研究課題/領域番号 |
20K02507
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 公正労働基準法 / 団体交渉協約 / 教員組合 / 給特法 / 労働基準法 / 教員超勤訴訟 / 司法による教育政策形成 / 労働基本権 / 労使関係法 / 労働基準法上の労働時間 / テイラー法 / 一年単位の変形労働時間制 / 労働時間概念 / 勤務時間 / 労働法 / 団体交渉 / 教育財政 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本の公立学校教員の「多忙化」問題を解消するために求められるあるべき勤務時間管理の方式を追究することを目的としている。すなわち、米国の団体交渉モデルによる勤務時間管理の方式を検討することにより、①教員の長時間労働を是正する法的措置の在り方、また、②教員の職務にふさわしい勤務時間管理の在り方を検討する。
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研究実績の概要 |
本年度は、主に以下の二つの課題を遂行した。第一に、米国における連邦法上の労働基準法制を調査した。具体的には、1937年に連邦法として制定された公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)の分析を行った。そこでは、被用者の最低賃金が定められ(6条)、また、週40時間を超える労働に対して、通常賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払うことが義務付けられている(第7条)。ただし、学校教員(teacher)に関しては、「専門的被用者」として、同法の最低賃金規定と割増賃金規定の双方から適用除外される(13条)。この適用除外は、対象者が十分な交渉力をもつゆえ、職種に応じた高い処遇や固有の勤務時間管理を獲得しうる者と想定されている。団体交渉方式にもとづく公立学校教員の勤務時間管理は、専門職であることを理由として、一般的な労働基準立法から適用除外された上で成立していることが明らかとなった。 第二に、2022年8月25日に東京高裁にて言い渡された埼玉教員超勤訴訟に関する分析を行い、地裁判決からみた高裁判決の意義と問題を明らかにした。高裁判決は、控訴棄却とされたため、原告敗訴と一般的に評価されているものの、他方で、地裁判決にて認められた教員の時間外労働の「労働基準法上の労働時間」該当性については、高裁判決でもこれを認定した。また、高裁判決においても、労働基準法32条に定められた労働時間の上限を超えて教員を働かせた場合、国家賠償法上も違法となりうるというロジックが認められた。この法律判断は、教員の時間外労働を「自発的行為」とする文部科学省解釈を正面から否定するものであり、また、現行の上限指針にもとづき、時間外の在校等時間が月45時間以内にとどめられたとしても、違法な働かせ方となりうることを明らかにした。 なお、これらの研究成果については、2022年6月に単著を刊行し、アウトリーチ活動に務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国の団体交渉モデルにもとづく教員の勤務時間管理に関する法的枠組みについては、これまでの研究により概ねその構造が明らかとなった。他方で、その運用実態に関しては、新型コロナウイルス感染症にともなうアメリカ国内の公立学校の入構規制により現地調査を十分に行うことができなかった。法文や資料等で判然としない運用実態に関しては、関係者へのメールによる質問、Zoomを用いたオンラインインタビューによって代替したものの、学校内での参与観察等についてのみ、次年度に実施するため、研究期間を延長して対応することとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した次年度においては、当初予定していた教員の勤務時間管理の運用実態に関する調査をニューヨーク市学区内の公立学校において可及的速やかに実施することを計画している。これまでの研究成果を踏まえたうえで、得られた知見を国内媒体にとどまらぬ他学術領域の媒体を通じて発信していく予定である。
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