研究課題/領域番号 |
20K02424
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴田 政子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30400609)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | ホロコースト / 歴史教育 / 人権教育 / 実践的教育方法 / ホロコースト教育 / 第二次世界大戦 / 「証言」の活用 / オーラル・ヒストリー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第二次世界大戦に関する歴史教育を共通の主題とし、申請者が過去10年余にわたり取り組んできた4つの科学研究費補助金研究を継承しており、それを発展させることを重要な目的としている。冷戦終結後、ホロコースト教育は地理的な拡大とともに、ホロコーストがもつ特殊性がゆえに―逆説的であるが―人権尊重や共生といった人類に普遍的テーマとしての汎用的活用が認められる。従来から指摘されている教員の知見不足、定番教材のルーティン使用・マンネリ化やそれからくる学習者の学習意欲減退を克服すべく、現在途上段階にある教育プログラムの開発を目指し、教育現場で求められる実践的教育方法を3か年にわたり探究する。
|
研究実績の概要 |
2023年度は研究期間延長を申請し承認されたため、国外調査以外の国内調査および文献調査に徹した研究を行った。具体的な国内調査は、主として国立国会図書館および本務校附属図書館二カ所で行った。新型コロナウィルス感染状況は一定の落ち着きを見せているが、本務校で担っている種々重責を鑑み、海外渡航は引き続き控えることとした。残余研究期間の制限から、国外調査のうち断念せざるを得ない機関については、ホームページ等を中心としたインターネット調査、及び機関職員とのメールによる聞き取り調査やオンライン・インタビューを行った。調査の内容は、ホロコースト生存者およびその家族の証言を、オーラル・ヒストリーとしていかに教育的に活用しているかという実態について、具体的事例をもとにした情報収集である。さらに、広島で開催された第13回アジア比較教育学会における論文発表「The Educational Use of Oral History: What can we learn from Holocaust education?」の機会を利用し、広島市平和記念資料館における「語り部」について、同館職員と語り部ご本人との面談調査を行うことにより、国内でのオーラル・ヒストリーの教育的活用例についても情報収集した。上記発表論文は、論題の通り日本をはじめとして直接ホロコーストに関連しない国々が、ドイツを中心とした関連諸国におけるホロコースト教育の実績から学べることについて議論することを趣旨としていたが、上記の広島での調査の結果、同地ではかなり先進的なオーラル・ヒストリーの教育活用が推進されていることが判明した。戦争・虐殺体験者の老齢化・死亡という不可避の現実に対し、国内において既に対応策が築かれている、または着手されていることは新たな発見であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年3月の新型コロナウィルス感染拡大以降、一切の海外渡航を控えていたため、当初計画していた国外調査はすべて未履行のままである。従って、前項で述べた通り一部調査対象機関についてはフィールド調査を断念し代替方法による調査に切り替えた。具体的には、アウシュヴィッツ平和和解機関(ポーランド)・ ヤド・ヴァシェム国立ホロコースト研究所(イスラエル)・アメリカ合衆国ホコースト研究所(米国)である。その他の調査対象機関については、次項で述べる通り2024年度に場所・機関を厳選し調査を遂行する予定である。 国内調査については、上述学会での論文発表は、広島という土地柄・参加者の歴史教育への関心の高さから多くの情報を収集することができた。上述論文は、論題の通り日本をはじめとして直接ホロコーストに関連しない国々が、ドイツを中心とした関連諸国におけるホロコースト教育の実績から学べることについて議論することを趣旨としていたが、上記の広島での調査の結果、同地ではかなり先進的なオーラル・ヒストリーの教育活用が推進されていることが判明した。戦争・虐殺体験者の老齢化・死亡という不可避の現実に対し、国内において既に対応策が築かれている、または着手されていることは新たな発見であった。 研究成果の発信としては、歴史博物館をテーマとした編著書への寄稿依頼に応え、招待論文を既に提出し、2024年度内の発行を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り研究期間延長後の2024年度は、2020年3月の新型コロナウィルス拡大以降一切控えていた海外渡航を再開する。また2024年度は、本務校においてサバティカルを取得しているため、この年度内に未履行の海外での調査を行う計画をたてている。ただし、当初3カ年で履行する予定の国外調査をこの年度内にすべて行うことは可能ではないため、ホロコースト加害国であるドイツのなかでも従来の研究で手薄であった旧東ドイツやオーストリア、さらにナチスドイツ占領下にあった東欧諸国での調査に厳選し行うこととする。具体的には、教育史研究図書館(ドイツ・旧東ベルリン)、ヴィーゼンタール・ホロコースト研究所(オーストリア・ウィーン)での文献調査、加えてブラスティラヴァ・ユダヤ・コミュニティ博物館(スロヴァキア・ブラスティラヴァ)でのホロコースト生存者との面談調査、ベオグラード大学(セルビア・ベオグラード)でのホロコースト生存者家族との面談および同大学研究員との共同研究を、本年度第一回国外調査として既に登録及びアポイントメントを完了している。また、今年度後半では、既に研究助成(附属宿泊所無償利用)を受けているライプニッツ教育メディア研究所に加え、同様に従来手つかずのままであった欧州外のホロコースト資料館・研究所を第二回国外調査対象としている。特に、ホロコーストとは直接関係がなかった南アフリカ共和国のホロコースト研究所は、広く人権教育をテーマとする機関であるため、本課題研究に最も適する調査対象のひとつであると考える。
|