研究課題/領域番号 |
20K01530
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
大井 知範 清泉女子大学, 文学部, 教授 (90634238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | イギリス海軍 / イギリス海軍本部 / 中国ステーション / 海軍交流 / 帝国主義 / 海軍 / 協調関係 / 対立関係 / 1914年 / 交流 / 帝国 / スポーツ / ドイツ海軍 / アジア太平洋 / 交流文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀初頭のイギリスとドイツの帝国間関係を「競争」とは異なる「協調」という側面から再検討するため、アジア太平洋を舞台とする両国海軍の日常的な交わりと認識を双方向の視点から明らかにする。具体的には、イギリスとドイツの文書館に所蔵されている海軍史料を調査し、外地の軍艦長、ならびに在外艦隊の司令長官の行動と認識を分析する。この調査で得られた実証的な史実をもとに、同時代の帝国間関係を底層で支えたグローバルな構造を解明する。
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研究実績の概要 |
本課題研究は、20世紀初頭の帝国主義体制下における帝国間のつながりを解明すべく、アジア太平洋の海域世界で活動していたイギリスとドイツ・オーストリアの在外海軍間の関係性に注目する。本研究では、イギリス側の史料を重点的に収集分析し、イギリス海軍の視点から帝国主義競争国間の多面的な関係性を掘り起こす。 本年度は資料調査の対象であるイギリスとオーストリアに渡航し、ロンドンで2週間、ウィーンで約1週間の現地調査を実施した。イギリス国立公文書館では、19世紀後半から20世紀初頭の東アジア駐留海軍に関連する文書を調査した。イギリス海軍の東アジア地域における活動に関しては、有事や騒乱対応をめぐる研究は数多いが、日常の活動にアプローチしたものはほとんどない。今回の史料調査では、平時における現地駐留海軍の動き、とりわけ他国の艦艇・基地との交流実態を示す文書を多数発掘することができた。具体的には、海軍本部(Admiralty)の中国ステーション関連文書(ADM125)内の各報告書・通信記録を探り、他国海軍との親善交流に関わる立証書類がそこに多く含まれていることを明らかにした。また、海軍本部文書(ADM1)内の中国ステーション宛指示書、イギリス戦争省(陸軍省)や外務省の東アジアに関連する各種文書(WO106、FO228など)も有益な情報源であることが判明した。これらの文書は大部分を現地公文書館内で撮影し、入手した史料のリスト作成と分析を進めている。 オーストリア国立公文書館では、オーストリア=ハンガリー帝国海軍の『年報(Jahresbericht)』を複数年次閲覧し、20世紀初頭の同国海軍の外地における活動状況を詳細に分析した。本研究に関わる『年報』内の箇所はデータスキャン(有料)し、オーストリア海軍のアジア太平洋における活動を分析するための史料を補強することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題研究は、コロナ禍によりヨーロッパへの渡航調査が実施できず進捗が大幅に遅れていたが、今年度はイギリスとオーストリアの国立公文書館を訪れ史料調査を実施することができた。ただし現地渡航による史料調査は3年間の研究期間中に当初3回予定されていたが、現状は未だ1回にとどまるため必要史料の収集が十分に進んでいない。また、最優先の収集目標に掲げていた艦長・司令官報告は、ドイツやオーストリアの公文書館とは異なるイギリスの保管分類システムにより、体系的な調査収集に難儀した。以上の障害要因により、現状では史料の分析と学術成果の執筆作業が十分に進捗しておらず、研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最終年度となる次年度は、再度ロンドンとウィーンへ渡航し史料調査と収集の拡充を図る。時間の制約で昨年度に入手できなかった史料を収集し、また前回の史料調査後に所在が判明した研究に要する文書を調査する。これらの収集の成果をもとに、年度後半にはイギリス海軍史料の整理と分析を進め、ドイツ・オーストリア側の文書と突き合わせ双方の海軍間の相互関係性を解明する。こうして得られた学術成果は、論文にまとめ投稿するとともに、最終的には研究書を執筆し広く成果を公開したい。
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