研究課題/領域番号 |
20K02308
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
福地 潮人 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (00412833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | スウェーデン / 労働統合型社会的企業 / 国家ー市民社会関係 / 声とサービス / 障害者雇用 / 障害者政策 / 障害者福祉 / 社会的企業 / 障害者団体 / 協働関係 / 障害者 / 社会保障 / 障害者年金 / 賃金補助金制度 / 2017年改革 / 半福祉・半就労 |
研究開始時の研究の概要 |
社会的企業を通した「半福祉・半就労」の支援策について日本とスウェーデンの事例を比較し検討する。スウェーデンにおいて社会的企業の支援に携わっているいくつかの組織・機関と、日本の大阪府箕面市における関係諸団体・機関に対するインタビュー調査を通して、労働統合型社会的企業にまつわるア)経営基盤強化、イ)認知度向上、ウ)障害者の労働条件改善という3つの課題をどのように解決しているか明らかにする。双方の調査結果を比較した上で、日本における社会的企業を通した障害者の「半福祉・半就労」の発展方法を示す。
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研究実績の概要 |
コロナ禍による制限のため、渡航調査を取りやめ、秋口からはZoomを用いたリモート・インタビューの実施に切り替えた。その結果、調査自体は大きく進展した。調査先はFamna、Fremia、Skoopiといった非営利代表組織、機能権スウェーデン、FUB、DHRといった全国的な障害者団体、参加局や公共職業安定所、一般遺産財団、サムハル社など国の関係機関、協同組合であるBASTA!や、M29、Sverige Stadtmissionenなどの社会的企業などであり、本計画が当初予定していた重要組織へのインタビューはほとんど実施することができた。 これらのインタビュー調査の結果、明らかになったのは次の4点である。 ①スウェーデンでは、現在でもなお、社会福祉分野において非営利組織の占めるシェアは3%程度に過ぎない。②そういった中で、労働統合型社会的企業は障害者者や薬物中毒患者、移民などの就労支援に欠かせない重要性を持ってはいるものの、いずれも厳しい経営環境に直面している。③前・左派政権は、各コミューンが非営利組織とのサービス契約を結びやすくするための登録制度の導入を謳った非営利福祉法を成立させた。④この法案には期待する市民社会関係者も多いが、一部に過度の楽観を戒める声も聞かれた。 以上のような成果があった一方で、同国の政治情勢が大きく変わり、研究対象である労働統合型社会的企業の環境へのその影響が未知数であることや、地方自治体の実情がまだ十分に解明できていない点が課題として残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度に関しても、夏季までコロナ禍による制限があったため、現地への渡航は見送らざるを得なかった。また、研究が遅れた理由はもう一つある。それはスウェーデンの政治環境の変化である。 2022年度のスウェーデンは9月の総選挙で左派政権が敗北し、右派政権が誕生するなど混迷の状況にあった。この新しい右派政権のもとで、本研究計画と密接な関わりのある市民社会政策もめまぐるしく変わった。とくに、左派政権が反対を押し切って制定した民主的条件規定(補助金支給の要件に組織内の民主主義を約束させる法案)は、成立後わずか3か月で廃止された。また、同じく前・左派政権は、各コミューンが労働統合型社会的企業を含む非営利組織とのサービス契約を優先的に結べるようにする非営利福祉法を成立させた。この法律は政権交代後の現在も、問題なく施行されている。いずれにせよ、このような同国の大きな政治状況の変化のなかで、本研究の対象である労働統合型社会的企業のおかれた状況の把握に困難を極めた。 秋口から開始したZoomによるリモート・インタビュー調査に関しては、いずれも順調に実施することができ、期待していた以上の大きな成果を得ることができた。しかし、地方自治体へのインタビューについて実現できたのは、ヨーテボリ市のみとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後に関しては、以下の3点に焦点を当てて研究を継続する方針である。 ①2022年非営利福祉法の制定が労働統合型社会的企業にもたらす影響については、さらなる追加調査を行う必要がある。また、併せて、廃止となった2022年民主的条件規定についても、新しい右派政権下で再調査が実施されることが決まっている。この法案が労働統合型社会的企業にもたらす影響についても、さらに調査を継続する予定である。 ②国家レベルにおける動向と同時に、地方自治体レベルでの労働統合型社会的企業の状況については、さらにインタビュー調査先を増やしていく必要がある。とくに同国の三大都市に数えられるストックホルム市とマルメ市については、既に調査を終えたヨーテボリ市との比較を行うことで、地方自治体レベルでの実情や都市間の相違などが明らかになるものと期待できる。 ③可能な限り、日本国内における「半福祉・半就労」施策についても把握する。とくに研究計画立案の時点であげていた大阪府箕面市については、追加調査を実施し、スウェーデンの事例と比較したい。
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