研究課題/領域番号 |
20K01691
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
牛尾 奈緒美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (20310378)
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研究分担者 |
山内 勇 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (40548286)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ダイバーシティ / 多様性 / 女性発明者 / イノベーション / 特許 / 研究開発 / インクルージョン / 女性研究者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、現在推進されている女性研究者・発明者比率の上昇という政策目標を、効率性(研究開発生産性)の観点から評価することである。 企業の究極的な目的が、利益をあげ存続することであるとすれば、効率性の観点は極めて重要である。近年では、企業の社会的責任が重視されてきており、公平性を高めなければ、社会的評価が下がり、企業の存続にも悪影響を及ぼすことがある。他方で、公平性に対する受容度の低い組織では、女性発明者比率を上昇させても、効率性が上昇しない可能性もある。 本研究を通じて、多様性の向上、とりわけ女性発明者比率の上昇が、どのようなときに効率性を高めるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、多様性の指標として女性発明者比率だけでなく外国人発明者比率も導入して分析を行った。また、特許の後方引用件数から発明の新規性に関する指標を、前方引用件数から知識のスピルオーバーや汎用性(他分野からの被引用件数)に関する指標を作成し、新たな成果指標として用いた。さらに、インクルージョンの風土醸成に関する代理指標として、企業ごとに女性発明者による特許出願件数の過去5年間の累積値を計算して分析に導入した。この指標は、過去に女性発明者をどれだけ活用してきたかを表す変数と解釈している。 分析の結果、発明活動における女性発明者比率の向上は、発明の新規性、スピルオーバー、汎用性のそれぞれに有意に正の効果を持つことが分かった。また、女性発明者比率はそれらに逆U字の影響を及ぼしており、ジェンダーがバランスよくミックスされたチームによる発明ほど、新規性やスピルオーバー効果が高くなることも明らかとなった。さらに、過去に女性発明者を活用してきた企業のチームほどその効果が強いことも明らかとなった。 これらの結果は、ジェンダー・ダイバーシティがイノベーションを促進することを示唆するとともに、女性発明者比率の向上が効果を発揮するにはインクルージョンに関する文化醸成の時間が必要であることも示唆している。 外国人発明者比率についても、全体としては発明のスピルオーバー効果に正の効果を持っており、その効果は逆U字の関係になっていることが確認された。しかし、汎用性に対する影響はU字型となっており、また、過去に外国人発明者を活用してきたか否かはスピルーバー効果に影響しないことも分かった。これらの結果は、外国人発明者は技術の幅が狭く専門性の高い発明活動において即戦力として活躍していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダイバーシティについて、ジェンダーの観点のみだけでなく国籍の観点からの分析も含めた方が、ジェンダー・ダイバーシティの効果をより明確にできると考えられる。そこで、今年度は発明者が外国人か否かという識別作業も追加で行った。中国籍や韓国籍の発明者は名前で日本国籍と区別することが難しい場合も多く、この追加作業にやや時間を取られることになった。しかし、中国籍の研究者の協力も得られ作業の効率化を図ることができたため、全体スケジュールへの影響は軽微なものにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の分析により、性別と国籍という2つの種類の多様性が、それぞれ異なるメカニズムで発明の性質に影響していることが分かった。研究開発の狭さや深さなど研究開発プロジェクトの特徴も考慮しつつ、そうしたメカニズムを明らかにすることが今後の課題である。また、インクルージョンの指標や操作変数についても、より妥当な指標・変数が得られるよう検討が必要である。他に、Difference in DifferencesやPropensity Score Matchingなどの手法を用いた分析結果の頑健性の確認も必要である。
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