研究課題/領域番号 |
20K01790
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 カンナ 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (30334999)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | イタリア / 国際収支 / 国際協調 / 経常収支赤字 / 通貨危機 / 地域格差 / 公企業 / 開発計画 / 国家持株会社 / 開発援助 / 経済史 / 地域経済格差 |
研究開始時の研究の概要 |
1950年代初頭から1963年にかけてイタリアは急速な経済成長=「奇跡の成長」を経験し、1958年にはヨーロッパ主要国とともに通貨の対外的交換性の回復に踏み切った。この時期にイタリアはブレトンウッズ体制とヨーロッパ統合プロセスとに参加し、国内の経済問題は国際協調の場においても検討され議論された。本研究では、同時期のイタリアにとって最重要な政治・経済課題であった南北の地域格差問題を、国際通貨・貿易体制の再建と資本市場の復活というグローバル化の文脈の中に位置づけ、歴史実証的に解明することで、戦後の国際協調体制が、加盟国のマクロ経済政策とりわけ地域開発政策にどのような制約や影響を与えたかを検証する。
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研究実績の概要 |
1950年代初頭から1963年にかけてイタリアは急速な経済成長=「奇跡の成長」を経験し、1958年にはヨーロッパ主要国とともに通貨の対外的交換性の回復に踏み切った。この時期にイタリアはブレトンウッズ体制とヨーロッパ統合プロセスとに参加し、国内の経済問題は国際協調の場においても検討され議論された。本研究では、同時期のイタリアにとって最重要な政治・経済課題であった南北の地域格差問題(「南部問題」)を、国際通貨・貿易体制の再建と資本市場の復活というグローバル化の文脈の中に位置づけ、歴史実証的に解明することで、戦後の国際協調体制が、加盟国のマクロ経済政策とりわけ地域開発政策にどのような制約や影響を与えたかを検証する。 2022年度は、1963年後半~1964年前半にイタリアの国際収支が赤字転化した「国際収支危機」に着目し,1)経常収支の赤字国はどのような政策対応が求められたか,2)通貨危機に国際協調システムはどう機能したか,3)安定化政策の内容と効果を検証した。その結果,固定相場制下で経常収支赤字国は成長を犠牲にしても国際収支の均衡回復のための財政・価格・所得の包括的措置を優先するよう求められたこと(「赤字国責任」).その一方で,通貨危機に対応する国際通貨協力システムの重要性が提起され.継続的な情報共有や,専門家による定期検査,危機時には即座のファシリティ提供に向けた国際協調システムの構築につながったことを明らかにした。この成果はWorld Economic History Congress世界大会で報告した。 また,前年度までに検証を進めてきた南部開発の史的展開と公企業部門の果たした役割についてディスカッションペーパーを公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、徹底した一次史料の収集を基礎にした歴史実証的なアプローチを採るため,史料館を訪問しての原資料の調査と収集が不可欠であるが,2020年以降のコロナ禍によりイタリアおよびアメリカ合衆国に渡航して現地の史料館で資料調査・収集することができていないため。
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今後の研究の推進方策 |
世界銀行・国際通貨基金・イタリア銀行史料などを用い,1950s-70sのイタリアの金融政策運営と国際資本移動について検証する。1950-60年代の世界銀行(世銀)と欧州投資銀行(EIB)の多額の対イタリア借款や国際資本市場でのイタリア政府・企業の資金調達がどのように実現し,その経済成長や地域格差是正にどのような影響を与えたか,1960年代末からのユーロ・ダラー等の海外資金の流出入の激化やインフレ加速と国際収支悪化,財政赤字の大幅増加を背景としてイタリアの金融政策がどのように変化したかを検討する。第2次大戦後のイタリアはブレトンウッズ秩序と欧州経済統合とに参加して貿易自由化を積極的に推進したが,自由化に伴い国内の地域経済格差は拡大し,「遅れた」南部の開発が課題となった。通貨安定化と国際収支の均衡という制約下で,大規模な南部開発投資を可能にしたのは1950年代を通した世銀借款と1958年設立のEIBからの集中的な融資であった。本研究では対伊借款の背景にある開発構想や欧州共同市場の地域政策,南部投資の帰結(地域格差の拡大)を検証する。また,1950年代末の金融緩和政策と「経済の奇跡」から,60年代末からの内外金利差拡大,物価上昇と対外収支悪化,中央銀行による巨額の財政赤字ファイナンスを受けた,通貨安定化への政策転換を展望する。
研究の基盤となる史料を得るため,できるだけ早い時期にイタリアおよびアメリカ合衆国の史料館に赴き資料調査・収集を行う。
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