研究課題/領域番号 |
20K01556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中川 竜一 関西大学, 経済学部, 教授 (60309614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 適応的学習 / 期待の異質性 / 均衡の安定性 / インフレーションターゲティング / 流動性の罠 / インフレーションターゲッティング / サンスポット均衡 / 情報の不完全性 / 金融政策 / 金融危機 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現実の期待形成として「適応的学習」(adaptive learning)を想定し、代表的な経済攪乱の概念である「サンスポット均衡」のメカニズムを明らかにする。2020年度には、情報の不完全性とサンスポット均衡の安定性との関係を明らかにする(テーマⅠ)。2021年度には、情報不完全性の「程度」の時間的な変化とサンスポット均衡の発生・崩壊過程(boom-bust cycles)の関係を明らかにする(テーマⅡ)。2022年度には、サンスポット均衡の発生を防ぐための金融政策のあり方を明らかにする(テーマⅢ)。2023年度には、2000年代後半以降の経済攪乱の構造を明らかにする(テーマⅣ)。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「適応的学習における情報の不完全性は、サンスポット均衡のメカニズムにどのような影響を与えるか」を明らかにすることである。令和5年度は、交付申請書「研究目的 テーマⅣ」(経済攪乱の実証的説明)について分析すると同時に、関連研究の成果を国際経済雑誌に投稿・発表することに取り組んだ。 第1に、「研究目的 テーマⅣ」として、テーマⅢのモデルを実証的に推定し、構造ショックに対する情報の不完全性がどれだけ現実の経済攪乱を説明できるかを明らかにした。その結果、情報の不完全性を仮定したモデルは、情報完全のモデルに比べて現実の経済攪乱をより良く説明できることが明らかになった。 第2に、関連研究として、人々の期待形成と「流動性の罠」との関係を分析し、1990年代後半から四半世紀以上続く日本のデフレ状態、2000年代後半の世界金融危機以降の世界的な停滞状態の原因および当時の金融政策運営との関係を明らかにした。その結果、長期にわたってゼロ近辺のインフレを経験したことで物価が上がらないことが「社会通念」(ノルム)となり、人々が期待形成を低位に固定化させたことが経済を「流動性の罠」に陥らせることを理論的に明らかにした。この成果を、『大銀協フォーラム研究助成論文集』第28号に公刊した。 さらに、オンライン形式で国際経済学会、国内研究会その他に出席し、最新の研究成果を確認した。これらの活動を通じて、研究方法を再検討すると同時に、同分野の研究者と交流し、将来の共同研究について打ち合わせすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、当初の計画通り、「研究目的 テーマⅣ」(経済攪乱の実証的説明)についての研究論文の執筆をおこなった。しかし、依然としてコロナ禍は完全には収まっておらず、国内外の経済学会での研究発表を十分におこなうことができなかった。他方、分析作業、投稿作業に多くの時間を使ったことの効果として、昨年度と同様、関連研究の論文を公刊することができた。また、公刊には至らなかったが、本研究における論文の投稿作業を大きく進めることができた。 そのため、「研究目的」の達成はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では、令和2~5年度で分析したメカニズムを用いて、1990年代後半以降の日本の長期低迷、2000年代後半以降の経済攪乱のメカニズムをさらに明らかにする。これまでの研究によって、人々が期待形成を固定化させることがこれらの長期低迷の原因になり得ることを明らかにしたが、人々が期待を固定化させた原因まで明らかにしなかった。今後の研究では、その原因、特に経済構造あるいは金融政策との関係ををより深く分析する。
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