研究課題/領域番号 |
20K01778
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
大野 弘明 明治学院大学, 経済学部, 教授 (20554934)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 双曲型割引 / 借入制約 / 非流動資産 / 状態依存型コミットメント / 裁量的選択 / リスクシェアリング / ROSCAS / 銀行 / 資産市場 / 信用リスク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,銀行や金融市場などのフォーマルな金融セクター,および,無尽講やRotating Savings and Credit Association (ROSCAs)といったインフォーマルな金融セクターが併存する動学モデルの構築をおこなう。フォーマル・インフォーマルな金融部門の併存を考慮した内生的な金融技術革新を与える動学マクロ経済モデルを分析する。さらに,その理論モデルを教育投資・人的資本蓄積や金融技術投資を扱える形に発展させ,経済発展段階における金融技術革新が所得格差に与える影響と政策的含意を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2020年度の研究成果として、”Hyperbolic Discounting and State-Dependent Commitment”の分析及び執筆を行なった。準双曲型割引で意思決定をおこなう個人は、現在と将来で意思決定に時間非整合性の問題が生じる。Laibson(1997)など従来の研究では所得が安定的に成長するという仮定のもとでは、現在の意思決定をコミットすることが現在の自分にとって最も望ましい選択であることが示されている。本研究では、将来所得に保険不能なリスクを伴う、3期間世代重複モデルを構築し、非流動資産及び将来所得によって内生的に決定される借入制約をyoung世代とmiddle世代に課した動学モデルを構築し分析した。 得られた結論は次のとおりである。将来所得の安定的な成長が見込めるならば、Laibson(1997)で示された通りにフルコミットメントが望ましいがこれは安定成長期を捉えることに過ぎない。所得プロセスや所得リスクをより一般的な分析を行う必要がある。安定成長期においては将来所得を担保とした借入需要があるため、コミットメントを行う動機を持つが、完全なコミットメントは均衡として支持されない条件も明らかにした。例えば将来所得にリスクを伴うもとでは、bad stateに対しては将来自身を制御するためにコミットメント手段を用いるが、good stateに対しては将来の裁量に委ねることが非完備市場における最適化行動になる。つまり、コミットメントは状態依存でなされるものであり、特に将来のリスクが拡大しているときには、状態依存型のコミットメントが戦略上望ましいことを示した。また、リスクを伴う不況下ではmiddleの借入需要が弱まるため、コミットメントがそもそも選択されず将来の自身に裁量を与えることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初ニュージーランドのVictoria University Wellingtonにて途上国の実地アンケート調査研究を前提としたROSCASなどの非公的金融部門からマイクロクレジットなどの公的金融部門への金融技術の移行過程を捉らえる動学マクロ経済の分析を実証及び理論的におこなう予定だった。しかしながら渡航を伴う研究の実施が困難になったため、先に申請課題の理論モデルの構築とその分析を中心に進めることにしたため、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
Covid-19の影響を鑑みながら、渡航が可能になれば、途上国における農村地方におけるアンケート調査を通じた分析を行うが、それが難しいようであれば引き続き理論モデルの構築と分析を行う。
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