研究課題/領域番号 |
20K01762
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小林 磨美 立命館大学, 経営学部, 教授 (40411566)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | バンキング / 銀行規制 / 配当政策 / 企業金融 / 契約理論 |
研究開始時の研究の概要 |
2007-2009年の世界的金融危機では、銀行が過剰なリスクテイクを行ったことが主要な原因の一つとして考えられている。危機後における自己資本規制の強化は、自己資本の充実を通じて、銀行が預金者を含む債権者に投資のリスクを転嫁するのを防ぐ効果が期待されている。 その一方で、自己資本規制の強化が実際に銀行のリスクテイクを抑制しているかどうかについては議論が分かれている。とくに低金利が続く中で、比較的高配当を続ける銀行にとって、配当支払いと株価の維持はリスクの高い投資への誘惑となる危険性がある。 以上を鑑み、本研究は配当支払いをめぐる現実の投資家行動を考慮に入れて、規制強化の影響を分析する。
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研究実績の概要 |
今年度は配当支払いを通じた銀行によるリスクテイクが発生する理論モデルを構築し、銀行のリスクを抑制するための規制として自己資本規制とともに配当制限が有効になる結果を得た。本研究を論文にまとめ、現在専門ジャーナルへの投稿を準備している。なお論文の概要は以下のとおりである。 近年の経済危機から得られた実証的証拠は、マクロ経済ショックに対応して流動性を供給することは、銀行を資産サイドの資金流出リスクにさらすことを示唆している。本研究は、キャッシュ流出リスクが、ショックが経済を直撃する前に配当として現金を受け取ることを株主に動機付けることによって、銀行の配当政策に影響を与えることを示す。預金保険は銀行が本来の役割であるリスク転換を追求するために必要である一方で、配当の増加や資本水準の引き下げによって銀行がリスク転換を行うことを可能にしている。資本規制は銀行のリスク転嫁動機を制限することができるが、銀行の配当とリスクは、キャッシュ流出リスクが高まれば正の関係にあり、投資収益率が高まれば負の関係にある。キャッシュ・アウトフロー・リスクが高い場合、配当規制は資本規制よりも銀行のリスク抑制に効果的である。我々の結果は、2007年から2009年の世界金融危機における銀行の配当政策のばらつきを説明する可能性を提供するものである。また、COVID-19のパンデミックの発生時に配当規制を導入した可能性のある理論的根拠も提供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に執筆し専門ジャーナルに投稿していた本研究にかかわる論文の審査において、コロナ禍の混乱を受けた手違いにより10か月超の時間が無駄になってしまった。審査結果で指摘された問題点を修正するために異なる観点から新規にモデルを開発する必要に迫られたことで研究に遅れが生じた。また生活面において実父の介護と逝去、それに伴う実母の生活介助のため研究時間に大幅な制約が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
外生ショックが銀行からのキャッシュ流出を引き起こす条件やメカニズムを解明するためのモデルの構築と分析を目指す。今年度の研究では外生ショックに伴う銀行からのキャッシュ流出を所与として銀行行動の分析を行った。しかしながら、貸し手に対して銀行が事前に設定するクレジットラインなどが主なキャッシュ流出経路になりうることを考慮に入れると、銀行による流動性マネジメントが十分なされているならば事後的な現金喪失を防止することが可能と考えられる。この点を鑑みて、今年度は銀行によるクレジットラインの設定が事後的なマクロショックのもとで現金流出の経路として機能する事前の条件やメカニズムについて解明し、その防止策としての銀行規制を考察することを目標とする。
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