研究課題/領域番号 |
20K02242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
巻 康弘 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (80614651)
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研究分担者 |
片山 寛信 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教 (10816797)
志渡 晃一 日本医療大学, 保健医療学部, 教授 (20206098)
大友 芳恵 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (20347777)
福間 麻紀 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (70581867)
近藤 尚也 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (80733576)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | OSCE / 社会福祉実習教育 / 技術評価 / 新カリキュラム / ソーシャルワーク実習 / 社会福祉士 / 相談援助実習 / 実践力 / 社会福祉士養成 / 専門職養成 / 技能評価 |
研究開始時の研究の概要 |
多様化・複雑化する福祉ニーズを背景に、社会福祉士養成ではより高度な実践能力養成が志向され実習の重要性が指摘されている。本研究では、著者らが開発した社会福祉分野における客観的臨床能力試験(OSCE)モデルを相談援助実習で実施し、もたらす効果の検証を通じOSCEモデルを改善し多くの社会福祉士養成教育で利用できる社会福祉士OSCE普及モデルの開発と実証を行うことを目的とする。 すでに、学生調査からは効果が示唆されており、重層的検証を基に、多くの現場で有効な社会福祉士OSCE普及モデルを開発する。普及モデルにより、高度な実践能力を有する社会福祉士が涵養され、国民の福利の向上に寄与することが期待される。
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研究実績の概要 |
A.社会福祉士OSCEシステムの精緻化と実施及び学生・関係者調査:社会福祉士OSCEを新カリキュラム・ソーシャルワーク実習システムに位置づけることを念頭に置き、①新たに設定した事例枠組みによる事例(試験問題)開発、②オンラインでも対面でも必要となる面接技術への評価項目の改訂、③事前学習におけるモデリング教材とすることを意図した模擬的試験映像及び評価者評価解説映像を作成し、社会福祉士OSCEシステムの精緻化を試みた。以上を加えた社会福祉士OSCEをA大学の2年生に試行の上で学生及び評価運営者調査を行った。その結果は、評価者調査では、面接技術が確認しやすくなったとの意見が出された。学生調査では、すべての学生が目的を理解し肯定的評価していることが明らかになった。 B.社会福祉士OSCE模擬動画の作成とアドバンスOSCEの検討:アドバンスOSCEを視野に入れ実習終了学生2名を対象に社会福祉士OSCEを実施した映像を用いるとともにトランスクリプトを作成した。 C.臨床参加型実習体験調査:相談援助実習(2014~2022年度)とソーシャルワーク実習(2022~2023年度)での臨床参加型実習経験とOSCEに関する学生調査結果の分析を行った。結果として、相談援助実習98.7%、2カ所実習となったソーシャルワーク実習では全員が臨床参加型実習経験を得ており、直接関わる「実施あり」を相談援助実習66.5%、ソーシャルワーク実習90.6%が経験していた。さらに「自らの実習成果との関係で効果」的が97.6%、「実施に役に立ったOSCE経験」や「OSCEとは違うやってみての経験」などOSCEを連動させた記述もあった。実習体験を通じて、思考の喚起がうかがえる記述も多く臨床参加型実習経験は狭義の技能獲得だけではない経験となり、実習前のOSCE経験を事前経験とし臨床参加型実習経験を捉えていることがうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の学生調査及び分析からは、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより実習教育環境に制約が生じた期間も含め、社会福祉士OSCEを含む実習システムを肯定的に捉えていることが明らかとなるなど効果が示唆された。 新カリキュラムに移行した社会福祉士養成課程の実習での実習教育目標、学習展開、異なる機能の2機関での実習、実習配当学年の学習進度と社会福祉士OSCEの位置づけを新たに検討する必要性を確認した。 当該年度当初の計画は、十分に達成されたものの研究全体としては、研究期間当初の制約と新カリキュラム移行に伴う新たな検討課題が生じた。このため当初の研究計画立案時に想定していた達成度と比較し「やや遅れている」とした。 一方で、この間の制約が生じた実習教育環境において、多様なバリエーションで社会福祉士OSCEを実施したこと、新カリキュラムにおいて新たな実習教育目標において技能の獲得がより明確に示されたこと。実習前に技能評価を受け実習に臨んだ学生らから肯定的評価を得たことは、細部の精緻化の検討はあるものの実習教育が実習施設の中でのみ行われるものではなく、事前・事後教育とともにあり、見えづらい技能の獲得状況を社会福祉士OSCEの実施と伝達により実習指導者に伝えていくシステムが有用であることが示唆されたことからも、当初計画に位置づけていた実習指導者へのインタビュー調査を行う必要性がある。実習指導者には、調査協力依頼を行い、対面でのインタビュー調査受入のご内諾をいただくことができた。次年度には、豊富な経験を持つ熟練の実習指導者の認識を明らかにすることができる見込みとなった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症パンデミックや新カリキュラム導入など社会福祉士OSCEをめぐる環境は研究計画立案時と異なるものとなったため、ここまでの研究の進捗を踏まえて整理する。本研究の前提としていた実習教育目標と臨床参加型実習経験との関係で社会福祉士OSCEの内容妥当性を開発し検証するという観点は変らないが、実習配当年次によっては学習進度との関係が検討課題に加わった。これは、ソーシャルワーク実習が240時間の実習時間を複数の施設で行いうち1カ所180時間とされたことによるものである。実習時間の長い実習で多くの臨床参加型実習経験の実習プログラム化がなされることが想定され、実習配当年次により社会福祉士OSCEの位置づけは、すべて実習前、180時間実習前とするなどバリエーションが考えられることとなった。実習教育が社会福祉士養成校におげる事前・実習中・事後教育と実習期間中の実習指導者による実習スーパービジョンを効果的に連動させるためには、社会福祉士養成校の実習教育方針と計画、個別学生の到達状態の共有方法の理解などが必要となる等の実習教育の指導上の基本構造を改めて確認し、社会福祉士OSCEの位置づけ方法の整理が必要である。 本研究では、ソーシャルワーク実習を2カ所で行う教育システムにおいて、すべての実習前に社会福祉士OSCEを位置づけたシステムをひとつの実習教育モデルとし、この間の実施結果のまとめを行う。加えて、昨年度計画した熟練の実習指導者へのインタビュー調査とすべての実習指導者を対象とした社会福祉士OSCEの活用実態アンケート調査により社会福祉士OSCEを実習教育システムに位置づけていることの影響を確認し、効果的な実習教育システム構築を志向する社会福祉士OSCEモデルの開発に向けた検討課題を整理する。 上記を踏まえ、研究期間内でのまとめを行う。
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