研究課題/領域番号 |
20K02147
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
|
研究機関 | 群馬県立女子大学 (2022-2023) 北海道教育大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
尹 珍喜 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (60732253)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 脱北者 / 韓国社会への適応 / アイデンティティ・ポリティクス / 多文化共生 / 適応支援 / 社会的構成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、韓国社会で急増する脱北者について、韓国社会への適応支援と彼ら自身の対処戦略に注目し、その社会的構成を重層的に解明することが目的である。具体的には、韓国政府の脱北者支援政策と脱北者自身が有するニーズとの乖離の実態を明らかにし、彼らのアイデンティティ・ポリティクスを通じた所属コミュニティからの支援獲得の現実を浮き彫りにする。これらを通じて、国家、コミュニティ、そして個人レベルで、脱北者が韓国社会においていかなる存在と意味づけられているのか、いわば「脱北者の社会的構成」(Song 2013)を重層的に解明することが可能になる。
|
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、韓国社会で急増する「脱北者」について、韓国政府の支援政策と当事者の適応戦略に注目し、かれらのアイデンティティ・ポリティクスを解明することである。 本年度は、文献整理とともに、韓国在住の脱北者への聞き取り調査データを整理・分析し、必要に応じて追加調査を実施した。調査対象者は性別、年齢、入国時期など多様性を考慮して選別し、インタビューではハナ院退所後の社会適応状況、政府の支援内容、所属コミュニティなどについて尋ねた。 結果として、脱北者の出身地や年齢、社会的背景、脱北動機が多様化している中、韓国政府の支援政策も民族的同質性を重視する同化政策から、文化的多様性を受け入れる多文化主義的視点を取り入れる傾向が見られた。一方、脱北者自身は韓国社会への適応という壁に対処するため、自らのアイデンティティを積極的に操作する姿が見られた。具体的には、「韓国人」としての自己提示を通じて韓国社会に溶け込む努力をしたり、「北朝鮮出身」という背景を受け入れ自己肯定感を保とうとしたりしていた。また、「韓国人」や「北朝鮮人」にこだわらず、「脱北者」として多文化的アイデンティティを自己提示する姿も見受けられた。従って、脱北者への支援政策においては、国家単位のアイデンティティ形成にこだわるよりも、彼らが持つ複合的アイデンティティを正しく理解する必要があることが確認された。 これらの分析内容は、日本韓国研究会第3回研究大会で報告しており、今後、群馬県立女子大学紀要第46号に投稿予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体として順調に進んでいるが、一部においてやや遅延が生じている理由として、以下のことが挙げられる。 まず、調査対象者の特殊性が要因である。本研究の対象者である脱北者へのアクセスおよび聞き取り調査が非常に難しく、調査を行う際に空間的・時間的制約が生じていた。また、脱北者への支援団体への協力が制約されることで、データ収集に時間を要した。次に、データの整理・分析において、想定以上に多様な背景を持つ脱北者のデータを統合する作業が複雑であり、分析作業が遅延した。最後に、仕事上の負荷が増え、授業準備や業務に多くの時間を費やす必要があり、通常の研究時間を確保することが難しい状況となった。 これらの遅延要因に対処し、研究計画を見直し、今後の進行をスムーズにするための対策を講じている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は、以下の通りである。 第一に、昨年に引き続き、収集したデータの分析および成果発表、論文執筆に注力する。対象者の語り内容が多岐にわたるため、様々な視点からの分析を行い、成果の公表に邁進する。分析の精度を高めるために、複数の研究会での発表を予定している。 第二に、多方面からのフィールド調査を計画している。脱北者への聞き取りにとどまらず、宗教団体、NPO、ボランティア団体が運営するコミュニティなど脱北者を支援する団体との連携を強化し、支援者と脱北者双方からの聞き取りを重ね合わせる「羅生門的手法」による調査を実施する予定である。 第三に、中国残留日本人など、同じルーツを持ちながら異文化を保持する対象と脱北者を比較分析することで、ディアスポラ現象の特徴を浮き彫りにすることを計画している。これにより、脱北者のアイデンティティ形成と適応戦略について、より深い理解を得ることを目指す。
|