研究課題/領域番号 |
20K02072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
内藤 準 成蹊大学, 文学部, 准教授 (00571241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 社会的ネットワーク / ソーシャルサポート / 一般的信頼 / 特定化信頼 / 自由 / 社会的資源 / 社会ネットワーク / 信頼 / 社会階層 / ソーシャルキャピタル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,「信頼」が人びとの社会的ネットワークを拡大する効果の有無や条件を明らかにすることである.近年,災害による生活困難や経済的格差による社会的排除を克服するための,人びとのネットワークと共助の重要性が再認識されている.他方,社会の多様性が増大するなか,協力的な相互行為をもたらす「信頼」の働きも期待を集めてきた.信頼とネットワークはソーシャルキャピタルの一部とされ,相互の関連が論じられてきたが,「信頼がネットワーク形成をもたらす働き」については,研究が進んでいない.そこで本研究では,社会調査データの収集と分析をおこない,「信頼がネットワークを拡大する効果」の有無や条件を明らかにする.
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研究実績の概要 |
2023年度は以下の作業をおこなった.①データ分析スキルの修得,②新入社員を対象とするウェブパネル調査の実施,③同調査データを用いた分析結果の学会報告. ①について.本研究ではネットワークデータやパネル調査データを用いた分析をおこなう.そのため, ICPSR国内利用協議会および東京大学社会科学研究所の統計分析セミナーにて,ネットワーク分析と統計的因果推論の考え方と技術を修得した. ②は,2022年度末から続く調査の継続実施である.本研究では「信頼」が「ネットワーク形成」に与える影響を分析するため,「先行する信頼」と「後続するネットワーク」についてのデータを取得する必要がある.しかし,通常の無作為抽出標本のパネル調査では,ネットワークの変動に関するデータを十分な件数集めることは難しい(新たな組織加入のない日常生活において,新たな知り合いを得る機会は多くない).そこで本研究に必要なデータを効果的に収集するため,大学新卒一括採用という雇用慣行に着目し,就職内定済みの大学4年生を対象として「新卒入社前後」のウェブパネル調査をおこなった.新卒社員は社内に多くの紐帯を持たないため,入社前の信頼を測定し,入社後のネットワーク人数の増加を測定すれば有効なデータを収集することができる. ③上記の4波にわたるウェブパネル調査データを用いて分析をおこない,学会報告をおこなった.分析の結果,(1)新入社員の入社前の信頼が高いほど,入社後のサポートネットワーク人数の増加の仕方が大きいという基本的結果が得られた.また,この信頼がネットワークサイズに与える影響の少なくとも一部は,他者との相互行為に前向きに臨む態度や,そうした相互行為において良好な経験を得られているといったポジティブな相互行為の実現が媒介となっていることが分かった.以上は,先行研究が問うてこなかった残された問いを埋める重要な成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は,コロナウイルスの5類移行に伴い,コロナ禍の経過を見極めながら,可能な方法で調査を再開することを試みた.本研究課題のテーマは「社会関係の形成」であり,2020年度の新型コロナ禍発生以降,人流の制限や対人接触機会の大きな変化があるなか,当初通りのスケジュールで効果的かつ,信頼性の高い社会調査をおこなうのは難しい状況にあった. そこで,2022年度末から2023年度初めにかけて,実行可能かつ有効な調査方法としてあらたなウェブパネル調査をおこなった.このデータについては分析の結果,一定の成果を得ることができ,すでに数件の学会報告をおこなったほか,論文執筆を進めているところである. しかしながら,当初の計画であったランダムサンプリングによる自治体住民に対する調査については今後さらに実施の可否および有効な実施について検討していく必要がある.そのため,研究の進捗としては「やや遅れている」に該当すると考えられるが,現在新たな研究方法(サーベイ実験等)も視野に入れつつ,研究期間の延長も排除せず有効な研究方策の検討を続けている.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により,調査当初の調査計画を基準とすると,かなりの後ろ倒しとなっている.しかしながら,上述した発展的なウェブパネル調査の経験と成果をもとにしつつ,研究期間の延長を視野に入れながら計画を前向きに進めていく. 具体的には,当初予定の自治体調査については,(1)調査時期の見なおし,(2)オンライン調査・サーベイ実験など代替的な研究手法への切り替えという両面から検討をおこなう.本研究では当初,2波のパネル調査を東京都内の自治体においてランダムサンプリングでおこなう予定だった.2023年度以降はコロナウイルスの5類移行などにより,以前のノーマルな社会状況に近づいていると考えることもできるため,東京都八王子市を候補地としてネットワークサイズやサポートの有無,「一般的信頼」と「特定化信頼」,「利他性」や「平等主義」などの社会的動機,「条件付き協力」などの戦略的態度,社会経済的地位(SES)などを中心とした郵送調査実施の可能性を模索する. ただし,2021年度から2023年度にかけて学内での予備的なパネル調査ならびに上記の新入社員を対象とするウェブパネル調査をおこなった経験から,安定的な社会関係のなかでの市民の日常生活を対象として短期間の調査をおこなっても,十分なネットワークサイズの変化が検出できない可能性が考えられる.すでにおこなった新入社員のウェブパネル調査は上述の通りであるが,その結果を受けつつ,今後は「オンラインサーベイ実験」による新たなデータ取得の可能性についても発展的に検討していく.オンラインでの実験・調査は,実施が比較的容易であり,適切な無作為化をおこなえば,因果効果の推論に向いているというメリットもある.上記の自治体調査とともに,オンライン調査・実験の有効な導入について検討する.
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