研究課題/領域番号 |
20K02043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 北海道科学大学 (2021-2023) 札幌学院大学 (2020) |
研究代表者 |
檜山 純 北海道科学大学, 未来デザイン学部, 准教授 (90800772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 監査の基準 / レトロアクティブ / 監査人の責任 / 監査の失敗 / 合理的な期待 / 期待ギャップ / 監査手続 / 正当な注意 / 法的責任 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,一定水準以上の経験と能力を有する合理的な監査人による十分な監査手続が実施されてもなお監査の失敗をしてしまう理由を,監査手続のプロセスに注目しながら,民事訴訟で監査人が提出した証拠を中心とするレトロアクティブ・アプローチによる事例研究によって解明する。 研究開始段階では,①合理的な監査人が十分な監査手続を実施しても,その合理性・十分性を決定づける規準(監査の基準)に不備があれば監査の失敗がもたらされること,②その場合の責任は個別の監査人に帰されるべきではないこと,③監査人や監査手続の次元のみでの再発防止策は効果を発揮しないこと,を全体的な結論として見込んでいる。
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研究実績の概要 |
本研究は、一定水準以上の経験と能力を有する合理的な監査人が十分な監査手続を実施しているにもかかわらず、監査が失敗するのはなぜかを研究するものである。監査の失敗、虚偽証明に関する事例において、被告人である監査人の答弁と証拠から、「当時の監査の基準」に準拠していたか、その監査人の失敗であるかを、レトロアクティブ・アプローチに基づき検証した。 「当時の監査の基準」の範囲は、すべての監査人が準拠する「監査基準」および「監査基準」から委任された部分であることを、法学の先行研究で取り上げられている事例から明らかにした。監査の失敗を類型化し、それぞれのモデルケースとなるパイロット分析を行った。虚偽証明とはなっていないが、正当な注意を行使できなかった事例は、先行研究ではこれまで検討の対象とされてこなかったが、大手門会計事務所などの事例をもとに、監査の品質管理とあわせて、類型の枠で検討を行った。 コロナ禍で第一次資料のアクセスに制限が生じた点を補完するため、合理的な範囲を明らかにする目的で、立法の趣旨に遡る歴史的検討も行った。判決は、確かに裁判官の判断であるが、必ず根拠とした条文があり、それらには立法の趣旨が考慮されている。先行研究と異なる視点で法学分野の歴史的文献を分析できるまでに至っている。立法の趣旨の分析からの知見をレトロアクティブ・アプローチによる事例研究に取り入れたことにより、「法定財務諸表監査」において、固有の失敗の原因も明らかになってきている。その成果の一部は、査読付き学術雑誌に掲載され、また学会でも発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、判決および裁判で提示された証拠書類をもとに事例分析をすすめたケースとして、学会で成果を報告した。ただし、コロナ禍で出張が制限された影響が残っており、近距離では一次資料から確認できているものの、遠隔地の資料については電磁的なデータでの取り寄せ、データベースの利用が主となり、一部を次年度に持ち越している。ただし、判決が根拠とする、もととなる立法の趣旨の歴史的な検討を加えることができ、わが国の責任を抽出する国際比較など、レトロアクティブな視点でフレームワークを補完する研究が実施できた。Zoomも活用し、地方でも可能な研究がすすめられており、「おおむね順調」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
理論的精緻化とフレームワークごとのパイロットケース、事例分析は、学会で報告している。上記成果の一部は、令和5年度に投稿し、本年の令和6年度に掲載予定のものもある。ただし、一次資料へのアクセスは、一部の裁判所と短期間の閲覧にとどまっているため、最終年度に向けて、これまでに分析してきた事例の資料補完を行い、未実施の調査を遂行し、総括する予定である。
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