研究課題/領域番号 |
20K02462
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
山本 珠美 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (60380200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 大学開放 / 大学拡張 / 開かれた大学 / 生涯学習 |
研究開始時の研究の概要 |
近代国家形成期の明治20年代に日本に紹介された欧米各国のUniversity Extension(大学拡張;第二次大戦後は大学開放と訳される)は、大学の正規入学生のみならず、学びを求めている多様な人々に大学の有する教育機会を拡張する取組を指す言葉である。近年盛んに喧伝される「リカレント教育」や「社会人の学び直し」の源流に位置する概念である。 大学拡張・大学開放が、明治~昭和戦前・戦後期の潜伏期間を経て、本格化に向けて動き出すのが1960-70年代である。本研究ではこの期間に着目し、当時のキーワードであった「開かれた大学」の思想的背景と具体的実践を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は「開かれた大学」という考え方の源流について、主に2つの点から研究を進めた。 1つ目は、家永豊吉が明治20年代半ばに英米のUniversity Extensionを紹介してから、明治40年代に京都帝国大学が大学拡張に本格的に取り組むようになるまでの、主に明治30年代の「大学を開く」ことに関する議論を追った。University Extensionが語られる背景には、大学が閉鎖的であるという認識と批判があった。当時はドイツの大学からの影響が大きかったことから、文部省外国留学生のうち明治30年代前半にドイツに留学した谷本富、溝淵進馬らの教育学者が、帰国後にドイツの大学拡張をどのように紹介したのか、あわせて検討した。 2つ目は、京都帝国大学京都医科大学講習科の設置の背景と反響を明らかにした。明治41年4月、医術開業免状を有する者(開業医)に医学の新知識を与えることを目的に設置が決定された同講習科は、明治43年8月開始の全分科大学による夏期講演会(聴講資格不問)とあわせて、京都帝大の学外者に知識を普及する取組であるが、なぜ明治40年代に京都帝大で相次いで大学拡張(University Extension)の取組が行われたのか、背景が十分明らかにされていなかった。大学拡張の歴史研究という点では、京都帝大の取組は単に同大で戦前長く続いたというだけでなく、東京帝大を含む他大学が模倣することになった重要な取組である。また、京都医科大学講習科・夏期講演会は、明治10年代から存在した1話完結・オムニバス形式の通俗講談会とは一線を画す「系統的学習のための連続講義」であり、講習・講演を担当する教授らへの報酬のあり方が議論され、最終的に予算化されたことも注目点である。大学拡張の取組を実施する上で、担当教授らの負担にいかに応えるかという従来あまり検討されてこなかった側面にも焦点を当てて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、他大学の図書館・文書館の多くが学外者利用への制限を継続していた。そのため、昨年度報告書に記載したとおり、副題に掲げている1960-70年代という時代に拘らず、「開かれた大学」思想の源流に関して調査を進めることで、不足分を補っている。本年度については、20世紀初頭の「開かれた大学」思想について、京都帝大に主たる焦点を当てて研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため、2021-2022年度の方向性を継続して「開かれた大学」思想の源流をたどることとする。過去の科研費の成果として刊行した拙著『近代日本の大学拡張』(学文社、2020年)では、大学拡張を大学自身の自主性と組織性に基づく取組と規定したため、学外の組織・団体との関係性についてはほとんど検討することがなかった。しかしながら、京都帝大の事例研究で判明したとおり、学外からの働きかけは重要であった。2022年度は医師会等の医師の団体について明らかにしたが、教師の団体である教育会をはじめ、日露戦争後に特に顕著となった新聞メディアとの関係にも注目して研究を進めたい。
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