研究課題/領域番号 |
20K01971
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
諸上 茂光 法政大学, 社会学部, 教授 (60422200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 羨望 / 妬み / 閲覧者の心理 / インスタ映え / 投稿動機 / 賞賛獲得欲求 / 行動変容促進 / 自己奉仕バイアス / 原因帰属 / 他者の消費経験 / 期待の形成 / SNS / 口コミ / 文脈 / 期待 / 評価 / SNS / 文脈効果 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,消費者の購買前探索にSNSが多用されるようになった.これにより,消費者はSNSから他の消費者が経験した具体的かつ確実性の高い情報,高画質な画像や動画などの商品やサービスに関する情報を簡単に繰り返し取得し,事前に消費経験をシミュレートできるようになった.こうした背景が「インスタ映え消費」「シミュレーション消費」のような特有の購買意思決定に繋がると予想される.本研究では,消費者間にやり取りされる情報の表現と,その情報の使われ方に着目することで, 他者の消費経験を文脈とした購買前に形成される期待と購買後に行われる評価の形成メカニズムのモデル化と実証調査によるモデルの検証を行う.
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研究実績の概要 |
近年の消費者はInstagram等のSNS投稿を検索して情報を探索することで購買意思決定を行っている.とくに充実した消費経験を顕示するいわゆる「インスタ映え」投稿は,閲覧者の購買意欲を刺激し類似した画像の投稿意欲を高めるとされ,閲覧者の購買意思決定や口コミ投稿意向に与える影響に注目が集まっている.一方で,先行知見では Instagram利用者の実態や利用動機に注目した研究が見られるものの,閲覧者の購買意思決定過程を実証的に解明を試みた知見は蓄積が少ない.そこで,インスタ映え投稿の閲覧者がどのような心理過程を経て購買意思決定を行っているのかを実証的に探った. インスタ映え投稿は消費経験を見栄え良く自慢する投稿であるため,閲覧者に羨望と妬みを感じさせる.羨望は購買意欲を高める一方で妬みは製品を忌避させるという先行知見を踏まえると,インスタ映え投稿を閲覧する消費者が知覚する羨望や妬みが購買意思決定に影響することが予想される.また,インスタ映え投稿の閲覧者が投稿者に共感する度合いによって投稿者の好意度が異なり,羨望または妬みの感情に影響するため,投稿者に対する共感感情や好意度が羨望や妬みを介して製品の評価に影響するという仮説モデルを構築し,検証を行った. 20代女性290名を対象に行ったアンケート調査から,インスタ映え投稿を閲覧する消費者の購買意思決定過程が明らかになった.インスタ映え投稿の閲覧者は,インスタ映え投稿の投稿者に対して共感や好意,羨望や妬みの感情を抱くこと,羨望と妬みの感情はどちらも閲覧者の購買意図を高めてインスタ映え投稿の模倣を促すことが明らかになった.本研究から,インスタ映え投稿は閲覧者の消費経験に対する憧れや購買意図を高めることが示され,共感性の高いインスタ映え投稿を活用したバイラル・マーケティングが有用であるという実務的示唆が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,他者の消費経験の情報をSNSを通じて閲読した消費者の購買意思決定過程に対してモデル化を進め,いくつかの有用な知見を得ることができた.特に,SNS閲覧者の羨望や妬みといった心理を中心とした新たな変数に着目することにより,共有される消費経験の持つ特徴的な要因がいくつか明らかになっている.その過程で,関連する業績として国内学会発表4報,査読論文1編の掲載及び著書の分担執筆1編の発表も行っている.この中には,昨年度展開を準備していた観光や地域の消費に関するものも含まれており,研究が新たな展開を迎えつつある. コロナ下で十分な対面の心理実験や調査ができていない部分や国際会議での発表などができていないなど,次年度に課題は残すものの,こうした状況から,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
観光や地域の消費を対象として,これまで蓄積してきた知見の実証や新しいモデルの構築を進めたい. また,コロナ禍で十分にできなかった対面での心理実験や調査についてもコロナの情勢を鑑みながらもさらに実施し,本課題の知見について,体系的な集約を試みたい.
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