研究課題/領域番号 |
20K01934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 明治大学 (2021-2022) 新潟大学 (2020) |
研究代表者 |
木全 晃 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (10448350)
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研究分担者 |
高橋 正泰 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (10154866)
板倉 宏昭 東京都立産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (80335835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 環境経営 / 組織文化 / 組織アイデンティティ / 海外移転 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,日本国内の事業所で開発・蓄積・発展させた地球環境保全と企業の収益性を同時達成する環境経営手法を海外子会社へいかに円滑に移転するか,そのメカニズムの解明にある.一般に海外移転の問題は制度や技術からのアプローチが多いなか,本研究はこれらに加え,特に文化的(価値的)要因に着目しながら,定量的・定性的比較を行う点に特徴がある.そこでは,研究代表者が開発した環境保護文化と,比較的新しい概念である組織アイデンティティとの関係性に注目するなどし,組織全体の文化次元を総合的に探索しながら国内事業所と海外子会社の取り組みを比較する.最終的にこれらの要素と,企業の環境面と経済面の成果を比較・検討する.
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研究実績の概要 |
人間は自然の一部である.そのようなパースペクティブからすると,自然にできるだけ負荷をかけずに企業の存続と成長が可能となるような「調和」を意味する「環境経営」(Sustainable management)は,現代の企業にとって重要なタームである.本研究は,これまで研究代表者が実施してきた複数の研究成果をもとに,海外展開に伴う環境経営の移転の問題に焦点をあてるものである.そこではグローバル化が進展する日本の製造業において,国内で開発・蓄積・発展させた環境経営を,いかに海外子会社でスムーズに活用ができるかが重要課題の一つと言える.本研究は,この移転がスムーズに進む組織とそうでない組織には制度的,文化的,技術的差異があるのではないか,との仮定に基づいている.一般に海外移転の問題は制度や技術からのアプローチが多いなか,特に本研究は「文化的要因(組織文化,組織アイデンティティ等)」を中心に据えながら,主に海外子会社への定性的・定量的調査により,その移転メカニズムを解明しようとする点に独自性,創造性を見出すものである. 本研究の3年度目となる令和4年度は,前年度までに達成できなかった4事項に関する計画(①環境経営の海外移転事例について数社へ予備的調査を行うこと,②質問紙票調査の実施およびSPSSを用いた回収データの解析とインプリケーションの抽出,③調査回答企業へのフィードバック・インタビューの実施,④定量・定性調査の総合的考察および解釈)を可能な限り総合的に進める予定のもので取り組みを開始した.特に,本研究の基盤となる上記の②について,新たに参加した分担研究者の知見とネットワークを援用しつつまずは実施することを計画した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述のとおり3年度目となる令和4年度は,前年度までに達成できなかった前述の4事項を可能な限り総合的に進める計画をもって開始した.特に,本研究のベースとなる②について新たに参加した分担研究者の知見とネットワークを援用しつつ主に実施する予定で取り組んだ.これは,①5000社を超える欧州の日系企業リストから製造業を抽出し送付先リストを作成する,②質問紙票を数千社の現地製造企業へ送付する,③回答を回収する,④SPSSによるデータの解析を行う,⑤インプリケーションを抽出する,といった段階からなる.これらの工程に加え,新たに参加した分担研究者との協議のもと,回答を得た質問紙票の回収を合理的かつ効率的に進めるため,本調査の回答用ホームページを製作し(日本語および英語),同ホームページへリンクさせたQRコードを製作するとともに,調査案内文・質問紙票(日本語および英語)へ当該QRコードを印刷するなどの複数工程(①´)が新たに追加された. ①については早々に取り組みを完了したものの,①´については少なからず時間を要することとなった.またロシアによるウクライナ侵攻などの政情不安からか,欧州の複数国への航空郵便物の取り扱い・送付が停止されていることも判明し,本質問紙票の送付国が制限されることとなった.こうしたことから当初予定よりかなり遅れながらも,欧州33カ国,三千数百社余りへの質問紙票の郵送をいったん終えることができた(②).しかしながら上述したロシアによるウクライナ侵攻などの政情不安,インターネットを利用したフィッシングなどの犯罪といった複数の原因に由来するものと考えられるが,回収率は,通常,国内企業への質問紙票調査で見込まれる割合を格段に下回る状況にあり思わしくない(③).このため,前述計画の④⑤の段階に進めていない.
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今後の研究の推進方策 |
本研究が1年間の延長を認められたことから,最終年度となる令和5年度は統計分析の遂行可能なサンプル数を最大限確保することを優先する考えである.これは,次のような追加策によって行うことを計画している.まず,①宛所不明で郵便物が返送された欧州製造企業について,Web等での検索により住所調査と質問紙票の再郵送を行うこと(電子メイルで「撤退のため回答できない」との連絡も複数件みられ,政情不安などから欧州海外子会社を移転・閉鎖するケースも少なくないようである),②本調査に関して既に問い合わせ等のあった海外子会社,および過去に研究代表者および研究分担者が調査を行ったことのある既知の欧州製造企業に対して電子メイルにより調査依頼を行うこと,③追加可能な未送付先の欧州製造企業を洗い出し,これをもとに新たに質問紙票を郵送すること,などにより行う計画である.これらの追加策で統計分析が遂行可能なサンプル数を確保することがどうしても困難な場合,善後策として,例えば欧州以外の地域への拡大等も視野に入れつつ最終年度は本研究を進める予定である.上述の追加策の結果いかんではあるが,次の段階として,昨年度に遂行できなかった2つの事項(④SPSSによるデータの解析,⑤インプリケーションの抽出)へと鋭意,取り組む計画である.これら令和4年度にクリアできなかった段階を経ることができた後,本研究が最終的に掲げてきた残りの事項(調査回答企業へのフィードバック・インタビューの実施,および定量・定性調査の総合的考察および解釈)を遂行する予定である.しかしながら,この最終段階に進むことはかなりハードルが高いと現時点では予想される.
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