研究課題/領域番号 |
20K02076
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
柳沢 敏勝 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30139456)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 社会的連帯経済 / 社会的経済 / 連帯経済 / 協同組合 / 社会的協同組合 / 社会的企業 / 労働者協同組合 / ソーシャル・キャピタル / SDGs |
研究開始時の研究の概要 |
SDGsの担い手に関する文献的、実証的研究を進めることが本研究の中心課題である。この目的を達成するためにSDGsの主たる担い手と想定されている社会的連帯経済に関する世界の議論を摂取し検討することを第1の課題とし、社会的連帯経済の実際について実態調査することを第2の課題とする。国際社会での議論を見るかぎりSDGsをビジネスチャンスと受け止めるわが国のようなあり方は異様である。種々の会議体ではSDGsの主たる担い手が社会的連帯経済だとする議論が一般的であり、わが国の議論は相当程度のズレとなっている。このズレを埋める作業が本研究の課題ともなっている。
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研究実績の概要 |
2023年4月の国連総会で「持続的開発に向けた社会的連帯経済の促進」決議がなされた。国連はこの出来事を「社会的連帯経済にとっての歴史的瞬間」と銘打って世界にニュースを流した。この決議の前文には「SDGsの達成に向けて社会的連帯経済が貢献していること、とりわけ雇用、 ディーセント・ワーク、健康・介護・教育・技能訓練などの社会サービス、環境保護、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント等々の達成に貢献している」との認識が示されている。またその前年の2022年6月にはILO総会で「ディーセント・ワークと社会的連帯経済に関する決議」がなされ、加盟国等に社会的連帯経済促進のための措置をとることを求めた。2013年9月に編成された国連社会的連帯経済タスクフォース(UNTFSSE)の基本的立場を表明した文書(ポジション・ペーパー)での考え方が踏襲され、世界共通の課題であるSDGs実現には社会的連帯経済の実践が不可欠であることが両決議で示されている。 こうした国際社会での社会的連帯経済の実践や実態について、その一端を確認するために、2023年5月にダカール(セネガル)で開催されたGlobal Social Economy Forumに参加し、情報と資料の収集を図った。250以上の都市から参加した5千人を超える人々の議論を聴取することによって社会的連帯経済の今日的意義を確認することができたが、残念ながら、他方では日本社会における認知度の低さ、言い換えれば社会的連帯経済に対する無関心さについても再確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動が規制されたコロナ禍で対面方式での調査研究に大きな支障が生じたことがそのまま今日の国際的な論議の動向把握や調査研究の遅れに現れている。そのため本研究の2つ目の目的である社会的連帯経済の担い手に関する調査の実施に遅れが生じているが、GSEFダカール会議でのヒアリングにより国際動向の一部の確認ができた。また、UNTFSSEがポジション・ペーパーの第2版ともいえる報告書を2022年に出しており、2022年ILO総会に向けた一般討議のための資料「ディーセント・ワークと社会的連帯経済」(2022年)が公表されており、本研究にとっての文献研究を一定程度押し進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
国連内に設置され今日まで活動を続けてきている国連社会的連帯経済タスクフォース(UNTFSSE)での議論の摂取・分析を通じて、社会的連帯経済に関する世界の動向を把握することを主目的とする。この組織は当初、国連の20機関を正規のメンバーとし、国際的に活動する3つのNGOをオブザーバーにしていたが、今日では国連の18機関とOECD,世界銀行をメンバーとする一方、加入者が10億人を超え世というようご界最大のNGOともいえるICAにとどまらず、RIPESSやGSEF、SSE Internationalといった国際的な社会的連帯経済ネットワークや、EMES、CIRIECなどの調査研究ネットワークがオブザーバーとして参加しており、今日の社会的連帯経済に関する共通認識がここで形成されていると言えるからである。とくに日本では、SDGsと社会的連帯経済との関係についてほとんど意識されておらず、社会的連帯経済に無関心ですらあるのが現状である。それは政府に設けられたSDGs推進本部のアクション・プランをみれば明らかである。国連決議はじめ、国際的な会議のほとんどで両者の密接な関係について触れられるが、このアクション・プランには社会的連帯経済という用語がただの一つも出てこないからである。この問題の解決のためにUNTFSSEが2022年に公表した新たなポジション・ペーパーについて分析する必要があると考えている。
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