研究課題/領域番号 |
20K02188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
矢島 卓郎 目白大学, 人間学部, 客員研究員 (60438885)
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研究分担者 |
渡邉 流理也 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40750120)
雪吹 誠 目白大学, 人間学部, 准教授 (70438886)
荏原 順子 目白大学, 人間学部, 客員研究員 (80342054)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 重症心身障害児者 / 医療型障害児入所施設 / 療育 / 音楽活動 / 体感音響装置 / 重度認知症高齢者 / 童謡・唱歌 / 身体イメージ / SD法 / 看護師 / 介護福祉士 / 濃厚な医療的ケア / 個別式体感音響装置 / 認知症高齢者 / 集団用体感音響装置 / 日中活動 / 生理心理的指標 |
研究開始時の研究の概要 |
重症児施設の少ないスタッフで、最大8名に振動刺激を呈示できる集団式体感音響装置を開発した。 そこで、この装置による取り組みが脳に重篤な器質障害を有する重症児者や重度認知症者の生活の質を高める日中活動に有効ではないかと考えた。 しかし、重症児者と重度認知症者では障害の時期が異なっており、呈示する音楽と振動への反応も異なることが予想された。 本研究では、健常学生、重症児者、重度認知症者を対象に、集団用体感音響装置で童謡などの音楽や異なる周波数による振動刺激を呈示し、生理指標(心拍、皮膚温、鼓膜温など)の反応の変化を検討して有効な呈示刺激を同定することで、重篤な障害者の生活の質を高める実践につなげる。
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研究実績の概要 |
【経過】本年度もコロナ禍のため、研究協力施設内の実践的研究は実施できなかったが、実施できた3研究のうち以下に2研究を報告する。 Ⅰ.医療型障害児入所施設の音楽に関わる療育調査の自由記述の分析 【目的】2021度に実施した療育調査の質問うち、①重症児施設の現状、②コロナ禍における療育に関する自由記述回答を検討する。【方法】回収された49通のうち①②の自由記述に対してKH-Coderによりテキストマイニング分析を実施。【結果及び考察】①施設の状況に関わる99語、コロナ禍の療育に関わる100語のうち、頻度の高い単語は「活動」「音楽」「利用者」「スタッフ」「コロナ」「療育」であった。②共起ネットワークと対応分析から、スタッフが少ないなか、コロナ禍で対応に苦慮しながらも音楽を含む療育活動を行っていること、一方、個別活動になって利用者を丁寧に観られたことで新たな理解につながったことが示唆された。 Ⅱ.寝たきりとなった重度認知症高齢者への音楽活用 【目的】施設では寝たきりの重度認知症高齢者に音楽がどのように活用されているか、その実情を明らかにする。【方法】都内の特別養護老人ホーム274施設を対象に郵送法で実施。目白大学人文社会科学系研究倫理審査委員会で承認。【結果及び考察】①特別養護老人ホーム14施設が回答。②施設ではコロナ禍により業務および日常のケアが大きく影響を受け、介護に支障をきたしていた。②コロナ感染予防により施設内での集団活動は制限や中止になったため、重度認知症高齢者への音楽活動は主に個別対応で行っていた。楽曲名や使用楽器は多様であったが、70%以上の施設では楽曲に童謡、歌謡曲、わらべ歌の順で活用していた。③音楽を活用することで少しずつ笑顔が見られるようになった等、その有効性が認められた。④音楽療法士の活用を望む施設が多いものの、介護報酬の問題で不可能になっており、今後の課題といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
科研費による本研究は大きく分けると3つの研究で構成されている。(1)①全国の医療型障害児入所施設で生活する超重症児者を含むり重篤な重症児者に対する音楽を用いた療育活動の実態調査と②研究協力施設において小集団式体感音響装置を活用して音楽で駆動された振動により、重症児者の緊張の緩和と生活の質を高める実践的検討でその効果を心拍、皮膚温などで検証し、その結果から新たな療育法を提言すること、(2)③健常学生の童謡・唱歌・歌謡の認知調査を行い、④そのなかから選曲された童謡などをヘッドホーンで呈示し、各曲に対して感情値測定尺度で心地よい曲を選定する。⑤選定された曲を小集団式体感音響装置で音楽と振動を呈示し、心拍などの生理指標をもとにリラックス効果などを検証する。(3)⑥寝たきりの重度認知症高齢者が生活する東京都内の特別養護老人ホームで音楽がどのように活用されているか、アンケート調査を実施して、その実情を明らかにする。⑦寝たきりの重度認知症高齢者に小集団式体感音響装置から④で学生が心地よいと選定した童謡などを音と振動により呈示して、皮膚温など非侵襲的指標、バイタルサインなどでその効果を検討する。 これらの研究テーマのうち、①、③、⑥は実施され、現在公表に向けて準備をしている。③では学生にアンケート調査を実施し、童謡・唱歌・歌謡の30曲から認知の高い曲を選定でき、⑤の研究につなげることができた。一方、直接、実践的研究は、3年前からのコロナ禍が始まって以降、医療型障害児入所施設内で利用者と接触して行う実践的研究は、病棟への入室が禁止になったため実施することが不可能であった。このため、研究は進展できていないが、ようやくコロナ感染拡大も下火になりつつあり、また、国の対応も変化したことから、2023年度には実践的研究も実施できるものと期待して、施設からの許可が下りることを待っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究は、新型コロナ感染が下火になりつつあること、国のコロナ対応方針が緩和されたことをふまえて、研究協力施設である医療型障害児入所施設で、マスク着用などで実践的研究も実施できるものと考えている。そのため、現在は病棟の入室が許可され次第、いつでも実施できるように準備をしている。 今年度は、昨年度実施できなかった、上記の②、④、⑤を実施する予定である。②医療型障害児入所施設における重症心身障害者4名に対する小集団式体感音響装置による音楽と振動呈示の実践的取り組みを週1回定期的に4ヵ月間継続して実施し、その効果を心拍、サーモグラフィ、バイタルサインなどで検討する。④大学生を対象に幼児期から聞いてきた、歌ってきた童謡・唱歌をアンケート調査の実施で選曲された童謡・唱歌を感情度尺度により評価して呈示曲を決定する。⑤④で決定した曲を最大4名の大学生に対して体感音響装置で腰部に振動を呈示し、心拍、サーモグラフィ、唾液アミラーゼなどの指標の反応から検討する。なお、音楽呈示の手順として、音楽呈示前に協力者は簡単な計算などを行ない、軽度な心理的なストレスを負荷し、その後に振動を伴う音楽を呈示する予定である。 また、これまで研究した①、⑥については、データを整理して投稿も含めて公表するように務める予定である。更には、研究を嫉視する予定である③~⑤の研究についても、データ整理がつき次第、学会などで発表や投稿により公表していきたいと考えている。
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