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義利合一の経営哲学の探究:儒学を媒介としたグローバル経営倫理の構築に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 20K01877
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分07080:経営学関連
研究機関一橋大学

研究代表者

田中 一弘  一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (70314466)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード義利合一 / 先義後利 / 渋沢栄一 / 経済士道 / 公への奉仕 / 誠実 / 勇気 / 道徳経済合一 / 儒教倫理 / 経営倫理
研究開始時の研究の概要

本研究は、渋沢栄一らが唱えた儒学概念でありかつ経営哲学である「義利合一説」(=道徳経済合一説)を、現代の経営学(経営倫理)の観点から学術的に探究しようとするものである。営利を前提とする資本主義経済システムの中で、様々な責任の履行(CSR)や社会的課題解決への貢献(SDGsなど)を求められる現代企業にとって、営利活動と倫理・道徳を共に追求していくための理念的基盤は不可欠である。それを提供する枠組みとして、義利合一説は現代的意義を、グローバルにも十分持ちうる。本研究を通じて、近年、経営倫理領域で注目を集めつつある儒教倫理を媒介としたuniversalな経営倫理の理論を打ち立てることを狙っている。

研究実績の概要

本研究は、渋沢栄一らが唱えた儒学概念でありかつ経営哲学である「義利合一説」(=道徳経済合一説)を、現代の経営学(経営倫理)の観点から学術的に探究しようとするものである。営利を前提とする資本主義・市場経済システムの中で、様々な責任の履行や社会的課題の解決への貢献を求められる現代の企業にとって、営利活動と倫理・道徳を共に追求していくための理念的基盤は必要不可欠である。そうした基盤を提供する「新たな」枠組みとして義利合一説は現代的意義を、グローバルにも、十分持ちうるものである。
義と利を合一させる要諦は「先義後利(義が先で利が後)」である。ここでいう「先」「後」は、時間的前後関係のみならず価値的優劣関係をも意味する。ただし、利を「後にする」ことは利を「軽視する」ことではない点が極めて重要である。価値的優劣関係における先義後利とは、利よりも義を重んずるという相対関係を言っているに過ぎない。利そのものの価値を十分認め、かつ利を得る責任をも帯びてその責任を全うしようとする。しかし義を「先」とする。こうしたスタンスでの経営実践を「経済士道」と呼ぶ。
令和5年度は、本研究の研究成果をまとめる書籍の執筆に集中した。同書においては、まず渋沢栄一の道徳経済合一説のエッセンスとして「公益第一、私利第二」を抽出した上で、これを先義後利の概念へと拡張し、その先義後利の実践を「経済士道」と定義した。そして経済士道が重んずる義として、「公への奉仕」「誠実」「勇気」の3つを挙げ、現代の企業活動における経済士道の意義と必要性を論じた。さらに、近年の企業経営において大きな関心事となっている企業統治とESG /SDGsについて、「責任」という観点から、先義後利とやはり儒学における王覇の別の概念を用いて批判的に検討した。最後に、経済士道が資本主義再生のための「第三の道」たりうること、などを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和5年度は、研究成果としての上述の書籍の執筆を進め、年度末までに脱稿した。
渋沢栄一の経営思想については、関連団体からの協力も得つつ史資料にも綿密にあたり、学術研究に相応しい、正確でかつ独自性の高い解釈を心掛けた。一方でそうした学術的な厳密さと、他方でその成果の一般社会への還元、という2つの(ある意味では)二律背反的な狙いをもって執筆を進めたことにより、当初想定していた以上に時間を要したが、渋沢の思想についてこれまで不分明であった点を明確にし、なおかつ実務家が営利活動と倫理・道徳を共に追求していくための指針をも一定程度示すことができたと考えている。

今後の研究の推進方策

最終年度となる令和6年度には、上述の書籍にまとめた研究成果を積極的に内外の学界及び実務界に発信し、フィードバックを得て成果のブラッシュアップを図る。学会発表については、さしあたり2024年5月に日本で開催される東アジア文化交渉学会にて「渋沢栄一の道徳経済合一説と公益」という論題での報告が予定されている。また、別の学会の学会誌に、本研究の成果を反映した論文を寄稿する予定である。実務界への発信については、例えば、ある地方経済団体の年次総会において、本書の成果を実務家向けにアレンジした内容の講演が予定されている。
それと共に、本書執筆の過程で明らかになった今後の研究課題・展望を整理しつつ、さらなる研究の深化に向けた道筋を明らかにしていく。今後の課題としては、例えば儒学における先義後利の思想と西洋思想のいくつかとの類似性、そしてそこから示唆される先義後利のある種の普遍性の探求がある。ストア派倫理学の善と悪に係るフレームワークとの比較などが想定される。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2020

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 稲盛哲学と〈誠実さ〉2022

    • 著者名/発表者名
      田中 一弘
    • 雑誌名

      稲盛和夫研究

      巻: 1 号: 1 ページ: 19-36

    • DOI

      10.57273/inamori.1.1_19

    • ISSN
      2436-8261, 2436-827X
    • 年月日
      2022-03-25
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 経営者の誠実さとガバナンス改革2020

    • 著者名/発表者名
      田中一弘
    • 雑誌名

      経営行動研究年報

      巻: 29 ページ: 28-33

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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