研究課題/領域番号 |
20K01797
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
島西 智輝 東洋大学, 経済学部, 教授 (70434206)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 石炭産業 / 鉱山保安 / 労働組織 / 労働災害 / 労務管理 / 安全衛生 / 炭鉱 / 労働 / 労働組合 / 産業史 / 経営史 / 保安 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本企業が「生産第一、安全第二」と称される経営から、「安全第一、生産第二」と称される経営へとどのように移行していったのか、という点について、戦後日本の石炭産業の歴史に基づいて検討する。日本の炭鉱遺構が世界遺産や近代化産業遺産に指定されている現在、石炭産業の生産と安全の実態の解明は、石炭産業の歴史そのものの評価にかかわる重要な論点である。また、日本の石炭産業の生産技術やノウハウは、海外に移転されるだけでなく、国内のトンネル・坑道掘削や放射性廃棄物貯蔵研究施設など、他産業にも応用されている。したがって、本研究は日本企業の「安全第一、生産第二」の基盤の形成史としての意義も持っている。
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研究実績の概要 |
本年度は、鉱山保安と労働組織との関係に注目し、三井芦別炭鉱の事例を検討した。とくに、石炭産業独自の職場秩序である、現場職員に対するベテラン鉱員の優位が鉱山保安にどのような影響を与えたのかを分析した。分析にあたっては、北海道芦別市星の降る里百年記念館に所蔵されている一次史料を収集した。先行研究ですでに示されている両者の関係を再確認したうえで、現場職員、ベテラン鉱員双方の属性について可能な限り接近した。その結果、三井芦別では職制とは異なる職場秩序が成立しており、ベテラン鉱員は高い技能を持ち勤勉な一方、現場職員は保安に責任を持つ現場責任者として必ずしも的確ではなかった可能性を明らかにした。そして、重大災害発生の背景に、こうした職場秩序や現場職員の適性の問題があったことを明らかにした。以上の研究を論文にまとめ、公刊した。 また、炭鉱技術者OBらとの協働のもと、太平洋炭砿を事例に、日本の坑内保安技術や機械化採炭技術が、1970年代まで世界で先端的な水準であったことを、採鉱学的、および歴史的な視点から明らかにした。本研究についても論文を執筆し、海外の学術書へ投稿、査読中である 本年度までの研究により、主として技術面、組織面の点から日本の石炭産業が「安全第一、生産第二」の事業を行うようになっていったこと、しかしながらそれは石炭産業が衰退局面に入った1970年代以降であったことを明らかにした。これらは、危険な産業としての石炭産業という特徴を再発見しつつも、それが永続的な特性ではなかったことを明らかにしている点で、従来とは異なる石炭産業史の一側面を示していると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度で研究成果をまとめる予定であったが、予定していた調査が調査先の都合で実施できなかったこと、および海外の学術書への投稿論文の査読結果が2022年度中に返却されず、修正・オープンアクセス手続き等が年度中に完了しなかったため、研究期間を1年延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいる研究成果の速やかな発表に努めるとともに、まだ明らかにできていない経営面での「安全第一、生産第二」の実像を既存収集資料、および追加調査によって分析する。
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