研究課題/領域番号 |
20K02140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 移民 / 社会運動 / ジェンダー / フランス / 非正規移民 / 女性 / 非正規滞在移民 / 非正規滞在 / 国際移動 / ポストコロニアル / マイノリティ / 貧困 |
研究開始時の研究の概要 |
フランスの非正規滞在の移民女性の社会運動を、正規化要求運動、労働組合運動、住宅への権利運動など、多面的・実証的に調査をすることで、非正規滞在移民の存在を切り口として近代国民国家の市民権やメンバーシップのあり方を、ジェンダーの観点から考察する。男性の非正規滞在移民がフランスで就労していることを正規化の根拠とすることに対し、女性は労働はもちろんだが、学校や地域社会などより広い生活世界に根ざした主張を展開しており、既存の制度への統合を要求する男性とは異なって、国民国家を社会のリアリティから相対化し、新しい市民権のあり方を検討するものである。
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研究実績の概要 |
フランスにおける非正規移民女性の正規化運動について、ポストコロニアルあるいは脱植民地主義を掲げるフェミニズムの観点から文献および、インタビューに基づいた研究を行った。非正規移民は、そもそも政治的な存在を否定されているがゆえに、公的な場で声をあげても、その声はなきものにされる。それにもかかわらず、フランスにおいては2000年代以降、現在に至るまで非正規移民の正規化措置が、運動の結果としてたびたび行われている。 非正規移民の女性の正規化運動を支える論理になっているのは、アメリカ合衆国で発達した「ブラック・フェミニズム」であり、アフリカにルーツのあるフランス人研究者がアメリカで研究活動をすることで、アンジェラ・デイヴィスやベル・フックスの理論が紹介されるようになった。 しかしフランスの移民研究においては、問題を分析するにあたっての説明変数であるジェンダーや人種、階級を「インターセクショナリティ」というブラック・フェミニズムの理論的支柱に基づいて論じることへの批判も強い。G.ノワリエルら移民研究における代表的論者は、とくに人種による差別がフランスにおいて説明力を否定している。 研究における現状は、非正規移民当事者や支援運動の現実を一定程度現わしており、移民の正規化運動は、2008年以降もっぱら男性の非正規移民中心の労働運動が牽引していた。非正規移民女性たちは、家事や介護労働など個人を対象とした感情労働に従事しているため、労働運動に参加することは物理的にも、心理的にも困難であり、非正規移民がストライキなどの直接行動を行うさいも、寄付集めをはじめとする後方支援を行っていた。女性たちの運動参加の論理は、「生きるためには他に選択肢がない」という生のあり方そのものに根差しており、フランスの現実に即したブラック・フェミニズムの論理が運動の現場に存在することが明らかになった。
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