研究課題/領域番号 |
20K01551
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 下関市立大学 (2022-2023) 帝京大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
石井 良輔 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (00581638)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ゲーム理論 / パレート効率性 / コミットメント / 有限回繰り返しゲーム / 囚人のジレンマゲーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有限回繰り返しゲームの前にDutta and Ishii (2016) で導入されたものに類する動学的コミットメントがあるゲームを考え、その動学的コミットメントが、囚人のジレンマゲームでの協調達成の可否に与える機序を解明する。完全合理的な個人を前提とした上で、唯一の均衡が存在する条件を求めることは、精度の高い予測の提供につながる。そこで得られた知見を、たとえば金融機関が有限責任企業に追加出資をする際のモラルハザード問題などへの応用につなげたい。
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研究実績の概要 |
過去3年での研究に引き続き、Renou (2009) を精読し、コミットメントがゲームの結果に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、以下に述べる2点の結果が得られた。 一つ目は、2022年度の研究で行った、対称ゲームで事前に全く同じコミットメント (以下、「公平なコミットメント」) において、コミットメント段階を2段階に増やしたことである。両プレイヤーが同時に戦略集合を狭めた後に、(その狭めた戦略集合をお互いにエラーもコストもなく正しく観測したうえで) もう一度同時に戦略集合を狭める、という要領で、コミットメント段階を動学化した。2行2列の調整ゲームに1段階公平なコミットメントを導入しても、元の調整ゲームの混合戦略均衡は均衡結果となることは2022年度にわかっている。2段階にすると、元のゲームの純粋戦略均衡二つは1段階のときと同じく均衡結果になるものの、混合戦略均衡は均衡結果とはならない。すなわち、多段階のコミットメント導入により、均衡を絞り込むことができた。 もう1点は、2022年度に引き続く、Renou (2009) のコミットメントゲームにおける混合コミットメントのさらなる深掘りである。2行2列の調整ゲームでも、コミットメントを混合することで、純粋コミットメントでは達成できない結果をもたらすことがわかった。3行3列未満で唯一のナッシュ均衡をもつゲームで、その反対のケース、つまり、コミットメントの混合を許しても純粋コミットメントと同様の利得組しか得られないか否かは、現在真偽がわかっておらず、検討中である。仮にそれが真だとしても、Renou (2009) の新規性は、コミットした後もプレイヤーに戦略的操作の余地を残すところにあるため、戦略数は3以上を想定すべきである。この事実は、混合コミットメントを考慮することの重要性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目は新型コロナウイルス禍による遠隔授業の実施その他により、本来計画していた研究に着手できなかった。2年目以降も、感染状況の変化により担当している授業形態の急な変更、担当受講科目の変更などによって、遅れを取り戻すには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
コミットメント段階が一度限りのゲームにおいて、混合コミットメント、あるいは公平なコミットメントと、多段階のコミットメントとの親和性の高さが鮮明になってきた。これらを精査して、本課題の研究計画である有限回繰り返し囚人のジレンマで、コスト構造、コミット権放棄オプションの有無、コミットメントのルールなどの変更が、ゲームの部分ゲーム完全均衡結果にどういった影響を及ぼすかを網羅的に考察し、解の性質などを直観的に説明したい。
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