研究課題/領域番号 |
20K02092
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
堀畑 まなみ 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (40348488)
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研究分担者 |
藤川 賢 明治学院大学, 社会学部, 教授 (80308072)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 産廃特措法 / 香川県豊島 / 青森・岩手県境不法投棄 / 産業廃棄物不法投棄 / 産業廃棄物問題 / 労災・職業病 / 岐阜市椿洞産廃不法投棄事件 / 四日市市大矢知産廃不法投棄事件 / 産業廃棄物 / 不法投棄 / 環境社会学 / 産業廃棄物特別措置法 / 特別措置法 / 地域 / 検証 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、産業廃棄物特別措置法に基づいて一定の対応がなされた後の廃棄物問題、とくに残された汚染の存在について、被害論、地域論などの社会学的知見から事例研究を行うものである。かつて大きな社会問題となった産業廃棄物問題は、循環型社会形成に向けた各種リサイクル法などによる減量化と、既存の汚染に対処する産廃特措法によって沈静化し、報道も減少した。しかし、2010年代に入り、放射性物質を含んだ廃棄物、低認知リスク・確率論的リスクをともなう化学物質、国外輸出を含むリサイクル名目での広域移動などの課題が浮かび上がってきたことから、産廃特措法で対応の事案でも、検証の必要があると考えられるためである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、産廃特措法で対応した事例において、地元の地域住民にとって納得がいくものであったのか、何を意味したのかを明らかにし、環境社会学的に検証することである。 2023年度は特措法で対応した香川県豊島不法投棄問題の調査と青森・岩手県境不法投棄問題の調査を実施した。 香川県豊島は廃棄物の搬出が2017年3月(2016年度末)に廃棄物の最終搬出が終わり、2023年3月(2022年度末)に整地工事が終了した。2023年7月には、この問題は瀬戸内海の問題であるとして取り組んできた環瀬戸内海会議が主催したシンポジウムがあり、出席し、これに合わせて関係者へヒアリングを実施した。豊島では不法投棄現場を裁判を経て豊島住民会議が入手しており、整地が終わった土地を自然に返すことが決まっていることがわかった。これについて、福武財団に売却するべき、という意見が出ていることを確認した。瀬戸内国際芸術祭を機に、廃棄物問題を不可視化させたい住民がでてきてはいたものの、廃棄物問題を豊島全体で対応することには賛成であったが、廃棄物問題に一段落がつき、この問題に熱心であった世代から徐々に代替わりしてきたため、住民の意見が多様化してきていることがわかった。 青森・岩手県境不法投棄問題は、2022年度から関係者にご教授をいただいている。本年度は、関係者からいただいた資料の読み込みと現地視察を実施した。周辺住民がいない場所での不法投棄であり、こちらも特措法での対応が終わって一段落ついたため、地元として、この問題に関心を持ち続けることがとても困難な事例であることが理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
香川県豊島問題は長期にわたってフィールドワークをしている場所であること、青森・岩手県境不法投棄問題は豊島問題を通じて関係者につながることができている事例であるため、現場の状況の確認や、資料の入手など、予定通りの進捗状況である。また、特措法の期間が終了したことで、報告書などの資料がでてきていることから、文献調査も進めることができた。 やや遅れているとしたのは、本研究の1つの柱であった宮城県村田町竹の内産業廃棄物不法投棄問題の住民側代表がお亡くなりになり、昨年度から近しい関係者を探しているものの、いまだに見つけることができず調査が中断しているためである。村田町の事例は、特措法からの支援は少なく、豊島や青森・岩手と違い、廃棄物の撤去をすることが選択できず現地封じ込めで対応している。住民側が行政の対応についてどのように考えていたのか、まだ当時の資料を入手できていない。2022年度に住民に話を聞くことはできているが、高齢であるため長い時間聞くことはできなかった。封じ込めについて非常に残念に思っていることは理解できているが、現在立ち入り禁止となっている不法投棄現場のその後を、関係していた住民はどう考えているのかなど、まだ調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最後の年であるので、産廃特措法で対応したケースについて新聞資料や文献などで全体的に調査を行う予定である。調査対象としていた事例については引き続き、調査を行っていく。 香川県豊島産業廃棄物不法投棄問題については、豊島住民会議関係者へのヒアリングを実施し、自然に返すことについての住民側の思いを、また、この問題の継承についてどのように考えているのかを明らかにしていく。 青森・岩手県境不法投棄問題については、まだ実施していない行政関係者へのヒアリングを行う。行政には、以下の内容についてヒアリングを行う。特措法での対応についてどのように進めていったのか、両県の連携はどのように行ったのか、周辺に住民がいない場所での不法投棄をさせないために何を行っているのかなどである。また、不法投棄が行われた土地の利用についても伺う予定である。 村田町竹の内産廃不法投棄事件については、ウェブ上にある住民代表者が残した資料を分析するとともに、引き続き住民側の関係者を探していく。問題発生当時は、産廃処分場ネットワークが活発に活動をしていたので、そちら側の関係者からもアプローチする予定である。9月までに関係者が見つからない場合は、行政へのヒアリングを行い、問題の整理を行い、この問題の経緯の理解を深める。立ち入り禁止となっている現地について、汚水の処理はいつまでどの予算で行うのか、住民に返還できるかどうかなど、これからの予定について明らかにしていく。
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