研究課題/領域番号 |
20K02450
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島田 康行 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90206178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 高校国語 / 学習指導要領 / 書くこと / 授業改善 / 高大接続 / 教育課程 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、高校国語教育の課題が、今回の学習指導要領の改訂によって解決に向かうのか否か、高校国語科の授業がどのように変わるのか/変わらないのかを明らかにすることを目的とする。 具体的には、入学直後の大学初年次生と、高校の国語教員の双方に対する調査を広範囲に、継続的に実施し、教育課程改訂の前後の期間における授業内容の変化の状況を捉えることで、授業改善のための具体的な示唆を得ようとするものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、これまで長く指摘されてきた高校国語科の課題 ―すなわち「読むこと」の指導に比べて「話すこと・聞くこと」「書くこと」の指導が十分でないこと、所与の教材の読解指導が重視されるあまり、主体的な表現に関する指導が軽視されていることなど― が、今回の学習指導要領の改訂によって解決に向かうのか、高校国語科の授業はいかに変わるのか、という問いに答えようとする。具体的には、新しい学習指導要領が施行される前後の期間において、高校国語の授業の実態を継続的に観察することで、その改訂が授業のあり方にどのように反映されるのかを捕捉し、その趣旨の浸透状況を経年的に明らかにすることを目的とする。 本年度は、当初の計画にしたがって、一定の規模で継続的な調査を行い、授業内容の経年的な変化の捕捉を試みた。具体的には、3つの国立大学の新入生約300名を調査対象として、対象者が高校在学中に受けた高校国語の授業内容が、現行/新・学習指導要領の個々の指導事項をどの程度踏まえたものであったのかを尋ねる質問紙調査を実施した。現在、この回答結果の分析作業を進めているが、経年的な比較において、いくつかの項目で授業内容の変化を指摘し得る特徴を見出している。 近年、GIGAスクール構想の実現が加速され、一人一台端末の整備が急速に進められて、国語教育にも新たな可能性が開かれている。こうした中で、高校における国語の学習状況も変化を遂げつつあることが予想される。大学生の記憶をもとにした質問紙調査と、高校国語教員への聞き取り調査を中心とする本研究は、こうした状況の変化をも捕捉し得ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、研究計画の一部に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた部分があった。すなわち、本研究はその全期間を通じて、新しい学習指導要領の告示を受け、また共通テストの導入を控え、すでに指導内容の見直しと授業改善に取り組む高校教員に注目し、全国で先進的な取り組みを試みる高校教員の協力を得て、授業実践を追跡して記録・分析を行うとともに、継続的なインタビュー調査を実施することで、彼らの意識がどのように変わり、それが授業改善にどのように反映されたのかを明らかにすることを企図していた。しかし、本年度も、新型コロナウイルス感染症の全国的拡大が続く中で、各地の高校を訪問しての実地調査は制限的に実施せざるを得ない状況が続いた。当初予定した旅費の支出は、研究資料の購入など研究環境の整備に振替えた。この点は予定通りの進展となっていない。 ただ、そうした中でも、研究への協力を引き受けてもらえる高校教員への聞き取り調査を部分的に開始できており、オンラインによる会議を併用することで研究を進めている。授業実践の記録とインタビュー調査の対象となる高校を増やす代わりに、一校当たりの調査を拡充することで、調査内容を質的に深めることが可能となっている。 また、前年度、教員のネットワークを活用して実施した全国の教員約100名を対象とする質問紙調査の結果を整理し、感染症拡大の状況下で、新しい形態で授業に取り組む高校教員の意識を窺うためのデータを得た。この調査は当初計画していた調査の代替となるのみならず、本研究に新たな視点を加えるものとして、本年度の研究にも生かされている。 また、大学新入生を対象とする質問紙調査は、複数の大学の教員の協力を得て、継続的に進めているものであるが、本年度もじゅうぶんな量のデータが収集された。現在、その分析を進めている。この調査に関しては予定通り進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画を着実に推し進めていくものとする。大学新入生を対象とする質問紙調査は、オンラインであってもこれまでと変わらず質・量ともにじゅうぶんなデータが収集できる見通しが立っている。この実績を踏まえ、各地の大学教員の協力のもとに調査を継続する。 また、新型コロナウイルス感染症は収束しつつあり、高校訪問も近年よりは実施しやすい状況になりつつある。本年度は、各地の高校を訪問し、教員の実践を記録し、インタビューを行う調査を本格化させたい。これまで、現地調査に替えて、授業案や実践記録を提供してもらったり、オンラインによるインタビューを実施したりしてきたが、今年度は実地調査に切り替える方向で準備を進めている。 なお、この調査を継続することで、本研究には新たな視点が付け加わっている。すなわち、近年のコロナ禍において、またGIGAスクール構想の実現が加速される中で、対面授業を前提としない新たな形態による国語科の指導がいかに行われたか、その中で「書くこと」の力がどのように育まれたかという点である。令和3年度から5年度の大学新入生対象の質問紙調査は、その実態の一端を浮き彫りにすることになる。それを新しい学習指導要領への移行や大学入試改革の影響と切り分けながら明らかにしていくことを目指したい。そのためには高校教員を対象とする聞き取り調査の内容・方法にいっそうの吟味・検討を加えることが必要となる。 以上、本研究は新学習指導要領施行前後の高校国語の授業がどのように変化するかを捉えようとデザインされたものだが、研究に新たな観点を加え、調査の手法にいささかの変更を加えて遂行する。すなわち、当初の目的を保持しつつ、新型コロナウイルス感染症拡大を背景とするGIGAスクール構想の実現によって、国語科の新たな授業形態が学習者の国語学力の伸長に与える影響を捉えることを目指すこととする。
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