研究課題/領域番号 |
20K02077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小澤 亘 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30268148)
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研究分担者 |
岡本 尚子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30706586)
楠 敬太 大阪大学, キャンパスライフ健康支援・相談センター, 特任研究員(常勤) (70770296)
今枝 史雄 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (70824118)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | DAISY多言語教科書 / グローバル支援ネットワーク / アクション・リサーチ / 外国にルーツを持つ児童生徒 / 帰国児童生徒 / 日本語教育 / 母語教育 / ICT / ICT学習支援 / 移民児童 / 国際ネットワーク / アクションリサーチ / DAISY |
研究開始時の研究の概要 |
ユニバーサルデザインのデジタル図書規格であるマルチメディアDAISYの可能性に着目して、移民受入国・送出国双方の移民児童教育問題の乗り越えを目指していく。ICTを活用して、日本語教育と母語教育とを同時に進める教育資源・教育方法・教育環境の構築を追究する。母語が使えない外国人児童に対しては、「やさしい日本語」や図・写真の活用を追究する。デジタル教育ツールは、移民送出国の日系人児童にも共有化し、こうしたグローバルな学習支援ネットワークの確立を目指す。
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研究実績の概要 |
日系ブラジル人児童に対するICT学習支援の実践研究を昨年度に引継ぎ継続した。大阪市の公立小学校2校をフィールドとして、支援対象児童生徒の特長に則して、一つの学校では、(多言語)DAISY教科書や既存学習アプリを活用して支援実践を、また、もう一つの学校では、OMELET「つくるんです」と既存学習アプリを活用して支援実践を実施した。 9月と2月には、第2回目および第3回目の読み能力検査(視線追尾検査、STRAW-R、レーブン色彩マトリックス検査、DEM検査、ATLAN語彙検査、自尊心検査、支援に対する当事者意識アンケート)を実施し、支援効果のアセスメントを行った。児童生徒の特性によって、支援効果はさまざまである。語彙能力でみると、支援児童生徒3名中、2名にはその向上が見られ、うち1名は、学年相応のレベルに到達することができた。語彙能力の向上が見られない1名の児童生徒も、自尊心検査では向上が見られた。STRAW-R検査では、いずれも、読み書き能力の向上が見られたものの、3名中2名は、読み困難児童と同等程度のレベルを脱していない。他の1名(語彙能力で学年相当レベルに到達した生徒)は、読み書き能力は全般的に向上したが、依然として、カタカナの苦手さを克服できていない。 算数の問題を使った視線追尾検査からは、「分かち書き」が読みやすさに大きく影響していることが明らかになった。また、紙の印刷物で提示した場合とiPadでDAISY化した形で提示した場合の違いについては、その違いを詳細に分析しているところである。 サンパウロ大学においては、教育学部の日本語短期教育コースで、6名の学生に対して、多言語DAISY教材数編の活用が試みられた。多言語DAISY教材化された日本の小学校国語教科書が、ブラジルの大学における日本語入門教育においても有効であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンパウロ大学DAISYプロジェクトにおいて、コロナ禍やPCトラブル等のためにポルトガル語の肉声録音作業が大幅に遅れた。次年度には、サンパウロ大学において、プロジェクト体制を整え、多言語DAISY教材30単元分のポルトガル語肉声録音と単元ごとにキーワードをポルトガル語と日本語とで対照表としてまとめた「ことばの学び」の付加が完了する予定である。 このため、日本国内における多言語DAISY教科書の本格活用も遅れた。ただし、ブラジルにおける多言語DAISY教科書の活用においては、サンパウロ大学哲学・文学・人間科学部における日本語・日本文学講座において、多言語DAISY教科書を用いた日本語教育を本格的に実施する前に、教育学部の短期日本語コースで試行的に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
外国人児童が抱える学習上の困難性は多様であり、それら一つひとつの原因を分析し、それらの乗り越えを具体的なICT学習支援に結びつける実証研究が必要となる。3年間にわたって、実施してきたICT学習支援実践をもとに、これまでの学会発表などを基盤として、論稿をまとめていく予定である。 多言語DAISY教科書については、次年度での完成(ポルトガル語の肉声録音、「ことばの学習」付加)を目指す。こうした作業が終わり次第、rits-daisy.comにこれらのファイルをアップし、愛知県内の市町村教育委員会に働きかけを開始する。こうした本格運用により、多言語DAISY教科書の日系ブラジル人児童に対する活用に関して研究を進めていく予定である。 併せて、ブラジルにおいては、サンパウロ大学哲学・文学・人間科学部における日本語・日本文学講座において、多言語DAISY教科書を用いた日本語教育についても、本格的に実施する。これにより、多言語DAISY教科書が移民送り出し国側の日本語教育においても有用であることを授業アセスメントにより検証する。 加えて、サンパウロ大学DAISYプロジェクトとの連携に基づき、スペイン語版の多言語DAISY教科書制作も進め、ポルトガル語以外の言語についても、多言語DAISY教科書制作の実現可能性をアセスメントしていく。
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