研究課題/領域番号 |
20K01581
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
舩木 恵子 武蔵大学, 総合研究機構, 研究員 (00409369)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 経済学史 / ユニテリアニズム / マルクス経済学 / ジェンダー / フェミニズム / J.S.ミル / 主流派経済学 / プロト・フェミニスト / ウーマン / ヴィクトリア時代 / 倫理学 / フェミニスト経済学 / プロトフェミニスト / リベラル・フェミニズム / 女性の自立 / ユニテリアン / 女性賃金 / リべラリズム / イギリス哲学 / リベラリズム / 経済思想 / 社会改良思想 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はイギリスにおける古典的フェミニズム思想とされるリベラル・フェミニズムの転換点が、ヴィクトリア時代に生じた合理主義的なフェミニズム思想にあるのではないかという問いを設定し、ヴィクトリア時代のフェミニズムの独自性を明らかにするため、ユニテリアニズムに着目する。ユニテリアニズムは寛容法以降、特に合理的社会形成に男女平等教育を強調する。19世紀の時代的特徴を持つ諸思想と寛容法以降のユニテリアニズムの融合が20世紀初頭の女性参政権運動に代表される男女平等志向の思想形成をしたのではないかという推論を具体的に検証し分析を進める。
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研究実績の概要 |
2023年3月25日日本イギリス哲学会第47回研究大会(於:愛知教育大学)にてシンポジウム「ミル研究の現状と意義ー没後150周年記念」にて司会を担当し、シンポジウム登壇者の哲学・倫理学・政治学・経済学におけるミル研究の現状におけるまとめの一端を担ったが、同時代のフェミニズム思想に関する論考が不足していたため司会者の立場でありながらも補足する結果となり、本研究課題の領域について解説する機会を得、改めて本研究の重要性を自覚した。それ以降2023年度は主流派経済学とフェミニズムの研究を分析することに勤めた。つまりJ.S.ミルは主流派経済学者(古典派経済学)であるが、フェミニストでもありフェミニズムに関する倫理的(道徳的)発展と科学(経済学)がどのように関係するのかミル経済学とフェミニズム・ジェンダー問題がどのように整理できるのか、本年度の研究課題を経済学とフェミニズム思想を中心とした倫理の問題に定め、19世紀のユニテリアン・ウーマンが主流派経済学を批判した論考の分析をおこなった。 6月4日に経済理論学会のジェンダー部会(専修大学)にで「ジェンダーの経済学の学説史」を報告し、最近のジェンダーと経済学の歴史についての出版事項を取り上げつつ、経済学史におけるジェンダーの経済学の歴史分析を報告した。「プロト・フェミニスト」として経済学の分野では経済学の教育者としてしか取り上げられなくても、主流派経済学への疑問・批判を展開した19世紀の女性エコノミストや、価値を理論の基盤に据えるマルクス経済学からジェンダーの経済学、また現代のフェミニスト経済学の源泉が生じていることを文献から突き止め、経済学の歴史にジェンダーの経済学を含める必要性を主張した。これは現在進行中の経済学史の出版企画および『経済学者たちの女性論』(昭和堂)に今後反映される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年6月のマーティノウ・ソサエティ・コンファランス(英.ノリッチ)では、経済理論学会ジェンダー部会報告の「ジェンダーの経済学の学説史」の一部抜粋を英語に訳して報告した。マルクス経済学を基盤とする日本におけるジェンダー経済学として竹中恵美子の労働経済学を紹介し経済学におけるアンペイド・ワークについて論じた。経済学は市場経済の領域を分析する社会科学というのが主流派経済学の方法ではあるが、価値を理論の基盤に据えるマルクス経済学ゆえに、貨幣として捉えられない再生産労働の価値を考察することに意識が向けられ、それによって家事労働などのアンペイド・ワークを竹中恵美子が分析しており、それは日本ではマルクス経済学に基づく労働経済学のジャンルではあるが、まさしくジェンダーの経済学であると報告した。またジェンダーの経済学は経済学批判として経済学の発展と共に存在していたことを論じた。コンファランス報告の後、竹中恵美子の経済学を知りたいという希望がメールで寄せられた。 またハリエット・マーティノゥの後期の著作には経済学説史において領域外のこととして今まで扱われてこなかった女性の再生産労働における価値の分析が論じられていること、またその他にも19世紀のユニテリアン・ウーマンの中に古典派経済学批判として再生産労働の分析が主張されていることなどを示し、ジェンダーの経済学へのユニテリアン・ウーマンの貢献を主張した。併せて経済学説史においてはこれらの事象は扱われてこなかったことも説明し本研究課題の問題意識を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の内容を出版する企画が2点あるので、これに向けて執筆活動を推進する。また6月の英国、マーティノゥ・ソサエティ・コンファランスではその内容に関するものを発信し、日本における労働経済学として発展してきたジェンダーの経済学について、国外ではどのような反応なのか、どのような意見が得られるのかの結果を収集する。英国での先駆者であるユニテリアン・ウーマンと日本における労働経済学というジャンルを通して別の視点から生み出されてきた日本のジェンダーの経済学がどのように関係づけられるのかを分析し、本研究課題を掘り下げる予定である。
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