研究実績の概要 |
本年度は、アイナック銅鉱山開発による強制移住が地域住民の健康状態にもたらした影響についての実証分析を行った。アフガニスタンのアイナック銅鉱山開発は、2011年に近隣のワリカリ村全体の強制移住を引き起こし、将来的には近隣の複数の村も移住が予定されている。鉱山開発による移住は、強制的であろうとも自発的であろうとも、移住者の健康を含む社会経済的影響が深刻であることが文献から示されている。この研究では、2011年の移住前と2021年の2つの時点で収集されたデータに、差分の差分法(DID)を用いて移住世帯と非移住世帯の健康状態の変化を比較した。結果は、移住した世帯の現在の生活状況はマラリア、下痢、皮膚疾患などの疾患が広まっており、健康リスクが高いことを示している。これらの結果は、適切な移住計画の必要性を強調しており、政策立案者は被災世帯の健康ニーズを考慮して移住と再定住プログラムを設計する際に包括的かつ持続的な取り組みを実施すべきであることを示唆している。以上の分析は、Huang, Q., Khan, G. D., & Yoshida, Y. (2023). Assessing Health and Dietary Issues of Households Displaced Due to the Aynak Copper Mine Project, Afghanistan. The Extractive Industries and Society, 15, 101299.として、国際学術誌に公刊した。また、その他にもガーナにおけるブロック価格の増加が電力需要の応答性に与える影響や、バングラデシュのスラム世帯の金融包摂と支出パターンに関する実証分析、同じくバングラデシュの農村沿岸世帯の教育支出の詳細化を促進するための補助金と食糧支援政策の効果などについての研究を行った。
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