研究課題/領域番号 |
20K02396
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
吉田 香 同志社女子大学, 生活科学部, 特任教授 (10336787)
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研究分担者 |
魏 民 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70336783)
北村 真理 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 教授 (40369666)
寺本 勲 (木俣勲) 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (20153174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ミネラル / 過剰摂取 / サプリメント / 動物行動試験 / 老人性認知症 / 学習・記憶障害 / マウス / 使用実態調査 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、人々の健康への関心が高まり、中高年で種々のサプリメントを常用する人が増えている。サプリメント中には脳神経変性を引き起こすと報告されているCa、Zn、Fe、Cu、Mnなどのミネラルを多く含むものがある。このため、複数のサプリメントの長期間摂取により老人性認知症が起こる可能性がある。 本研究では、Caを中心にZn、Fe、Cu、Mnとの組み合わせ長期間過剰摂取が脳神経系に及ぼす影響に焦点を当て、多角的に検討する。また、サプリメントと食物を合わせて摂取することによって起こるミネラル過剰摂取の可能性を検証し、さらに、ヒトにおける過剰摂取の有無を簡易に調べるモニタリング方法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
サプリメント中にはミネラルを多く含むものがあり、食品のみから摂る場合には注意する必要がなかった過剰摂取が起こる可能性がある。これまでの研究で、我々は脳神経変性との関係が注目されているZn、Fe 、Cu、Mnを加齢マウスに長期間投与すると、長期記憶の指標となる受動回避試験(PA)、視覚認知記憶の指標となる新奇物体探索試験(ORT)で学習・記憶能が低下傾向を示すこと、さらに組合せ投与では、Znとの組合せ長期間投与により単独投与に比べてCuは学習・記憶能の低下を増強するが、MnとFeは軽減することを明らかにしている。 Caサプリメント摂取により高齢女性の認知症リスクが上昇する可能性があることが近年報告されている。種々の濃度のCa水溶液を加齢マウスに30週間投与し、行動試験により学習・記憶能を調べた。その結果、昨年度、2000、3000ppmでORTでの学習・記憶能に低下傾向が見られ、Ca過剰摂取により学習・記憶能の低下が起こることが示された。今年度はCaとZnの組合せ投与について検討するため、加齢マウスに300ppm Zn、2000ppm Caを30週間単独及び組み合わせ投与し、短期記憶の指標となるY字迷路試験、PA、ORTにより各群の学習・記憶能を対照群と比較した。その結果、PAとORTにおいてZn、Caそれぞれの単独投与群の学習・記憶能の低下よりZnとCaの組合せ投与群の記憶能の低下が増強されることが示された。 昨年度実施したサプリメント飲用の実態調査を今年度さらに性・年代別に詳しく解析した結果、中高年女性で食事に気を使って食事をしている人や現在サプリメントを飲用している人が多く、サプリメントを複数種類、毎日、3年以上継続飲用する割合も多いことが明らかになった。これらの結果より、中高年女性で食事とサプリメントを合わせた摂取によりミネラルの過剰摂取の可能性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度実施予定であったZnとCaの組合せ投与により学習・記憶能の低下が増強されるかどうかを調べる実験では、加齢マウスに30週間ZnとCaの組合せ投与をすると、新奇物体探索試験(ORT)と受動回避試験(PA)においてZn、Caそれぞれの単独投与群の学習・記憶能の低下より組合せ投与群で記憶能の低下が増強されることが示され、順調に進んでいる。昨年度実施したサプリメント飲用の実態調査の詳細な解析も順調に進んでいる。 ただし、昨年度実施した26週令雌性マウスに0、1000、2000、3000ppm Ca水溶液を30週間飲水投与試験で、Ca 2000、3000ppm投与群においてORTで学習・記憶能の低下傾向が見られたが、用量依存性はなかったため、DNAマイクロアレイ解析でCa摂取が脳海馬の遺伝子発現に及ぼす影響を調べる予定であったが行わなかった。予定を変更して、今年度実施したZnとCa組合せ投与試験の対照群、Zn単独投与群、Ca単独投与群、ZnとCaの組合せ投与群で比較を行うことした。すなわち、それぞれの群のマウス海馬よりRNAを抽出してマイクアレイ解析により遺伝子発現を比較し、Zn単独、Ca単独およびZnとCa組合せ投与により起こる学習・記憶能の低下のメカニズムの解明を合わせて行うことにした。このため、今年度実施予定であったCa単独投与のマイクロアレイ解析を行なっていない。 タンパク質の量的変動解析(プロテオーム解析)や蛍光免疫組織化学染色により脳神経変性疾患の有無を調べる予定であったが、これらの実験を行う予定であった研究協力者の手首骨折により遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
CaとZnはいずれも神経伝達を調節する因子として学習や記憶に重要な役割を持つと考えられている。しかし、シナプス後神経にCaとZnが過剰に流入すると神経毒性を示すため、Znによる学習・記憶能の低下がZnとCaの組合せ投与によって増強されるかどうかを調べることは重要である。今年度、加齢マウスにZn単独投与、Ca単独投与、ZnとCaの組合せ投与を30週間行った後、行動試験を行い、学習記憶能の低下が起こるかを調べた。その結果、長期記憶の指標となる受動回避試験(PA)と視覚認知記憶の指標となる新奇物体探索試験(ORT)においてZn、Caそれぞれの単独投与群の学習・記憶能の低下よりZnとCaの組合せ投与群の記憶能の低下が増強されることが示された。次年度は、長期間のZn単独摂取、Ca単独摂取、ZnとCa組合せ摂取がマウスの脳海馬の遺伝子発現に及ぼす影響をDNAマイクロアレイ解析で比較することにより、それぞれの脳機能低下が起こるメカニズムの解明を行う予定である。遺伝子発現の違いにより解明できない場合、脳の病理組織標本の蛍光免疫染色によりシナプス数や神経突起の比較を行い、Zn単独、Ca単独、ZnとCa組合せ投与により起こる学習・記憶能障害発生メカニズムの解明を行う。また、タンパク質の量的変動解析(プロテオーム解析)により、ミネラル投与による金属結合タンパク質の変化を調べる。さらに、脳の神経変性部位及び酸化ストレス部位の免疫組織化学的染色や脳内金属分布を金属反応試薬による染色により調べ、神経変性及び酸化ストレス部位と金属蓄積部位の関連を明らかにする。
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