研究課題/領域番号 |
20K01716
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
土門 晃二 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00264995)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 模倣デザイン / 意匠権侵害と外部性 / コピー商品の外部性 / 模倣食品と流通経路 / 日本文化コンテンツ / インバウンド需要 / 知的財産権 / 法と経済学 / 産業組織論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、知的財産権が成立して以降の技術革新と模倣・海賊行為の関係を参考にしながら、模倣・海賊行為が新産業の勃興に与える影響について、「法と経済学」による理論的分析を行う。 現行法での模倣・海賊行為の違法性は新技術の登場によって変更を迫られ、また完全な取締りが実質的に不可能な状況では、既存産業は不可避的に模倣・海賊行為との競争の中で新産業を生み出さざるを得なくなる。申請者が実施してきた長期に渡るフィールドワークの成果を援用しつつ、「法と経済学」分野に応用可能なシンプルなゲーム論および動的進化理論を使ってそのことを分析し、静的考察に陥りがちな知的財産権の「法と経済学」の分析に新視点を導入する。
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研究実績の概要 |
本年度は、最近のアパレル産業などで問題となっている模倣デザインの違法性について、モデル分析を行った。公開されるとデザインはオンライン上で瞬時に伝達されて、模倣スピードを急速に早めている。特に、アパレル産業では、模倣の容易性から大きな問題になっている。中国では、海外のファッションショーなどの映像はすぐに工場に送られ生産工程に入る体制が築かれており、オリジナルの生産者は多くの訴訟を起こしている。 意匠権に関して違法性の判断が緩いアパレル業界などで、このような状況をどのように考えるのかに関して法学者による学術的な考察も多い。一方で、経済学的なものは少なく、理論的な分析はほとんど存在しない。本研究では、財の類似性(流行)がもたらす正の外部性を考え、製品差別化モデルを用いて外部性の強弱が違法性判断に与える効果を考察した。 外部性が小さい場合には、模倣企業の参入はオリジナル生産者の利益が減少させることから違法性があると判断できる。一方で、外部性が大きい場合には、模倣企業の参入はオリジナル生産者の利潤を増加させることから違法性がないと判断される。また、理論的な議論として模倣者数を規制変数とする上記の議論と内生的に模倣者数が決定される場合を比較し、それぞれのサブゲーム完全ナッシュ均衡の大小関係に関する定理を求めている。 以上の考察は、特許権の公開による効果の分析にも共通したものであり、特許を取得した企業が敢えて競争相手に特許を公開する根拠を示している。近年では、トヨタ自動車がハイブリッド・エンジンや燃料電池の特許を公開したことがこれに該当すると考えられる。この場合は類似性の外部効果ではなく、共有部品やインフラ設備の規模拡大による費用面の外部性を狙ったものと解釈できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度前半はコロナパンデミックの影響がまだ残っていたが、海外現地調査および海外でのオンラインセミナーの開催もでき、また国内の研究集会で研究成果発表もできた。さらに、昨年から執筆していた予稿論文をSSRNにディスカッション・ペーパーとして公開できた。昨年から考察を続けている意匠権侵害の論文も、順調に執筆を続けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であり、知的財産権全般にわたる本研究課題のまとめ的な考察進めるとともに、海外での成果発表を行っていく予定である(すでに申請済み)。できれば、英文雑誌の論文だけではなく、この研究をまとめるために日本語の著書を執筆する予定である。
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