研究課題/領域番号 |
20K01566
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松本 昭夫 中央大学, 経済研究所, 客員研究員 (50149473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | j時間遅延 / 時間進み / Tayler近似 / 安定性交代条件 / Hopf分岐 / 循環経済 / 動学ゲーム / Time delay / Bounded rationality / Monopoly dynamics / Average Profit / Stability switch / Emission charge / NPS pollution / Nash equilibrium / 時間遅延 / 限定合理性 / 安定性交代 / 複雑性動学 / NPS汚染 / 環境課金 / 優臨界ホップ分岐 / 非線形性 / Solow growth model / Leintief function / Continuous time dynamics / CES production function / Cournot duopoly / Asymmetric contest game / 経済動学 / 遅延微分方程式 / 景気っ循環 / 独占・寡占の動学 / 経済成長 |
研究開始時の研究の概要 |
全ての経済活動には「時間」がかかる事は普く知られている。さらに、1930年代の生産ラグをもつcobwebモデルや投資の懐妊ラグを含む景気循環モデルを嚆矢として、ミクロ的・マクロ的経済変動の主要因の一つは時間遅延の不安定効果にあるとの認識も共有されている。本研究ではミクロ的動学として独占・寡占モデルを、マクロ的動学として経済成長モデル(二部門経済成長モデル等)を遅延微分方程式システムとして再構築する。これら多変数遅延動学システムの解の漸近挙動について、遅延微分方程式の分析手法を援用し、数理分析の補完としてマスマティカなどで数値分析を行い、経済動学研究に体系的な貢献をなす。
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研究実績の概要 |
2023年度は三つの新たなモデル開発と次年度以降の研究発展の基礎の為に動学ゲームに関する簡単なサーベイを行った。 昨年度の研究推進方策に沿って。古典的Kaldorモデルに「時間遅延」と「時間進み」を導入し、動学に与える影響について考察した。遅延と進みが混在するモデルは解析的にはうまく説くことができないので、進みの項をTayler近似をおこない、全体を遅延モデルとして再構築し、遅延及び進みが動学に及ぼす影響を考察した。主な結果をまとめると、遅延はすでによく知られているように不安定効果があるが、進みは安定効果があることがわかった。遅延項を近似により処理を行う方法は1950年代から行われているが、必ずしも万能ではなく、全くことなる動学を生み出す可能性がることが指摘されているので、今回の結果の汎用性には注意をする必要がある。 遅延モデルでは大域的な分析は数値シミュレーションに頼ることが多い。経済マクロモデルでは分析の単純化の為にCobb-Douglasタイプの関数が仮定されることが多いが、そこで得られる結果の頑健性の検討のために、CESタイプの関数で置き換えた場合の考察を行った。経済が不安定な状況のもとで、要素間の代替の弾力性の違いに応じて得られる動学は異なってくるなど、質的に異なる結果も得られて。 経済の市場あるいは経済主体が他の市場や他の主体とどのような繋がりが構築されるかによって経済活動は影響される。最近注目を集めている循環経済の一つのプロトタイプとしてロトカ・ボルテラ型の生態系のモデルを経済主体間あるいは市場間の相互依存関係が動学に及ぼし影響について考察した。分析の簡単化の為にフェードバック効果を限定的にし、循環性分析に主眼をおいた動学分析になっている。 Dynamic gameのサーベイとしてまず2人ゲーム、ついで一般寡占ゲームの漸近的な性質を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経済分析における遅延動学は必ずしも多くの研究者の衆目を集めてこなかったが、今年度は2つの数学系の学会・研究会において遅延動学の研究者との交流を深め、意見交換ができた。一つは早稲田大学で開催された 10th International Congress on Industrial and Applied MathematicsにおいてDevelopment of Mathematical Economics Focusing on Macroeconomic Dynamicsのセッションをたてた。他の一つは京都大学数理解析研究所RIMS研究集会「時間遅れと数理科学:理論と応用のあらたな見解に向けて」において招待講演を依頼され「経済動学研究における遅延:簡単な展望および今後の課題」のテーマで講演をおこなった。遅延動学の専門家との交流チャンネルができたことは、今後の遅延経済動学モデルの進捗に裨益することだいである。 国際学会において3回の報告を行った。Nonlinear Economic Dynamics 2023(Norway)において"Nonlinear Kaldor model augmented with retardation and anticipation"の報告を行い、Vietnam Symposium in Global Economic Issues 2023およびPacific Regional Science Conference Organization 2023においては政府の課税政策を明示的に含む環境汚染除去に関する講演を行い、動学分析のための基礎分析の報告を行った。 研究成果としてインパクトファクターの高い国際雑誌(すべて査読付き)5本の論文を掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
遅延動学モデル分析の稠密化を図る。古典的な経済成長モデルであるSolowモデルに長期成長要因として人口成長率だけいに注目した簡単なフレームワークを考える。一次同時の生産関数を想定すれば、1人当たり資本は定常状態に収束し、マクロ変数である国民所得や資本は外生的に与えられた人口成長率に等しくなることはよく知られている。ここに生産の遅延、減価書客の遅延などを導入すると、1人当たり資本の蓄積法的式は係数が遅延の大きさに依存したdelay-dependent になり、理論分析が複雑化する。まずは生産関数がCobb-ouglasタイプの場合の分析をおこない、そのご、Leontiefタイプの生産関数での分析を行う。時間的な余裕があれば同様な生産関数をもつ2部門モデルへの拡張を計画している。 さらに今年度の成果をもとに、遅延資本蓄積方程式をもつ最適経済成長モデルの分析に取り組む。通常の手法で求められられるオイラー方程式は遅延と進みをもく混合法廷しいになる。進みに関してはTaylerの一次近似、二次近似を施し、まずは進み係数を含む遅延動学方程式として再構築し、通常の手法で遅延分析を行う。
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