研究課題/領域番号 |
20K01719
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
|
研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
奥井 めぐみ 金沢学院大学, 経済学部, 教授 (90333161)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 仕事満足度 / 努力水準 / インセンティブ / 昇進 / 育児休業 / 非金銭的インセンティブ / 生産性 / 管理職 / キャリア・コンサーン / インセンティブ理論 / 金銭的インセンティブ / 契約理論 / 実証研究 |
研究開始時の研究の概要 |
少子化・高齢化により日本の労働人口は減少していくことは明らかであり、いかに労働者の生産性を上げるかは重要な政策課題となっている。生産性を上げる方法の一つとして、労働者の労働意欲を高める効果的なインセンティブを与えることが考えられる。インセンティブには、大きく分けて金銭的インセンティブと非金銭的インセンティブがある。日本の年功賃金制度は金銭的インセンティブとなっているが、中高年の比率が上昇するにつれてこの制度の維持は困難となっており、非金銭的インセンティブを活用することが必要となる。そこで、本研究では、独自のアンケート調査を行い、非金銭的インセンティブが努力水準等に与える影響を明確にする。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、主に2つの論文執筆とアンケート調査の実施を行った。 論文の一つ目は、「仕事満足度決定要因に関する実証分析~女性の仕事満足度が男性よりも高い理由を探る~」というタイトルで、女性は男性に比べて質の低い仕事を与えられているにもかかわらず、仕事満足度には男性と差がないことの原因を探った。日本の仕事満足度に対する男女間格差の原因を男女の仕事に対する考え方にあると予想して、分析を行った。結果より、女性は仕事に対する考え方が男性と異なり、女性は男性と比べて仕事の上での処遇は悪いものの、仕事に期待していないために仕事満足度が高い可能性があることが示された。この論文は学会誌に投稿し、コメントを受けて改定したが掲載に至らなかった。 2つ目の論文は、「男女の昇進スピード格差と配置転換・職能経験」というタイトルで、女性の管理職が少ない原因は、職場内での経験が男性と異なることにあるのではないか、という仮説のもと、独自のアンケート調査を用いて、昇進スピードに配置転換・職能経験が与える影響について分析した。この分析では、企業が昇進させたい労働者に積極的に配置転換・職能経験の機会を与えるなど、これらの経験がある労働者にそもそも偏りがある内生性の影響を考慮するために平均処置効果を利用した分析を行った。しかし、分析手法について不十分とのことで、レフェリー付き雑誌の掲載には至らなかった。 2022年9月2日~7日にかけては、2015年に行ったアンケート調査の内容をふまえつつ、分析に必要な情報を充実させたインターネット上のアンケート調査「昇進経験と意識関する調査」を実施し、5097の回答を得た。この調査結果を利用し、努力水準と努力理由についてまとめたものを2022年度の紀要論文として掲載した。 これらに加え、女性の昇進や、男女の育児休業後の働き方に関する共同研究に参加し分析部分を担当した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調であると判断する理由として、2つある。一つ目は、今年度実施を予定していたアンケート調査を予定通り今年度中に行うことができた点である。実際には9月2日から9日にかけての1週間で実施した。調査は外部に委託して行い、実施までは、質問項目の内容、構成について、委託先企業の担当者と議論を行って進めた。予算の範囲内で、5097を超えるサンプルサイズの調査が実現できた。 特に、質問内容で改善した点は次の通りである。前回調査で欠損値となっていた所得や賃金上昇率に関する情報は確実に回答してもらう方向で調整し、また課長のみならず、係長昇進に関する情報も得た。さらに、アンケート調査の時期はコロナ禍でリモートワークが浸透していた時期であることもあり、リモートワークの有無、時間についての質問も追加している。 二つ目の理由は、2015年のアンケート調査を利用して2021年学会報告をした論文のリバイズを進め、論文投稿を行うことができた点である。2つの論文を投稿したが、いずれもリバイズし再投稿した結果、採用不可となってしまった。論文が採択に至らなかった点が、順調とはいえない点である。しかし、一方の論文は、リバイズの回数に制限があったことや、2名のレフェリー中1名は掲載を認めるなど、引き続きリバイズを続けていく価値がある研究といえる。もう一方の論文は、分析手法について厳しいコメントを頂いたが、今後、新しい分析手法を取り入れることで、説得的な結果を得ることができるという期待が残される。このように、現在の研究を継続することで、労働者の努力水準を引き出す非金銭的なインセンティブの在り方を明らかにできると期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は大きく二つである。一つは、2022年度の行ったアンケート調査を利用した実証分析を行うことである。大きなテーマは努力水準を引き出すための非金銭的なインセンティブの在り方を考える、というものであり、2021年に学会報告を行った研究の延長として、インセンティブ理論に基づき、金銭以外の労働者の努力を引き出すしくみとして、昇進、仕事の与え方に注目する。また、2021年度に学会報告を損なったキャリアコンサーンの研究、すなわち現在の業績が将来の昇進・昇給に影響するという理由で、現在努力する、という労働者の行動についても、勤続年数が以前ほど長くなくなった現在において、機能するのかどうかの研究を引き続き行う。 二つ目は、2022年度に投稿した2つの研究について、なるべく早く公表するということである。実証分析を行う際には、逆の因果関係の問題や、セレクションバイアスなどが起きるが、それに対応する分析手法も日々進歩している。近年は、傾向スコアマッチングや平均処置効果など、医療分野で使われてきた分析手法が経済学でも使われるようになっている。また、計量ソフトでもこのような分析コマンドがデフォルトで設定されている。そのため、可能であれば、分析手法を見直し、より説得力のある分析方法で論文をリバイズすることを検討している。投稿については、レフェリー付きの雑誌掲載を目指すのが一番の目標ではあるが、公表を急ぐために、紀要の掲載も検討したい。 さらに、2021年度より行っている女子労働に関する共同研究について、本研究のテーマである昇進、インセンティブとかかわる研究として引き続き実証分析部分を中心に協力していく予定である。
|