研究課題/領域番号 |
20K02442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
澤山 利広 関西大学, 国際部, 教授 (90388885)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 国際協力 / サービスラーニング / 青年海外協力隊 / 教育協力 / 教員離職 / SDGs / SDGs / society5.0 / VUCA / ウィズコロナ / ユニバーサルデザイン / JOCV / キャリアデザイン / フィリピン / カンボジア |
研究開始時の研究の概要 |
SDGsが謳うような社会創造の一翼を担うことが期待されるJV教員を取り巻く環境は厳しく、彼ら彼女らの知見を活かしたグローバル人材の育成手法の確立も道半ばである。 JOCV(青年海外協力隊)の任期初期の成長プロセスとISL(国際協力サービスラーニング)のフォローアップのノウハウとを、フィリピン、カンボジア、ブータンでのISL活動とJV教員組織の活動において、PDCAを繰返しながら両研究の完成度を高めていく。 JOCV研究は、在外経験以外の属性を持つ教員のキャリアサポートを検討する端緒となり、ISL研究が提示するプログラムは、既存の教育では難しい能力・資質を育む手法として波及することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、青年海外協力隊(JOCV)に参加経験のある教員(OV教員)のためのキャリア形成サポートシステム(C-JAT)に関する資料作成(JOCV研究)、及び汎用可能な国際協力サービスラーニング(ISL)のコンテンツの探求(ISL研究)からなっている。 前者については、国際教育協力等の経験を持つ教育関係者をスピーカーとする計6回(通算13回)のウェビナー「OV教員リレートーク」を主宰した。また、教員離職の原因の探求を目的とする計5回の「国際協力経験教員研究会」では進行役を務め、「教員の退職・休職を記録する(第2回)」、「沖縄県と兵庫県等の教職員の病休率比較(第3回)」について発表を行った。 これらリレートーク及び研究会での考察を通じて、離職に至るトリガーを①労働環境や待遇への不満(給料、勤務時間など)、②職場の人間関係(上司、同僚)、③児童・生徒・保護者との人間関係、④教育現場の変化(IT化、新科目、文科省や教育委員会の方針)、⑤プライベート(失恋、結婚、出産、子育て、介護など)、⑥海外経験を経た意識の変化(日本と海外の教育環境の比較による気づき、他職種への興味・関心の高まりなど)に大別した。一方で、職場に理解者がひとりでもいることが離職に至らないのではないかと推察している。 後者については、コロナ禍でのオンラインを活用した短期ISLプログラムである、関西大学生と北海道・大空町、沖縄県・今帰仁村及び久米島の公設塾生とによるバディプログラムの成果を上述の研究会において「関西×北海道・沖縄が循環する産官学民連携による公設塾と大学との地域開発共修プログラム(第4回)」と題して発表した。また、同研究会において2022年末の実現可能性調査(F/S)を踏まえた「カンボジアでの汎用可能なサービスラーニング-カンボジアメコン大学と日本の大学との共修事例-(第5回)」を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内外でのフィールドワークを必須とする本研究においては、コロナ禍の影響を大きく受けているが、2022年度半ばからは現場に赴いての調査などを行っている。 JOCV研究では、現役教員や元教員に加え、校長などの管理職や教育委員会関係者への対面インタビューと「OV教員リレートーク」が質的調査の機会となっている。数値に表れにくい日々の業務上の葛藤や離職に至る機微等は、「国際協力経験教員研究会」や「関西合同OV教員研究会」、あるいは「兵庫OV教員研究会」において意見交換を積み重ねてきた。 ISL研究については、研究計画調書で各国のJOCV隊員の任期中のパフォーマンスにヒントを得ながら、実際にフィリピン、カンボジア、ブータンでの活動において試行錯誤を繰り返すとしたが、コロナ禍のために対象プロジェクトの再構築が必要となっている。カンボジアにおいてはメコン大学や近畿圏内の自治体から現職派遣されているJOCV隊員の協力を得て2022年12月に短期ISLに関するF/Sを行った。 また、2023年2月下旬から2週間、本研究の文脈では短期ISLにあたるトルコでのJICA国際緊急援助隊(JDR)に参加した。その派遣前研修と現地活動、帰国後の報告書作成のプロセスは、汎用可能な短期ISLプログラムのモデルづくりでも応用できることを体感した。加えて、2023年3月にはタイで開催されたAPAIE(Asia Pacific Association for International Education)年次大会において、各国の大学のサービスラーニングプログラムに関する情報収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
JOCV研究については、JV教員に加え、引き続き彼ら・彼女らを取り巻く人々からの情報の収集に努める。対面でのインタビュイーとウェビナーの「OV教員リレートーク」のスピーカーの個別ケースから推察される傾向を基に、JOCV任期中の前・中・後期別の状況や帰国後のキャリア等を問うアンケート調査を行う。 「国際協力経験教員研究会」メンバーの協力を得て、持続可能な教育現場づくりをテーマとする成果物の作成に着手する。 また、昨今の開発途上国の教育環境や教授法には後発性優位が見られ、必ずしも日本での教育経験に優位性があるとは限らないことから、教育協力ボランティアが派遣前に獲得しておきたい技術や手法があるに違いない。これらの推定を具体的に確認するために配属先のカウンターパートや管理職等にもヒアリングを行いたい。さらに、OV教員を送り出した職場の管理職や教育委員会関係者からは、帰国後のOV教員の活用についてのビジョンを聞き取り、当人とのキャリア・イメージとの齟齬を見ると共に、ビジネスセクターの人事事例とも比較する。 ISL研究については、フィリピン、ブータンでのISLプログラムの再開を期待しつつも、2022年度からスタートした沖縄県内と2023年8月に予定しているカンボジアでの短期ISLプログラムのそれぞれの参加者を対象とした一連のレディネス、現地活動、フォローアップのプロセス毎の半構造化インタビューと、現地活動中に各自が作成するデブリーフィングシート(DS)をまとめたポートフォリオを分析する。ルーブリック評価では、参加者が派遣前と派遣後に作成するルーブリック表の比較によって項目毎の効果・効用を数値化する。加えて、フィリピン、カンボジア、ブータン以外でも短期ISLのフィールドを探るためにF/Sを行いたい。
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