研究課題/領域番号 |
20K01761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 東京理科大学 (2022) 京都産業大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
岩城 秀樹 東京理科大学, 経営学部経営学科, 教授 (40257647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 不確実性下の意思決定 / 曖昧性 / 気質効果 / アノマリー / 滑らかな曖昧性モデル / 非期待効用 / 経済パズル / 不確実な確率を持つ期待効用 / 参照点異存 / プロスペクト理論 / 曖昧性下の意思決定 / 参照的依存 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、まず第一に将来起こり得る結果が不確実で、起こり得る結果や結果の生起確率が一意に定まらないという曖昧性下での意思決定について、既存の意思決定理論モデルを、より現実適応性を高めるように発展させることである。そして、その次に新たな曖昧性下での意思決定モデルを用いて、既存の実証研究においては頑健にその存在が示されているものの従来のファイナンス理論では説明の付かないアノマリーとして扱われてきた気質効果(経済主体は保有資産価値が上昇した場合に比して、 下落した場合には保有資産の売却を行わないという実証的に観測される現象)の解明を試みることである。
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研究実績の概要 |
当該年度の研究成果は以下のとおりである。 (1) Izhakian, Y.が提唱した不確実な確率をもつ期待効用(Expected Utility with Uncertain Probabilities)を用いて、人々の曖昧性に対する態度が、ポートフォリオ選択と資産価格にどのように影響を与えるのかについて分析を行った。この結果、以下の3つの結果を得た。①対象資産の期待収益率が正であっても、収益率が曖昧な資産については投資をしないこと。②曖昧性回避が、収益率が曖昧な資産に対する需要を減少させるための条件を導出。③市場データに基づき推定したパラメータ値を用いて状態価格密度を導出、この成果を``The net effect of attitudes toward ambiguity on portfolio choices and asset prices." という題目の論文にまとめて国際学術誌に投稿、査読者改定要求を受けて、改訂版を再投稿、現在審査中である。 (2) 昨年度、将来起こり得る結果が不確実で、起こり得る結果や結果の生起確率が一意に定まらないという曖昧性下での意思決定モデルの一つであるIzhakian, Y.が提唱した不確実な確率をもつ期待効用(Expected Utility with Uncertain Probabilities)を用いて、従来のファイナンス理論では説明の付かないアノマリーとして扱われてきた気質効果(保有資産価値が上昇した場合に比して、下落した場合には保有資産の売却を行わないという実証的に観測される現象)の解明を数値実験によって行った。この結果、パラメータ設定によっては、内性的に従来のモデルよりも強く気質効果が発現することを導出できた。今後、これを論文にまとめ、然るべき国際学術誌に投稿、掲載を目指していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「補助事業期間中の研究実施計画」に記載したとおり、本研究課題は、以下の研究を行うことであった。 (1)Klibanoff, P.らが考案した滑らかな曖昧性モデルを、既存の文献調査に基づき、公理を用いて参照点依存型に拡張する。すなわち、参照点を基準に曖昧性に対する態度が変化するモデルを導出する。 (2)導出したモデルを基に比較静学を通じて曖昧性が人々の資産価値と資産選択に与える影響を考察し、従来の経済主体は一様に曖昧回避的あるいは曖昧愛好的とするモデルから得れる結果との違いが何であり、何故その違いが生じるのかを分析し、得られた結果の経済学的含意について考察する。 (3) 参照点依存型曖昧性下の意思決定モデルを、滑らかな曖昧性モデル以外のものとした場合に、どのような違いが現れるのか、そして、その違いが何故生じるのかについて考察する。 この研究実施計画に照らして、現在までの本研究課題の進捗状況は、上述の「研究実績の概要」に述べたとおりの成果が得られており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、当該年度得られた研究成果(研究実績の概要の(2))を論文としてまとめて適当な国際学術誌へ投稿し論文の掲載を目指す。 今後の研究としては、以下の研究を行っていく。 (1)これまで行ってきた本研究会課題のテーマである質効果発現を説明し得る参照点依存型曖昧性下の意思決定モデルとしては、滑らかな曖昧性モデルを用いた場合、曖昧性の気質効果に与える影響は明確であるとは言い難かった。しかしながら、これまで、数値シュミュレーションを行った結果からも、滑らかな曖昧性モデルよりもIzhakian, Y.が提唱した不確実な確率をもつ期待効用(Expected Utility with Uncertain Probabilities)の方が柔軟性があり曖昧性による気質効果をはじめとするファイナンスのパズルの説明には優れており、これを用いた場合、パラメータの設定により内性的に気質効果が発現することが確かめられた。したがって、これを用いた気質効果解明に注力していく。 (2)各事象に対して、様々な曖昧性に対する態度をもつ意思決定者が共有する主観的な尤度の上下幅をもとに、事象に対する不確実性の測度を与えて、そこから各意思決定者の事象に対する選好を表現する新たな方法として、Qualitative Uncertainty Assesments (以下QUAと略す)(Gul, F. and W. Pesendorfer 2020 ``Calibrated Uncertainty,” Journal of Economic Theory 188 105016)がある.QUAに基づき特定の意思決定モデルを構築することによって、最適資産選択問題を定式化し、この問題の解法と解の性質について考察し、それに基いて気質効果の説明を試みることも、継続的に行っていきたい。
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