研究課題/領域番号 |
20K02034
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
福川 裕徳 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80315217)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 国際会計士倫理規程 / 基準設定プロセス / ステークホルダーの影響 / テキストマイニング / 国際監査基準 / 基準設定 / 国際会計士倫理基準 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、日本を含めた多くの国では、職業専門家である公認会計士および彼らが実施する財務諸表監査に対して「国際基準」が適用されている。しかしながら、これらの「国際基準」のインプリメンテーションは必ずしも有効ではないとの指摘がある。本研究では、どうすれば「国際基準」が有効に機能するかを明らかにすることを目的に、基準設定に対する各国利害関係者の関与の程度に着目し、それがその国における「国際基準」のインプリメンテーションの有効性に与える影響を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、財務諸表監査に関する国際基準(国際会計士倫理規程や国際監査基準)の設定に対する各国利害関係者の関与の程度が、その国における国際基準のインプリメンテーションの有効性に与える影響を検討することである。 本研究では、その主たる研究手法として、基準設定主体、国際会計士連盟、各国の職業専門団体、規制当局、監査事務所等、幅広い利害関係者へのインタビューを予定していた。しかしながら、新型コロナウイルスの蔓延により、グローバルにインタビューを実施することが極めて難しい状況となった。そのため、本研究には研究計画の大幅な修正が必要となった。 令和4年度まで一貫してインタビューの実施可能性を模索してきたが、残された研究期間を考慮し、研究方法を、国際基準の公開草案に対するステークホルダーからの回答の分析に限定することとした。その場合、ステークホルダーからの回答をそのままの形で定性的に分析するのか、あるいはテキストマイニングの手法を用いてそうした回答を定量的に分析するのか、という分析のアプローチを決定する必要がある。前者のアプローチには、回答に含まれるリッチな情報を、そのリッチさを失わずに分析できるという利点があるものの、設定した仮説に対して直接的かつ客観的なエビデンスを示すことに困難が伴う。また、後者のアプローチでは、仮説の検証に適した形での分析結果を得られるものの、定量化のプロセスで元々の情報が持つリッチさはある程度失われてしまう。両アプローチの利点と欠点を比較考量し、分析とその結果の解釈における客観性を可能な限り担保するため、後者のアプローチを採用することとした。 分析の対象としては、内容の重要性とデータの入手可能性に鑑みて、国際会計士倫理基準審議会が最近取り組んだ3つのプロジェクト、すなわち、非保証業務、報酬、社会的影響度の高い事業体を取り上げることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス蔓延の影響によって、本研究で当初計画していたインタビューが実施できなかったため、本研究の進捗は予定よりも遅れることとなった。そのため、研究期間を1年延長し、令和5年を最終年度とするととした。 研究方法を、国際基準の公開草案に対するステークホルダーからの回答の定量的な分析に限定することに伴って、仮説の再構築(修正)が必要となった。これまで、「特定の国において、国際基準の設定に対する利害関係者の関与の程度が高いほど、国際基準のインプリメンテーションの有効性は高い」との仮説を設定していたが、この仮説を検証するためには、国際基準のインプリメンテーションの程度を分析に含める必要があり、公開草案に対する回答以外の源泉からのデータを必要とする。研究の焦点を、基準設定プロセスに限定し、そこでのステークホルダー間のインタラクションに当てることで、より内的整合性と測定の妥当性の高い研究とすることを試みた。 具体的には、第1の仮説として、「規制主体および情報利用者は、職業会計士および情報作成者よりも厳しい基準を求める」を設定した。第2の仮説として、「基準設定において、規制主体の意見は、その他のステークホルダーの意見よりも重視される」を設定した。第3の仮説として、「基準設定主体のメンバーの出身国のステークホルダーは、基準設定主体が作成する基準案に賛成する程度が高い」を設定した。 これら3つの仮説は、関与するステークホルダーグループ間のインタラクションとそうした関係性に対する各国の状況の影響に着目するものであり、いずれも現在の国際基準の設定プロセスのあり方についての観察に基づいている。これらの仮説の検証結果は、国際基準設定プロセスの改善や、各国における国際基準のアドプションとインプリメンテーションの推進にとってのインプリケーションを提供する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、研究方法として、国際基準の公開草案に対するステークホルダーからの回答の分析を採用することとし、国際会計士倫理基準審議会が最近取り組んだ3つのプロジェクト(非保証業務、報酬、社会的影響度の高い事業体)を分析対象とすることとした。これら3つのプロジェクトは内容的に相互に高い関連性を有し、ほぼ同時期に進められたものであり、また実務への影響も大きい。 各プロジェクトについて、国際会計士倫理基準審議会が公表した公開草案に対する多様なステークホルダーからの回答を分析データとして用いる。分析にあたっては、計量テキスト分析・テキストマイニングのためのソフトウェアであるHK Coderを用いる。 具体的には、公開草案に対するステークホルダーからの回答を単語レベルに分解し、基準設定主体からの基準案に対する「賛成」と「反対」に分類する。さらに、「反対」は、より厳しい規定を求める反対と、より緩やかな規定を求める反対とに分ける。回答についてのこうした分析の結果を、ステークホルダーグループおよび国と結びつけて仮説を検証する。 具体的には、仮説1の検証としては、規制主体および情報利用者が、職業会計士および情報作成者よりも公開草案の内容に反対する(より厳しい規定を求めて反対)するか、前者が後者よりも公開草案の内容に反対する(より緩やかな規定を求めて反対)するかをテストする。仮説2の検証としては、公開草案の規定案から最終確定規定への変化を識別し、その変化が、(他のステークホルダーと比して)規制主体の意見に即したものであるかをテストする。仮説3の検証としては、公開草案に対する回答を国ごとに集約すると、国レベルでの賛成あるいは反対の程度は、基準設定主体のメンバーを出しているかどうかによって異なる(メンバーを出していれば、より賛成の程度が高い)かどうかを検証する。
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