が配置・作動していることが、中央政府と地方政府の自律性をどのように規定し、政策決定・政策帰結の導出にいかなる影響を及ぼし得るかである。
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研究実績の概要 |
2022年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の一定程度の収束を受けて、研究内容の軌道修正を試みた。まず、戦後日本の港湾政策の70年の歩みについて制度作動の観点から調査・分析した。これにより、戦後日本の港湾政策は、4つのフェーズに分けられ、それぞれにおいて特徴的な制度の修正が施されていたほか、関連する諸制度とも接続させながら港湾整備事業が進められてきた実態が明らかとなった。このような知見は、今後の地方港を含めた日本の港湾の実態分析、あるいは欧米やアジアの港湾との比較分析などに向けての重要な基盤となるはずである。 つづいて、研究代表者と研究分担者で、主に地方港の実態分析を進めた。具体的には、茨城、川崎、清水、名古屋、四日市、舞鶴、長崎、佐世保、那覇の各港の年史、レポート、統計等の資料の調査・収集、関係者へのインタビュー調査を継続して行い、これらの開発過程や現状等を分析した。それにより近隣港の間で競合とは言い切れない関係性が生起していた点や、地方港の管理運営について県・市町村ともに当事者としても競争意識は必ずしも高くないことなどが明らかとなった。そのほか近年の港湾政策においては、積極的に進められているカーボンニュートラルポートやクルーズ船の誘致などの新規事業や、RORO船のような既存設備からの規定性が弱い部分においては一定の競争が存在している実態を確認できた。そして、政策立案・決定の場である国では、港湾間の競争あるいは連携に主眼が置かれている一方で、県レベルでの港湾行政は、産業誘致や都市(再)開発、魅力度向上といった他の行政活動から直接的な影響を受けていた。そのことから両者の姿勢の間には、大きな乖離が存在していることが仮説的ではあるが明らかとなったのである。 上記の知見について研究代表者及び研究分担者は、学会や研究会などで報告を行い、その深化に努めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行とその継続により、研究開始時点で予定していた調査計画は、大幅な見直しを余儀なくされたままである。また、2022年度は研究代表者が所属先を変更することになり、研究代表者・研究分担者ともに他の研究プロジェクト等への参画もあって、多忙を極める1年となった。 他方で、2022年度になって感染症が収束し、県境を超えた移動に制約が無くなったため、文献調査や関係資料の調査・収集は順調に進めることができ、研究成果としてまとめることもできた。 これらを踏まえて、当初からの遅れは一定程度回復できたが、不十分な点も残されているものと考えられる。そのため区分を「(3)やや遅れている。(Slightly Delayed)」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、COVID-19の流行状況の悪化が無ければ、研究代表者と研究分担者が共同で、あるいは分担して北関東地方(茨城港)、東海地方(名古屋港、四日市港、清水港、三河港)、山陰地方(舞鶴港)や九州・沖縄地方の港湾(主に長崎港、佐世保港、那覇港)で現地調査(資料・インタビュー調査)を実施する。 これらを踏まえて、地方港とそれを管理・整備する地方政府は、クルーズ船の誘致やコンテナ航路の維持・新設に向けて、どのようなサバイバル戦略を採用し、中央政府や他のそれらといかなる関係を構築してきたのかという点や、こうした関係のもとでの政策決定過程や導出された政策帰結には、どのような特徴が備わっているのかについて分析する。それからCOVID-19の流行・拡大が港湾政策ならびに地方港とその後背地に及ぼした影響についての分析を合わせて行う。 以上の取り組みを通して本研究は、集権的な国家政策に絡めとられ、かつ国際的あるいは国内の港湾間競争において厳しい環境に取り巻かれている地方港のサバイバル戦略の実態解明を目指す。また、唐突かつ世界規模で発生した感染症という危機を受けて諸アクターがどのように対応し、いかに港湾政策を修正してきたのかなどの点も明らかにしていきたいと考えている。 なお、蓄積した知見は適宜、所属している学会や研究会において発表を行い、論文等を執筆・公表していくことにしている。そして、不可逆的な性質を備えた地方分権改革、地方創生の推進、そして観光立国をめぐる制度や組織設計を積極的に提言し、制度論や政府間関係論といった政治学・行政学の発展への貢献を果たしていくことが、本研究の最終的な到達目標になる。
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