研究課題/領域番号 |
20K01637
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
|
研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
小川 昭 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (70514537)
|
研究分担者 |
佐々木 弾 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345110)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 成績評価 / 科目選択 / ゲーム理論 / 相対評価 / 絶対評価 / 戦略的行動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、(成績評価における)相対評価制度があるもとで、「成績を目的とした行動」がどのような形で現れるのかを分析するものである。本研究において注目するのは、(科目選択後の努力のあり方ではなく)「科目選択にどのように影響するのか」という点である。学生が、自らの関心や学習成果というよりはむしろ成績評価によって科目履修を行うという効果がどの程度、どのような形で出るのか、それが厚生(効用)をどれほど損なうのか、について、理論モデルを構築して分析する。 分析に際してはゲーム理論の枠組みを利用し、ある学生の科目選択において、他の学生の行動(戦略)が影響を及ぼすことを組み込んだ分析を行う。
|
研究実績の概要 |
22年度には、モデルにおける「学生の能力」をより自然な形に変更した上で、引き続き理論分析を行った。従前構築していたモデルでは、学生の能力は「高い」/「低い」の2種類であったのに対して、これを(上限値/下限値を外生的に与え、モデルの全playerにも既知であるような)一様分布としたものである。なお、「各学生が絶対評価クラスと相対評価クラスの2クラスから、いずれかを選択する」「全学生のクラスが決まってから、各学生が同時に努力するかしないかを決定する」というモデルの構造は、従前の設定を引き継いでいる。 このような変更を行っても、「絶対評価」と「(成績上限の低い)相対評価」、および努力のコストと便益(効果)が一定の条件を満たす場合には、(1)能力の高い層が絶対評価、能力の低い層が相対評価を選択するような純粋戦略均衡が存在する、(2)その均衡において、学生の総努力量(努力する学生の総数)は「2クラスともに『共通の』絶対評価である」場合に比べて多くなる、という結果が、(導出に誤りがなければ)得られた。ただし、(1)均衡が唯一であるかどうかは確認していない、(2)「2クラスともに絶対評価だが、評価基準が異なる」という場合とは現状比較していないので、これだけで「絶対評価と相対評価の混在は、学生の努力を引き出すという点で絶対評価のみよりも優れている」とまでは言えないことに注意を要する。 なお、別の比較対象として考え得る「2クラスともに『共通の』相対評価である」場合には、(全体としての学生数が十分に多い限り、すなわちある学生のクラス選択が各クラスにおける学生の能力の分布を変えないと見なせる限り)均衡そのものは存在するものの、その均衡が安定ではないように見受けられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れている原因は、(1)22年度の初期に策定していたモデルでは、(予測していた結果と同じ、という意味での)所望の結果を得ることが(少なくとも現状)できなかった、(2)導出の誤りに伴う手戻りがあった、の2点。 (1):年度初頭には、(学生の能力を多様化するとともに)学生の努力を「する」/「しない」から「0以上一定値以下」から努力水準を学生自身が選べる、というような形で連続的な努力へと変えることを想定していた。しかし、このようにモデルを変更すると、「実績の概要」で示したような結果が(少なくとも試行した特定の数値例では)崩れることが判明した。「実績の概要」で示した内容は一応得られているとはいえ、これが「特殊な状態」なのかそうではないのかの分析・検討を要することになった。 (2):設定を変更しつつ分析を進めていった際に、一部取り違えがあった(ことに伴い、計算を誤った)ものである。
|
今後の研究の推進方策 |
23年度には、導出済みの結果について誤りがないのかの再確認(再計算による結果の再現)を行うとともに、22年度までの分析において欠けている部分を補う形で研究を進めていくことを計画している。具体的には以下のものが(再計算以外の)分析の対象となる見込みである。(1)努力のコスト/便益の設定を変え、どういった条件を満たせば均衡で高い努力水準となるのか、性質を考察する。(2)「絶対評価2クラスだが、2クラスの成績評価基準を(共通ではなく)別途設定する」、(3)成績評価において、(より現実と近づけるために)下限成果/上限成果を設定する(現状は、絶対評価において下限を「最高能力を持つ学生が努力しなかったときの成果」、上限を「最高能力を持つ学生が努力したときの成果」と設定しているが、これは「全員、努力の有無に拘わらず単位自体は取れる」ということを意味しており、一般性・妥当性の面で怪しい)、等である。
|