研究課題/領域番号 |
20K01574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福澤 直樹 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10242801)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | オルドリベラリズム / ネオリベラリズム / 新自由主義 / ドイツ / 社会国家 / 福祉国家 / 秩序経済学 / 経済秩序 / 経済思想 / 自由主義 / オルド自由主義 / 社会的市場経済 |
研究開始時の研究の概要 |
市場経済は本質的に理念通りに機能するものではなく、歴史的に、また国の内外を問わずさまざまな不均衡や、経済、社会の混乱を招き、時に破局的な結末を生み出した(大恐慌、大戦争など)。そうした市場経済に基盤を置く自由主義社会を維持するための介入秩序が百年前のドイツで生成し、第二次大戦後の連邦共和国では、社会的な市場経済体制が築かれてきた。本研究はそうした秩序理念がどのように現実の政策に反映され、どのように批判されてきたのかを問い、また社会的調整や連帯がどのような論理、或いは機能と共に展開するのかを考究する「秩序経済学」の今日的意義や「社会国家」の本質についての考察を深めるものである。
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研究実績の概要 |
令和4年度においても従前に引き続き社会国家概念とその歴史的実践についての検討を行った。本年度も変わらずコロナ禍の下で海外に出ることは叶わなかったが、既存の研究資料や研究文献等をもとに研究を進行させ、フランスの新自由主義者(ジャック・リュエフなど)との比較の視点も組み込みつつ、ドイツならではの事情に即したドイツ語圏における新自由主義の特質、リップマン・シンポジウム催行時のドイツ語圏の新自由主義、モンペルラン協会設立後のオイケン、レプケ、ハイエクらの志向と戦後西ドイツの政治への影響についての考察を行い、政治経済学・経済史学会2022年度秋季学術大会のパネルディスカッション「新自由主義の再審―『自由主義経済の真実』をてがかりに―」における基調報告を行った。 また国内での社会国家・福祉国家研究にコミットしつつ、欧州発祥の介入主義的新自由主義の理解を深めた。本研究者が書評論文を著すことになる『近代家族の形成とドイツ社会国家』について、著者とともに研究会等で議論を重ね、その理解を深めた。またもう一点の書評となる坂井晃介『福祉国家の歴史社会学:19世紀ドイツにおける社会・連帯・補完性』については、社会政策学会第145回大会(2022年秋季)書評分科会において、当該著作を批評する基調報告と著者とのディスカッションを行い(それについてのペーパーは、学会誌『社会政策』第15巻第1号(通巻44号;2023年6月刊行予定)に掲載)、社会学の視点も組み込んだ今後の研究協力の下地を築いた。 このほか、政治経済学・経済史学会 福祉社会研究フォーラムを基軸として、子どもの権利の確立を通じた両大戦間期ドイツの社会国家性の検証を行い、この部面についての他国を対象とする研究者、異なるアプローチの研究者とともに議論を深めてきた。この成果については、今後共編著書を公刊することをめざしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度、3年度に引き続き、令和4年度も計画していたドイツ現地への出張を行うことができなかった。本研究課題おいてはこれまでの3年間で2回ないし3回の海外出張と都合12回の国内出張が予定されていたが、執行できたのは結局海外出張0回、国内出張1回だけ(正確には学会全国大会でさらに1回出席・報告をしたが、開催校が偶然名古屋市近郊のきわめて近い場所)であった。このような次第であるため、アーカイブ資料をはじめとしてドイツ現地での一次資料の収集や、必要文献の選別も行うことができておらず、また秩序経済学に係る叢書(Untersuchungen zur Ordnungstheorie und Ordnungspolitik や Neue Staatswissenschaften, kulturelle Oekonomik など)の新刊(既刊も含めて)の選定と購入も進んでいない。しかし令和4年度には、下半期になりようやく国内の移動が容易となり、ドイツ現地での資料収集等も令和5年度については実施の見通しがついている。 ただし、本研究課題において当初主要な目的とした ① 秩序経済学の有用性の検討および ② 社会国家理念の基盤となってきた経済秩序乃至思想と現実政策との関連の検討については、裏付け資料の不足により、本格的に進めるに至っていない。令和5年度においては諸々の制約が外れ、それらの調査を鋭意進行させていく予定だが、目下のところ「やや遅れている」と言わざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで著しく制約されてきた、歴史研究にとって不可欠なドイツ現地での一次資料の収集を本格的に開始する。ドイツ渡航に際しては、本邦で入手不可能乃至内容確認のできない文献についても調査・確認を行い、帰国後に必要なものを発注する。(すでに渡航に向けての各種手配や諸連絡はほぼ完了している。) 子どもの権利の確立を通じた両大戦間期ドイツの社会国家性の検証については、令和5年度上半期に研究論文を完成させ、下半期のうちに比較研究の視角から他国の事例の研究、他のアプローチの研究と組み合わせつつ、そちらを担当する研究協力者らともに共編著書を(編集代表者の一人として)刊行する予定である。(これに関する一次資料調査も並行して実施する。) 政治経済学・経済史学会 学術大会でのパネル報告の内容についても、資料的な裏付けを固めつつ、まずは単著論文として完成させる。そして引き続き、本研究課題開始時に元来想定していた一連の研究内容に係る検証・分析を具体的に進めていく。元々三年がかりで取りまとめることを計画していた主要な資料調査とその収集並びにその分析を実質一年間で完了させるのは困難ではあるが、当初の研究目的および内容は変更することなくそれを完遂する意向である。本課題研究者としては、追ってさらにその成果を単著の研究書にまとめることを展望している。
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