研究課題/領域番号 |
20K01743
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
左三川 郁子 (笛田郁子) 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (30843776)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 日本銀行 / 非伝統的金融政策 / リスク性資産の買い入れ / 資産買い入れ / 出口 / 長寿化 / 少子高齢化 / 金融政策 / 自然利子率 / 新型コロナウイルス / マイナス金利 / 名目金利の実効下限 |
研究開始時の研究の概要 |
日本銀行が世界に先駆けて非伝統的金融政策を開始してから20年を迎える。だが、物価安定目標が達成されたことは未だなく、一連の非伝統的金融政策と物価との関係性が見えにくい。本研究では、我が国で急速に進む長寿化が日本銀行の金融政策に及ぼす影響について考察する。長寿化が人々の貯蓄性向や自然利子率、すなわち貯蓄と投資をバランスさせる均衡実質金利に及ぼす影響を定量的にとらえ、金融緩和政策の効果をどの程度弱めるかを探る。長寿化を背景に日本が低金利環境を維持せざるを得なくなっているとすれば、我が国のみならず欧米やアジアの国々に対しても重要な示唆を提供することができる。
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研究実績の概要 |
2022年度は日本ファイナンス学会秋季全国大会ならびに日本金融学会秋季全国大会にて論文「QQE下における日本銀行のETF買い入れ」について報告した。 日銀のリスク性資産の買い入れ、とりわけ2013年4月以降の量的・質的金融緩和(QQE)政策の下で「質的緩和」と位置付けられてきた上場投資信託(ETF)の買い入れに注目し、①日銀はどのような状況の下で買い入れを進めてきたのか(政策反応関数)、②買い入れの結果、株式市場で何が起きていたのか、③日銀はETF買い入れの目的を果たしたのか、について考察した。離散選択モデルによる検証の結果、日銀はETFの購入に際し、TOPIXの前日終値から当日午前終値までの株価リターン、TOPIX午前終値の5日移動平均からの乖離率、高頻度データから計測した午前の実現ボラティリティ(Realized Volatility)、前日のリスクプレミアム指標などを参照していることが確かめられた。また、買い入れの結果、株価リターンは午後に上昇し、ボラティリティは低下していたことが確認できた。この傾向は日銀の買い入れ増額に伴い、増幅されていた。 日銀はETF買い入れの目的をリスクプレミアムに働きかけるためと説明してきた。ETFの買い入れにより、株式益回りと安全資産利子率の差で表されるイールドスプレッドは日次で見ても週次で見ても縮小していることが確かめられた。また、オプション価格から計算される分散リスクプレミアム(Variance Risk Premium)も、日銀のETF買い入れによって縮小していた。 以上の内容をとりまとめ、2023年度中に査読誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大規模データ(高頻度データ)を用いた分析に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度秋の日本ファイナンス学会ならびに日本金融学会で報告した論文(前半パート)を修正し、2023年度中に査読誌に投稿する。学会報告論文の後半パートについては分析作業を継続し、2023年度中に別論文として査読誌に投稿する予定である。 また、日本銀行が伝統的金融政策を実施してきた1999年以降を対象に、自然利子率の推計作業を進める。特に1990年以降の人口高齢化と減少、その後の長寿化が自然利子率の低下に及ぼした影響について調べ、論文の形にする。
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