研究課題/領域番号 |
20K01806
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 克美 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (50304069)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ソビエト / 消費社会 / 企業社会 / 消費 / 体制崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではまず、1970年代のソビエトを念頭に、消費における企業の役割を検討し、ソビエトが消費分野でも企業への依存度が高い「企業社会」であったことを示す。住宅や乗用車などこれまで知られてきたような財にとどまらず、労働者は企業を通じて様々な日用品を入手していた。そのことが人々の関心を企業という狭い領域に囲い込み、社会における格差や不平等を覆い隠すことにつながったと考える。 次に、ペレストロイカ以降、この「企業社会」がどのように変化したのかを、消費財供給の変化と消費者の企業からの自立という観点から検討する。 最後に、消費者・企業・国家のバランスの変化から、ソビエト崩壊のプロセスを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、第一にソビエト時代のダーチャ(別荘)の取得方法をモスクワの事例を中心に研究した。ダーチャには、政府の高官など特権階級に与えられていたものが普及したのと、戦後の食糧難に対応するために生まれた菜園経営から発達したものとの、二つの系譜がある。これらのダーチャがそれぞれ普及する過程と、その過程での企業の関与の在り方を研究した。その結果、ダーチャ(土地)の国家からの配分は、ソビエト体制初期には企業単位で配分されることが多かったが、実質的にダーチャの私的所有としての性格が強まるとともに、企業の重要性も次第に低下したことが明らかになった。 また、本プロジェクトを遂行するなかで、多くの人々が「企業で手に入れた」と表現する場合、企業組織本体が手配したものなのか、労働組合が手配したものか、明確に区別されて語られていないことに気づいた。さらに、そこへの党の関与も不明であった。そこで、この点を明らかにするためにインタビュー調査を行った。調査人数は少ないが、半構造化インタビューでは、企業本体付属の「オルス(労働者供給部)」はシベリア・極北地域に多く、産業としては採掘業および運輸業に多いという予想が支持された。その他の企業では、労働者の消費財確保に動いていたのは基本的に労働組合であった。 本プロジェクト全体としては、一般消費財、自動車、別荘など、様々な商品を企業が配分しており、ソビエトでは、生産のみならず消費の側面でも企業が大きな役割を果たしていたことが示された。ただし、市民が独自の消費ネットワークを形成することによって、時代とともに企業の役割が低下するという傾向も見られた。企業を離れた空間での市民のネットワークの形成は、企業という狭い空間に閉じ込められていたソ連の人々の視野を広げたと思われる。それが表面化するのは、計画経済が破綻に向かうペレストロイカ期である。
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