研究課題/領域番号 |
20K02116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
小宮 友根 東北学院大学, 地域総合学部, 准教授 (40714001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 会話分析 / エスノメソドロジー / 裁判員裁判 / 再現実践 / reenactment / 評議 / 裁判員評議 / 裁判員制度 |
研究開始時の研究の概要 |
今この場で起こったのではない出来事を、今この場の会話の中で「再現」する現象は、これまで日常会話や教育場面などの会話分析研究の中で記述されてきた。過去の体験を語ったり、相手の振る舞いを真似してみせたりするために、人は発話や視線、ジェスチャーを用いて時間、空間、行為者、モノなどの構造を聞き手に示そうとする。この実践は、「事件当時何があったのか」をあきらかにしようとする裁判員評議においては独特の重要性を持つ。本研究はこの実践の構造の解明によって、裁判員が評議の場で何をすべきか具体的に考察する手掛かりを与え、制度の適切な評価・運営を議論するための基礎的知見を提供しようとするものである。
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研究実績の概要 |
最終年度は研究成果を「実践の論理を描く」「仮想身体と再現身体」「知覚経験の再現実践」の合計3本の論文にまとめることができた。「実践の論理を描く」においては、主として晩期ヴィトゲンシュタインの思考とエスノメソドロジー・会話分析研究、とりわけ相互行為の中の知識、身体、こころの研究との接点を検討し、本研究の課題である身体的な再現実践の記述の理論的/方法的基盤について明確にした。「仮想身体と再現身体」においては、これまでモデル身体と呼ばれてきた現象の中に、新たに「仮想身体」「再現身体」と呼びうる現象があることを示し、そうしたモデル身体を用いることが、評議において被告人や被害者の行為やその意図を参加者が推測、理解しようとする上で重要な役割を果たしていることを示した。「知覚経験の再現実践」では、再現身体が被告人や被害者が「見ていたであろう/見ていたはずの」ものを推測・理解するためにどう用いられているかを検討し、知覚を公的に「再現」可能なものとして扱う実践の分析をおこなった。 以上の成果は、再現実践の構造と、裁判員裁判の評議においてその実践が果たす機能をあきらかにするという本研究課題の目的を一定程度達成するものである。とりわけ、身体や知覚といった「個人的」とみなされがちな対象が、他者からも理解可能な公的な構造を持ち、その構造のもとで実際に他者の行為や経験を理解することがおこなわれており、そのことが裁判員裁判のような社会制度の重要な要素となっていることを示すことができた点は、人間のコミュニケーションの構造とその社会的・制度的機能をあきらかにするという大きな課題に貢献するものであると考える。 また研究期間全体を通じては、本研究課題を基課題として国際共同研究強化(A)の助成を受けることができ、本研究課題の成果をより発展させるための足掛かりも得ることができた。
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