研究課題/領域番号 |
20K01495
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
天野 尚樹 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90647744)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 千島列島 / 北方領土問題 / 日露関係 / ボーダースタディーズ / 島嶼研究 / クリル諸島 / 近現代史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は日露関係の焦点である北方領土・千島列島(以下、千島列島)の近現代史を日露の歴史家の協働によって叙述しようとする試みである。領土問題として依然として係争中である千島列島の近現代史は、日本人の手によってもロシア人の手によっても、入手しやすいかたちで出版されてはおらずまた研究水準も低いままである。日露双方の国民が現場の歴史を知らないままで、中央政府間で外交交渉が続けられている。こうした状況は領土問題がどのようなかたちで解決されたとしても、事実上未知の地で新たな歴史がはじまることになる。日露の歴史家が協働で千島列島史を叙述することは、隣国同士の良好な未来のための基盤構築として喫緊の課題である。
|
研究実績の概要 |
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、現地調査を断念せざるを得なくなったため、公刊資料の収集・分析と同比較史の視点を取り入れて研究を進めることとした。まず、隣接するサハリン島における戦争と境界変動についての研究を進め、1920-25年の北サハリン保証占領期、および1945年の日ソ戦争史についての論文を発表することができた。これらは、コロナ禍およびウクライナ侵攻以前に収集した資料に加え、ロシア人研究者の献身的な協力によって新たに入手できた資料に依拠している。また、戦争と境界変動の視点から19世紀-21世紀までのサハリン島史を通史的に概観する研究ガイドを英語で執筆し、日露境界史研究の発展にも資することができた。 帝国日本の終焉過程については、上記のサハリン島史に加え、南方境界の歴史を視野に入れた比較史研究をさらに進めることができた。従来から続けてきた沖縄に加え、1946-1953年に米軍の統治下にあった奄美群島の歴史に焦点を当てて、資料収集と分析を進めることができた。北方境界と南方境界の帝国の終焉過程を概念化した上で、奄美群島の境界変動史を整理した論文を発表し、境界変動の比較史という方法論的基盤をより強固なものとすることができた。 ロシア調査が困難ななか、ロシア語資料については公刊資料の丹念な収集を続けるとともに、北海道文書館(北海道江別市)、鹿児島県立奄美図書館での資料調査をおこない、新たな資料的発見が得られたことは大きな収穫である。 口頭報告では、ロシア連邦サハリン州での郷土史関連の国際シンポジウムに招待され、オンラインでの報告をおこない、コロナ禍で顔合わせすることができなかった現地研究者たちと有益な意見交換をすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロシアによるウクライナ侵攻のためロシア現地での資料収集は断念せざるを得なかった。この状況は数年単位で継続することも予想され、当初計画していた研究方針は変更せざるを得ない。当該研究のテーマが戦争や領土変更の歴史に関わるものであるため、現地の研究者との研究協力も表立っておこなうことは避けざるを得ない。このような状況は、ロシア語新資料の発掘に基づく千島列島戦後史の叙述という当初の研究計画に大幅な遅れをもたらすことになった。 一方、こうした資料不足を補う比較史研究については、サハリン島史、および新機軸としての奄美群島史について複数の研究成果を発表することができ、資料収集の不足を穴埋めする方法論的基盤の強化に成功し、上記の遅れを一定程度挽回することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ロシアでの資料収集は今年度もおそらく不可能である。したがって、現在入手し得ている資料を主たる材料として千島列島戦後史に関する叙述をはじめるほかない。ロシア人研究者がロシアで研究を進めること自体は可能であるから、表立っての協力関係は困難なものの、かれらの研究の進展を参考にしながら、千島列島戦後史の解明につとめたい。 また、比較史の視点を一層強化するために奄美群島史研究にも一層注力したい。鹿児島県立奄美図書館(鹿児島県奄美市)での資料収集とともに、奄美大島および徳之島での聞き取り調査も考えている。奄美群島の戦後史については未開拓な側面が数多く残されており、現地の自治体市編纂機関、図書館、郷土史家と連携して、地域貢献にも資するような歴史研究を進めていきたいと考えている。
|