研究課題/領域番号 |
20K01537
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
神江 沙蘭 関西大学, 経済学部, 教授 (90611921)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 国際政治経済 / EU / 金融政策 / 財政政策 / 連帯 / 金融リスク / 経済外交 / 国際政治経済学 / 経済成長戦略 / ドイツ / 日本 / 欧州統合 / 次世代EU / 金融市場 / ミドルパワー / 国際関係 / 成長戦略 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、国際的なマクロ経済レジームの各国の経済戦略にもつインパクトと、それが各国の経済外交や国際的なイニシアティブに与える影響について検証する。特に本研究では、日本とドイツの経済外交とマクロ経済政策に焦点を当て、国際的なマクロ経済レジームが両国の輸出志向型の経済政策に与えた影響を考察する。そして、両国が国外との調整を念頭にどのような政策対応を行ったか、それが国内のシステムでどのような摩擦、不整合を生んだかを分析する。
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研究実績の概要 |
2023年5月に論文「複合危機下のEU資本市場政策:ブレグジット/新型コロナウイルス危機への対応」(臼井・中村編著『EUの世界戦略と「リベラル国際秩序」のゆくえ』明石書店)を出版し、その後、エネルギー危機や新たな安全保障環境の下でのEUでの政策変化を踏まえて大幅に改稿した。その改定稿を同年11月、日本国際政治学会の分科会で報告し(「EU複合危機とリスク・シェアリング:資本市場と財政支援」)、意見交換を行った。また同年6月、ユーロ危機と新型コロナウイルス危機への経済政策での対応を比較した論文「複合危機とEU統合:金融・財政政策での転換」を日本比較政治学会で報告した。 さらに2023年度は、EUの財政・金融政策について経済思想や規範理論の観点から分析を深めた。これは従来のドイツのEU外交における財政面での「連帯最小限主義」の限界を検証する作業でもあった。まず2023年12月に、EUがリスボン条約で掲げる「社会的市場経済」の理念との関係で、EUの財政・金融政策がどのような役割を担うべきかを検討する論文を出版した(「EU市場統合と「社会的市場経済」:複合危機と安定化機能の担い手」苅部・瀧井・梅田編著『宗教・抗争・政治』千倉書房)。さらに年度末にかけて、長らくEUが基本条約で掲げてきた「連帯」の理念から近年の欧州経済政策の限界を検討する論文「EUの金融・財政政策と「連帯」」を書き下ろした。当該論文は、法哲学者等との共著本『法哲学という企て(仮称)』(瀧川・大屋・郭・安藤編著、信山社)の一章として出版予定である。 本科研課題「国際マクロ経済レジームと成長戦略:日本とドイツの経済外交」との関係で、これらの論文は新しい国際環境・レジームの下でのドイツの経済外交の変容を検証するために必要な視点を提供する。特にEUの政策変化や規範的なジレンマがその経済政策に与える影響について新たな示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度も、欧州統合関連での研究企画や共著のプロジェクトに引き続き取り組み、近年の国際環境の変化の下でのEUや加盟国(ドイツを含む)のマクロ経済戦略についての検証を進めた。特に近年のエネルギー危機を含む複合危機の下で、EUの財政政策と金融政策のポリシー・ミックスがどう変化したか、またどのような変化が要請されているかを分析し、その政策上の課題や規範的な問題について考察を深めた。その分析の主眼は、国際的な政治経済の情勢変化やレジームの揺らぎが、地域共同体の経済政策の動向や戦略にどのようなインパクトを及ぼすかという点であり、複数の研究成果を出版、報告することができた。このように政治体を取り巻く安全保障やマクロ経済の環境の変化がその経済外交戦略に及ぼした作用の検証を深めることで、近年の日独の経済外交の比較にも重要な視点を得ることができた。 また2023年度、エネルギー危機下でのマクロ経済環境の変化とコロナ危機後の需要の増加が長年続いた日本の金融緩和政策に及ぼす影響についても検討を進めた。2024年度も本科研課題に継続して取り組むことになったため、今年の欧州議会選挙や米国大統領選挙の行方等を踏まえ、日本の経済外交を取り巻く国際政治の情勢分析を取り込んだうえで、日本の経済戦略の方向性についてさらに検討を進め、執筆を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年のエネルギー危機後の欧米で高インフレと金利の引き上げ、(最近一定の変化がみられるものの)日本での低金利政策の継続と円安という環境は、本科研研究課題で検証する輸出志向の日独経済の変容のあり方に一定の影響を与えている。また世界各地での戦争によって安全保障環境での緊張が増し、国際的な友好関係の強化やエネルギー供給網の整備、経済安全保障の強化が喫緊の課題となり、経済成長戦略でもその持続性や頑強性が一層問われるようになっている。この環境変容や政策志向の変化が、国際経済レジームの変容に繋がるようなシステマティックで持続的な側面をもつのか、2024年度の政治環境の変化を踏まえつつ、考察を深める予定である。 2024年度は11月の日本国際政治学会(札幌)において、国際経済ガバナンスや国際協力等に関するパネルに討論者として参加する予定である。また2025年3月の国際問題研究学会(International Studies Association:ISA)に報告プロポーザルを提出する予定であり(選考前)、現在のマクロ経済環境の変化を受けた日独の経済戦略の方向性について公表の機会を設ける。 関連プロジェクトとして、単著図書『金融統合の政治学:欧州金融・通貨システムの不均衡な発展』(岩波書店)を大幅に修正した英語版の原稿の執筆を継続している(海外出版社の査読者の指摘を受けた修正)。最新の国際情勢や制度の変化を踏まえて内容をアップデートし、本年度中に可能な限り仕上げる。
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