研究課題/領域番号 |
20K01769
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西原 理 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20456940)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ファイナンス / 金融工学 / リアルオプション |
研究開始時の研究の概要 |
新規的な動学モデルを開発・分析して,静学モデルでは分からなかった,企業の実物投資・資金調達・倒産の動学プロセスを解明する.複数の研究プロジェクトを同時並行で進めるが,例えば,(I) 利益水準に基づいた借入制約の下での実物投資タイミングや,(II)戦略的な負債増加による連鎖倒産を研究する.(I)では,従来の担保制約でなく利益水準に基づいた借入制約をモデル化し,資金調達・投資行動に与える影響を明らかにする.(II)では,企業倒産が負の外部性をもつモデルを新たに開発し,「負の外部性の下で企業が戦略的に負債を増やして他企業と同時に倒産する」という連鎖倒産発生の新規的なメカニズムを示す.
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研究実績の概要 |
企業の実物投資・資金調達・倒産の問題について、以前は静学モデルで分析されることが多かったが、近年では動学的な確率モデルでタイミングや変動の問題を分析することが重要になっている。本研究では、新規的な理論モデルを開発・分析して、静学モデルでは分からなかった、企業活動の動学プロセスの解明を行ってきた。報告書の後半に記載した通り、今年度は、3本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載された。 Nishihara (2023, EJOR) では、売り手企業が主導する企業買収のモデルを分析した。複数のタイプの買い手企業が確率的に到着するモデルで、売り手企業が買収に応じるタイミングと価格を導出した。買い手企業の到着率、異質性の度合い、情報の非対称性、収益の不確実性が、タイミングと価格に及ぼす影響を明らかにした。買い手主導の企業買収のモデルが多いが、実際の企業買収の半数程度は売り手主導であり、この研究によって、売り手主導のメカニズムの理解が深まった。 Shibata, Nishihara (2023, JBF) では、標準的な実物投資・資金調達・倒産モデルを、経営者が清算価値について私的情報を持つモデルに拡張した。経営者と投資家の情報の非対称性が、投資を遅らせ、負債を減少させることを示した。また、情報の非対称性が大きくなると、企業は、無リスク負債と株式によって資金調達を行うことを示した。 Nishihara, Shibata, Zhang (2023, IRFA) では、標準的な実物投資・資金調達・倒産モデルを、キャッシュフローに基づく借入制約のあるモデルに拡張した。この制約の投資・資金調達・倒産への影響は、清算価値に基づく借入制約とは大きく異なることを示した。例えば、不確実性の増加は、投資タイミングの遅れにより、キャッシュフローに基づく借入制約を緩める効果があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規的な理論モデルを開発・分析して、静学モデルでは分からなかった、企業活動の動学プロセスの解明を行っている。研究成果については、概ね順調に、論文として結果が現れてきている。実際、今年度には、報告書の後半に記載した通り3本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載されている。特に、European Journal of Operational ResearchとJournal of Banking and Financeは国際的に評価の高いジャーナルである。その他にも、4本の論文が、国際的な査読付きジャーナルに投稿され、審査中である。 当初、国内外の多くの学会に参加して研究発表を行う予定であったが、新型コロナの感染状況により、2020、2021年度には、出張(特に海外出張)ができない状況になってしまった。そのため、オンラインの学会に参加して研究発表を行ったり、オンラインの国際セミナーを開催したり、共同研究者とオンラインミーティングを行ったりして、研究を進めてきた。しかし、対面での議論に比べて、他の研究者からのフィードバックを得るのが難しかった。2022年度(特に後半)には、感染状況の変化や渡航制限の緩和によって、国内外で、対面の学会も増加し、出張もできるようになってきた。2023年度まで、本研究プロジェクトの期間延長を行ったので、引き続き、積極的に国内外の学会で研究発表を続けていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本研究プロジェクトは、概ね順調に進展しているので、基本的には、これまで通りのペースで研究を継続させ、論文という形にまとめていきたいと考えている。論文を国際トップレベルの査読付きジャーナルに掲載するためには、ジャーナルに投稿する前に、重要な国際学会で発表して、参加者の反応やフィードバックを生かして、論文を改善していくことが不可欠である。さらに、同じ分野で活躍する国内外の研究者と積極的に議論し、共同研究を行うことも必要である。 2020、2021年度には、新型コロナの感染状況により、海外出張を行って国際学会で対面の発表をすることができない状況となってしまったが、2022年度(特に後半)には、感染状況の変化や渡航制限の緩和により、国際学会で対面の発表をすることができる状況に戻ってきた。2023年度まで本研究プロジェクトの期間延長を行ったので、この状況が変わらなければ、2020、2021年度に実施できなかった分まで、なるべく多くの国際学会に対面で参加して発表を行い、関連研究者から多くのフィードバックを得たいと考えている。
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