研究課題/領域番号 |
20K02074
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
鈴木 玲 法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (20318611)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 労働運動 / 労災職業病 / 公害問題 / 環境問題 / 気候変動 / 職業病 / 社会運動 |
研究開始時の研究の概要 |
労働組合は、主に組合員の賃金や労働条件の向上を労使交渉で獲得することを目的としている。労働者の命と健康を守ることも労働組合の重要な役割であるが、これまで労使関係研究では労働者が扱う有害物質により罹患する疾病問題(職業病)に労働組合がどのように対応してきたのかという課題について、あまり研究がなされてこなかった。本研究は、日本とアメリカの労働組合が職業病問題にどのように対応をしたのか、対応の方法に違いがあったのかなどを歴史的、比較的視点から分析する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、労働組合による職業病や公害への取り組みを、「労働組合の気候変動への対応」という広い文脈から検討した。産業活動における化石燃料の使用は、職場の労働者と近隣の住民の健康を害する恐れがある有害物質を発生させるだけでなく、気候変動に結びつく二酸化炭素も排出する。気候変動問題は、広義の環境汚染であり、有害物質排出の規制が生産コストを上げて労働者の雇用を脅かしたように、脱炭素化による化石燃料依存からの産業シフトは労働者の雇用にも影響をおよぼす。また、気候変動自体も労働者やその家族の健康に影響をおよぼす。 近年、この分野の研究(environmental labor studies)が急速に活発になったため、これらの研究をカバーする必要が出てきた。その過程で「公正な移行」(just transition)や「エコロジー的近代化論」(ecological modernization)など、労働と環境の接点を広い文脈から分析する有用な概念の理解も深めることができた。今後の課題は、これまで取り組んだ職業病・公害問題と気候変動問題の関連性をどのように分析枠組みに取り込んでいくかである。 成果としては、労働組合の気候変動への対応に関する文献のレビューを研究会で報告し、この分野の本の書評を執筆したことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は、上記の文献サーベイを行い、本研究の本来のテーマ(日米の労働運動の職業病問題への対応に関する研究)からより広義の労働問題と環境問題の接点(労働組合の気候変動や公正な移行への対応)の課題に取り組んだ。研究代表者の体調不良が続き、労働組合の職業病へあるいは気候変動への対応の調査は、文献リサーチに限られ、国内および海外調査を行うことができなかった。そのため、研究期間を1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、これまで文献リサーチをした労働組合の気候変動問題、公正な移行への対応についての論文をまとめる予定である。また、23年度末から開始したアスベストと職業病、公害問題について調査を進める。労働者や住民がアスベストにばく露したことで発症する肺の疾病(アスベスト肺、肺がん、中皮腫)について、労働組合や被害者団体がどのような活動・取り組みをしているのかを、社会運動論の視点から調査を進める予定である。体調の回復を前提に、国内での聞き取り調査およびアメリカの労働組合のアーカイブズ調査も行う予定である。 なお、日本のアスベスト問題の1980年代以降の社会運動について、7月に開催されるAsian Studies Conference Japan(ASCJ)で学会報告する予定である。
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