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相関反転可能で非対称なsplit-normalコピュラと金融危機・バブルの分析

研究課題

研究課題/領域番号 20K01588
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分07030:経済統計関連
研究機関明治学院大学 (2021-2023)
横浜国立大学 (2020)

研究代表者

小林 正人  明治学院大学, 経済学部, 教授 (60170354)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
キーワードsplit normal / copula / 国際決済銀行 / 資本移動 / split-normal 分布 / EU金融危機 / EU危機 / ファイナンス
研究開始時の研究の概要

相関係数の異なる二変量正規分布を接合して作るsplit normal分布をもとに構築した新しいcopulaを開発し、それにより資産収益率の相関構造の分析をおこなう。このcopulaは、Upper tail(収益率同時分布の右上の領域)とlower tail(収益率同時分布の左下の領域)が独立に相関符号を変化することが可能である。

実証的には、2009年10月に始まる欧州債務危機における GIIPS (ギリシア、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン) 五か国のデータでこのcopulaを推定し、その相関構造と非対称性の発生の有無の検証を行う。同様の分析をドイツなどのEU主要国にも行う。

研究実績の概要

符号反転と非対称性を持つcopulaの開発とその応用可能性の探索という本研究の目的は、すでに十分に達成したため、当該年度ではより一般的な理論モデルの開発を目指したが、その研究の成果は十分なものとは言えない。
第1の理論的発展の試みは、一般的なsplit normal distribution からcopulaを生成することである。三つのパラメターを持つ理論的なモデルとして新しいcopulaをすでに考案しているものの、パラメターの増加による数値計算上の困難が乗り越えがたく、研究の進展はほとんどない。
第二の理論的な発展の試みは、モデルを3次元以上のものに拡張し、3変数以上の事象に応用することである。三次元化の理論的なモデルについては、二次元モデルと本質的に異なる点はないが、数値積分が三次元になるため、やはり計算速度の点から非常な困難に突き当たり、研究は停滞している。
第三の理論的発展の試みは、当初めざした非線形カルマンフィルタモデルを使った最尤推定である。刊行された論文では、非線形カルマンフィルタモデルを断念し、moving maximum likelihood methodを使った、より簡便な推定を使って繰り返しによる標準誤差の計算を容易にした。研究の過程で、スプライン関数を用いた近似を行うことで、より少ない計算量にもかかわらず、実用的な観点からは厳密な最尤法に匹敵する推定を行えるというアイディアにたどり着いたが、このアイディアの追求はまだ具体的な成果を生んでいない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、相関の符号反転と非対称性の二つの性質を持つ新しいcopulaを作成することをめざした。それによって、金融危機における債券収益と株式収益の相関の反転と分布の非対称性の問題を表現することをめざしていた。
理論の中核的な部分は、Split Normal Distribution を用いたcopulaの開発により完成した。本来のSplit Normal Distributionは2つのパラメターを持つが、本研究で用いた定式化は2つのパラメターであり、Split Normal Distribution としての一般性には欠けるものであり、国際金融の実証分析の問題に対してはほぼ十分な柔軟性を持っており、分析結果の要約もより直感的になるという利点を持っている。
金融危機時の金利と株価、為替の変動は国際資本移動を原因とするものであるが、copulaの中に国際資本移動のデータを組み込むことを目指した。しかし、金利や株価のデータには日次、週次データが存在するが、国際決済銀行の国際資本投資データは細かくても四半期データであり、サンプルサイズの問題からcopulaによるモデル化は適さないという困難が存在した。この周期の違いという問題は、投稿した学術誌の査読者からの示唆により、国際資本移動のデータを直接にcopulaに組み込むのではなく、copulaのパラメターの変化を国際資本移動のフェーズで説明するという方法で解決した。これにより、大規模な国際資本移動と株価・債券価格の相関の非対称と符号の反転が関連していることが示され、研究の目的は完全に達成されたといえる。

今後の研究の推進方策

当初の目的がほぼ完全に達成されているが、より一層の理論的発展はいくつかの方向で可能である。しかしいずれの問題についても「次元の呪い」ともいうべき数値計算上の困難が存在しているため、これ以上の発展の方策はきわめて困難である。何等かの方法で数値計算上の技術的な困難が解消した場合、以下のような理論的発展は十分価値がある。
第一の理論的発展は、二次元のsplit normal copulaを3次元以上のものに拡張し、3変数以上の金融事象に応用することである。多くのcopulaは二次元であり、3次元のcopulaで実用的なものは極めて少ない。二次元と三次元では全く理論的な側面は変わらないため、その原因は数値計算等の困難であると思われる。為替レートという変数を債券価格、株式価格に追加することにより、国内資本移動と国際資本移動が株式価格と債券価格に与える影響の違いを識別することが可能になり、より深い知見を得ることができるはずである。
第二の理論的発展は、一般的なsplit normal distributionを用いたcopulaの利用である。今回の研究で用いたcopulaは、簡易化されたもので、相関は正負のいずれの符号も取りうるものの、負の相関の領域での動きには制約がある。一般的なsplit normal distribution では、負の相関の領域と負の相関の領域での分布は全く対照的である。
このcopulaを用いることにより、より自然な形での金融資産価格変動の符号反転現象を記述できるはずである。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Analyzing the EU sovereign debt crisis by a new asymmetric copula with reversible correlations2022

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Masahito、Chen Jinghui
    • 雑誌名

      Applied Economics

      巻: 54 号: 56 ページ: 6497-6509

    • DOI

      10.1080/00036846.2022.2069672

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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