• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

社会的包摂の実現に向けた意思決定支援の制度と実践に関する日本とイギリスの比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02251
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分08020:社会福祉学関連
研究機関関東学院大学

研究代表者

麦倉 泰子  関東学院大学, 社会学部, 教授 (60386464)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード遷延性意識障害 / インタビュー / 映像分析 / 意思決定支援 / 権利擁護 / 相互行為 / 後見的支援 / 親亡き後の不安 / 知的障害 / 精神障害 / 横浜市 / ダイレクト・ペイメント / 社会的包摂 / 障害者
研究開始時の研究の概要

イギリスでは、個別化という政策理念が制度として実現されていく過程のなかで、現金の管理や人の雇用、サービスの契約、権利侵害のリスクに対する備えといったような個人が行う意思決定に関わるさまざまな現実的な課題も多く生じている。
これらの課題を克服するための工夫は、制度設計の骨格となるダイレクト・ペイメントの管理方法のガイドラインの制定などによって行われている。障害の種類を問わず、あらゆる個人の意思決定を尊重し、実現するための支援が具体的な制度として作られている。この制度について、日本の制度のなかでどのように実現可能であるのか検討する。

研究実績の概要

今年度は重度の意識障害の状態にある人(遷延性意識障害)を対象として、コミュニケーション場面の映像を記録し、分析を行った。今年度の本研究においては、非言語的なコミュニケーションをとらえるために、遷延性意識障害の状態のある人と家族や支援者とのコミュニケーション場面の映像を記録して分析を行った。
遷延性意識障害の家族会が発行した会報には、家族のニーズとしてマッサージやレクリエーション等を通した社会的活動への参加が挙げられている。求められているのは、単に関節の拘縮等を防ぎ、身体機能の維持・改善を図るための処置としてのマッサージではなく、マッサージという処置をとおして行われる相互行為への参加であると推測される。まばたき、息を吐く、視線といった一つ一つの動きは微細なものであるし、表現の手段は限られている。だからこそ、本人が発する微細な表現を「シグナル」として受け止め、双方向のコミュニケーションとしていくために、家族との信頼関係が構築されたスタッフによる実施が欠かせない。マッサージを受けることとは、自らが他者とつながり、社会を構成する一員として存在するために必要不可欠の相互行為となっていると推察できる。相手に対する深い理解と注意をもってコミュニケーションが行われるときに、マッサージは遷延性意識障害の状態のある人にとってはかけがえのない意思を伝達する機会となる。
今回の調査では、マッサージ、レクリエーション活動等での相互行為を意思伝達の場として位置付け、そこで行われているコミュニケーションが意思決定支援の一部として記述することを目的として、動画を撮影し、分析を行った。
同時に、家族、支援者へのインタビュー調査も実施した。事故によって後遺障害を負った人が身体的・心理的・社会的な回復をしていく過程と、求められる支援についての聞き取りを行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究は、重度の意識障害にある状態の人の意思決定支援と権利擁護について考察することを目標としている。新型コロナウイルス感染症の影響により、2023年2月まで、実際の調査を実施することが困難であった。そのため研究の進捗も遅れているものの、2024年3月から調査を開始しており、現時点までに相当数の調査結果を得ることができた。
音声データについてはトランスクリプトを行い、逐語録を作成した。その上で、質的調査データの分析ソフトであるNvivoを用いてコーディングを行い、概念を析出している。
その上で、効果的な支援に関する概念モデルを作成している。動画データについては特定の場面のキャプチャーを行ったうえで、個人の特定が行われないよう画像の処理を行っている。
並行して、障害者の権利擁護に関する法制度について、意思能力法と成年後見制度の比較を中心に日本とイギリスの比較検討を行っている。

今後の研究の推進方策

今後はミクロ・レベルでの調査結果の分析を、メゾ・レベルでの支援、法制度を含むコミュニティ・レベルでの支援に関連付けて検討していく。
まずメゾ・レベルでの支援としては、以下の点についての考察が必要になってくる。被害からの回復にあたっては、心理的支援や各種サービスの情報提供など、多くの支援が必要である。ピア=同じ悩みを理解することのできる当事者・家族と協力して行うことの重要性が指摘されている。一方で当事者・家族団体関係者が持続的に活動するための制度的・経済的な基盤は十分ではない。事故被害者という特性から、当事者・家族と緊密に連携しながら権利擁護・司法上の相談を行う専門的な人材との連携も求められるが、この連携についての調査はこれまで十分なされていない。
諸外国の事例を見ると、家族会を中心とした当事者団体に対して、公的な財政的な支援が行われていることが多い。情報提供・訪問・各種サービスのマネジメント・場合によってはグループホームの設置・経営が行われている国もある。当事者団体といっても、本人および家族のみで運営するのではなく、ソーシャルワーカーやカウンセラーなどを雇用し、家族は団体の運営方針を決定する場に参加する形である。本研究では、家族会のメンバーへのインタビュー調査からピアサポートの活動状況を明らかにし、持続可能な形で活動が行われていくためには必要な事柄について明らかにする。
次にコミュニティ・レベルでの支援として、社会福祉資源の利用可能性を探る。当事者と家族は、受傷直後における専門的な治療・看護を受けられる機会の確保等に加えて、リハビリ機会の充実、障害福祉サービスの利用、地域での自立的な生活の確立など多岐にわたる支援のニーズを有する。
本研究では被害者支援を行う組織に対しても聞き取り調査を行っている。ニーズの正確な反映と掘り起こしを進め、具体的な支援制度の提言につなげる。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 遷延性意識障害者とその家族は戦後をいかに生きたか―戦後福祉のナラティヴ2021

    • 著者名/発表者名
      麦倉 泰子
    • 雑誌名

      福祉社会学研究

      巻: 18 ページ: 57-82

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi