研究課題/領域番号 |
20K02031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
井上 定子 兵庫県立大学, 社会科学研究科, 教授 (50388857)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | IFRS / グローバリゼーション / 任意適用 / 多文化共生 / 米国FASB / 内容分析 / 会計基準 / 国際社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、任意適用を含め140を超える国において国際会計基準(IFRS)は適用されている。しかしながら、国際会計基準審議会(IASB)が作成したIFRSをそのまま適用(フル・アドプション)する国は少なく、その多くが多様な適用方法をとっている。加えて、現在、IFRSへの統一化という現象と同時にIFRSから乖離する現象も主要国において観察されている。会計基準のグローバリゼーションという現象自体を主題とした場合、かかる相反する2つの現象をどのように解釈することができるのか、各国においてどのような違いがみられるのか、そして、その違いがなぜ生じるのか、について国際社会学の知見を援用して明らかにする。
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研究実績の概要 |
現在、IFRSの導入に伴い生じる会計基準のグローバリゼーションにおいて、IFRSへの統一化の動向とIFRSからの乖離の動向が観察される。このような複雑化する会計基準のグローバリゼーションの現状と今後の動向を国際社会学の知見を用いた学際的アプローチにより、包括的に解釈することが本研究の目的である。 本研究では、国際社会学の知見を援用し概念整理を行うとともに分析モデルの構築と精緻化を行うことを第一段階として、そしてこの分析モデルを用いて、かかるIFRS導入をめぐる複雑化した現象が観察されるEUや米国などの取り組みについて検討することを第二段階として位置づけている。 本年度は、分析対象の見直しを行い、IFRSへの相反する動向が並列的に観察される日本の会計制度に焦点をあて検討を行った。現在、日本では、連結財務諸表を作成する際に適用することができる会計基準として、日本基準だけでなく、IFRS、米国基準とJMIS(国際修正基準)の4つを選択することができる。これは、第一段階で示した会計基準のグローバリゼーション分析モデルの固有文化化に該当する。 そこで、固有文化化に絞り込み、国際社会学における多文化共生概念を援用して会計基準の共生モデルを構築した。そして、この共生モデルに基づき、日本の会計制度の現状(複数の会計基準が共生している状態)について分析を行い、それぞれ異なる共生の状態(日本基準との共生の関係性)を確認することができた。特に日本におけるIFRS任意適用は、不安定な共生状態にある序列型共生に分類されることが明らかとなった。今後、安定的な共生状態を維持することが期待される限りにおいて、市場別共生(自立型共生)という方向性を選択肢の1つとして示した。 以上の検討結果は、本年度の研究成果として、国内学会にて研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、分析対象の見直しを行い、日本の会計制度を取りあげて検討した。第一段階として展開した会計基準のグローバリゼーションの分析モデルのうち、固有文化化に絞り込み、多文化共生概念を援用して会計基準の共生モデルを新たに構築し、日本の会計制度の現状(複数の会計基準が共生している状態)について分析を行った。その結果は、国内学会にて報告を行った。 しかしながら、日本の会計制度の現状について記述的な分析を行ったが、現在顕在化している課題を含めて共生の可能性を検討することが十分にできなかった点、報告内容を論文として公表することができなかった点、そして、内容分析を行うに当たり関連資料の収集・データ化が不十分であり、内容分析の実施までに至らなかった点を考慮すれば、順調とはいえず、やや遅れていると判断した。 原因としては、分析対象を見直し、日本の会計制度を分析するに当たり、第一段階で提示した分析モデルを基に、新たな会計基準の共生モデルを構築することに時間を要したため、関連資料を収集・データ化し内容分析を実施する時間をもつことが十分にできなかったこと、異なる研究テーマでの共同研究および報告書の作成に予想以上に多くのエフォートを割いてしまったこと、そして新型コロナウィルス感染症の影響により、関連する国内外の学会への出席(情報収集や成果報告)が十分にできなかったことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第二段階は、IFRS導入をめぐり相反する現象が観察されるEUや米国などのIFRSに対する取組みを事例として取りあげ、第一段階で構築した分析モデルを踏まえて、それらのIFRS導入への取組みがどのように解釈可能であるのかを検討する段階と位置づけられる。今年度は、分析対象の見直しを行い、とりわけIFRS導入について任意適用という特徴をもつ日本の会計制度を取りあげ、記述的な分析を行った。しかしながら、研究成果を論文として公表できなかったこと、現在顕在化している課題を含めた検討を十分に行うことができなかったこと、それに加えて、関連資料を収集・データ化し内容分析を行うことができなかったこと、が課題としてあげられる。 そこで、次年度が最終年度であることから、まず、研究成果を論文にまとめ公表することに注力する。次に、IFRS任意適用により現在顕在化している課題を整理し、その課題を含めて会計基準の共生モデルを再検討する。そして、それを踏まえて、関連資料の収集・データ化を行うとともに、内容分析を行う予定である。あわせて、可能な限り、国内外学会での情報収集ならびに成果報告を行う予定である。
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