研究課題/領域番号 |
20K01545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安井 大真 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (30584560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ジェンダー / 教育 / 出生率 / 経済成長 / 男女間格差 / 労働市場 |
研究開始時の研究の概要 |
社会において観察される男女間の様々な差異と経済発展・経済成長との間の相互作用について経済学的に分析を行う。社会において観察される男女間の差異としては、教育水準の違い、賃金および所得の違い、労働市場での役割の違い、家庭での役割の違いなど、様々なものが存在し、経済発展・経済成長の過程において、それらの差異はいくつかの規則性を持って変化している。その規則性を説明可能な理論モデルを構築した上で、男女間の様々な差異の変化がマクロ経済のパフォーマンスに与える影響について分析する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ほとんどの先進国で男女の大学進学率が逆転したことの原因を特定し、その原因に焦点を当てた動学的一般均衡モデルを構築することを目標としている。 前年度までの成果は次のようなものであった。①マクロデータに基づくと、男女の大学進学率の逆転は出生率の低下と非常に関連が強いことがわかった。②そのような発見に基づき、男女間で家庭での役割が異なる状況において、高等教育と出生に関する意思決定が行われる動学的一般均衡モデルを構築した。③そのモデルに基づくと、頭脳偏向的技術変化を契機として、婚姻率の低下、出生率の低下、大卒賃金プレミアムの上昇、男女の賃金ギャップの縮小、男女両方の大学進学率の上昇、男女の大学進学率の逆転、という多くの先進国で観察された現象を再現できることがわかった。④本研究のモデルにおける主要な仮定およびメカニズムがアメリカのマイクロデータで観察される家計の行動と整合的であることが確認できた。⑤そのマイクロデータに基づいて、カリブレーションおよびシミュレーション分析を進め、概ね良好な結果が得られそうなことが確認できた。 上記のような前年度までの成果を受け、今年度は主に、シミュレーションの頑健性の確認とカウンターファクチュアル分析を行った。その結果、次のような成果が得られた。①能力分布に関する仮定が現実のデータを再現する上で非常に重要であることがわかった。②カウンターファクチュアル分析の結果、外生的なパラメータの変化と内生変数の変化の間の量的な関係を特定することができた。 とくに、頭脳偏向的技術変化の大きさと全要素生産性成長率に関するカウンターファクチュアル分析を通じて、頭脳偏向的技術変化の影響が大きかった変数と全要素生産性成長の影響が大きかった変数をそれぞれ特定することができたのは重要な発見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに行ったことを列挙すると以下の通りである。 ①マクロデータに基づいて、男女の大学進学率の逆転現象を説明する際に焦点を当てる要素(出生率の低下、男女の身体的差異の存在、頭脳偏向的技術変化)を特定した。②そのような要素を盛り込んだ理論モデルを構築した。③そのような理論モデルを解析的に分析し、検証すべき仮説を導き出した。③アメリカのマイクロデータを使って、本モデルの主要な仮定およびメカニズムがマイクロデータで観察される家計の行動と整合的であることを確認した。④カリブレーションおよびシミュレーション分析によりモデルの現実再現性を確認した。⑤カウンターファクチュアル分析により量的に重要な要素を特定した。 課題開始から3年間に行う内容として、ほぼ当初の計画通りなので、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、①基本となる理論モデルの構築、②モデルの主要な仮定および結果がマクロデータとマイクロデータの両方と矛盾しないことの確認、③アメリカのデータに基づいたカリブレーション・シミュレーション・カウンターファクチュアル分析、を行った。研究を完成させるために必要な材料は概ね出揃ったと言える。最終年度は、カリブレーション・シミュレーション・カウンターファクチュアル分析に関する細部の修正を行った上で、本研究で得られた結果の関連研究における位置付けを整理して論文としてまとめる。 理論モデルも随時アップデートしながら進めているが、依然として理論モデルは複雑で、非常に多くの要素が入っているために、要素間の相互作用がどのように働いているかがわかりにくいという問題が残っている。カリブレーション・シミュレーション・カウンターファクチュアル分析に関する細部の修正を行いながら、必要に応じて理論モデルに変更・修正を加えていく。
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