研究課題/領域番号 |
20K02515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 上智大学 (2022-2023) 京都大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
西平 直 上智大学, グリーフケア研究所, 教授 (90228205)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ブータン / モラル / スピリチュアリティ / 身体 / コンパッション / モラル育成 / 人格形成 / コスモロジー / 稽古 / モラル形成 / サステナビリティ / 貝原益軒 / 前近代 / 次世代 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「モラルの育成」を主題とする。ブータン王国においてインタビュー調査を行い、次世代の「モラルの育成」を「次世代支援」の一環として考察する。「サステナビリティ」と「スピリチュアリティ」が重要な論点となる。 子育て・学校教育・産業育成・文化保存・環境保護を総合的に「次世代支援」と捉え、ブータン社会全体の「モラル育成」の仕組みに焦点を当てる。理論研究としては、「サステナビリティにとってのスピリチュアリティの意味」を明確にする。 ブータン社会に即して「次世代支援とモラル育成の関連」を考察する、フィールド研究と理論研究を往復する研究である。
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研究実績の概要 |
フィールド調査が可能になり、2023年8月、約3週間、ブータンに滞在し、本研究に必要なインタビューを実施した。学生、NPO職員、元教育大臣など、多様な人たちから、「現代ブータンにおけるモラルの育成」について聞き取り調査を行った。とりわけ、現代ブータン文学を代表するクンザン・チョデン(Ashi Kunsang Choden)女師から長時間にわたる聞き取りができたことは貴重であった。またウラ村の調査も実施でき、興味深い聞き取り調査が実施された。研究成果の発表は準備中であり、2024年度以降の予定である。 理論研究も並行して進めた。1)自らの「モラル形成」の記憶をたどる試みを継続し、月刊『みすず』誌上に連載していたが、その全体を整理し直し『内的経験 こころの記憶に語らせて』(みすず書房、2023年)として出版した。本書では「モラル」という言葉を前面に出すことはしなかったが、社会的道徳規範という意味と同時に、個人の内面における迷いや葛藤などを含めた「モラル」の視点を痛感し、スピリチュアリティとの関連について糸口をつかむことが出来た。 2)「モラル形成」を身体の視点から問い直すために、月刊『武道』(日本武道館)に毎月の連載を継続した。例えば、「無心」の思想をめぐる考察(第五回「無心は「考えない」ことか-無心と無意識」、第六回「無心は役に立つか-無心は胆力を練る」、あるいは、コツとカンに関する考察(第十二回「勘(2)-勘は「覚」の体験である」、第十四回「コツの探究(1)-コツ研究の言葉」、第十五回「コツの探究(2)-現象学的コツ研究」、第十六回「コツの探究(3)-現象学的コツ研究・再論」)。 また、グリーフケア公開講座や、人間性心理学会42回大会シンポジウムなど、多くの機会に講演やシンポジストとして登壇し、その都度、研究の成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、ブータンにおけるインタビュー調査が可能になり、今後も継続してゆく予定である。しかしフィールド調査が実施できなかった期間に理論研究を進め、「モラル形成」を問う視点が明確になってきた。一、個人的な内面における迷いや悩みの視点、二、身体の使い方やわざの習得に関わる視点、三、コンパッションの視点。 そうした視点は、以下のような講演やセミナー、シンポジウムの機会において、断片的に報告され、多くの方からコメントをいただく中で、論点が一層明確になってきた。例えば、以下のような機会である。「悲嘆と養生-癒えること・癒えぬこと」(上智大学グリーフケア公開講座)、「いのちの大切さを子どもたちに伝えるために -幼児教育の視点から」(中部大学、特別授業)、「Listening and Being: On the Theory of Mushin (無心)」(40th, International Human Science Research Conference, Tokyo)「コンパッションとスピリチュアルケア」(スピリチュアルケア学会第16回大会、愛知学院大学)、「スピリチュアリティ- 四つの理解」(NPO法人スピリチュアルケア研究会ちば)、 「『魂のライフサイクル』という試み -その挑戦と後日談」(トランスパーソナル心理学/精神医学会 第 23 回学術大会、同志社大学)、 「稽古の思想と矛盾を抱え込むリーダーの在り方 -守破離の思想から」(パラドキシカル・リーダーシップ養成講座、京都大学)、 『「わざの伝承」とコンパッション -私を感じる・内側を耕す・コツをつかむ』"Compassion and the Transmission of Waza - sensing myself, inner cultivation, grasping the kotsu" (Educating the heart and mind in the age of AI - Contemplative Education and Compassion-based Ethics in Japan 慶応大学)。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2回の海外調査と理論研究を計画している。 一、ブータンにおけるインタビュー調査を実行する。1)NPOローデン基金(後述)の活動調査。とりわけ奨学金需給学生たちへのインタビューを実施。またそのスタッフから聞き取り調査。2)RTC(ロイヤル・ティンプー・カレッジ)の学生インタビュー。3)クンザン・チョデン(Ashi Kunsang Choden)女史からの聞き取り調査、並びに、ティンプー在住の英国人僧侶、ラマ・シェンペン(Lama Shenpen)氏からの聞き取り調査。 二、ドイツ、スイス、ベルギーにおける聞き取り調査、研究打合せ。ブータン調査と理論研究をつなぐために、1)スイスの「ブータン協会」を訪問しブータン研究・交流について聞き取り調査。2)同「スイス・ブータン協会」会長Claudio Zingg博士(教育心理学)と研究打合せ、3)ブータン研究における精神分析理論・治療実践の可能性について研究打合せ(ベルギー精神分析学会会長、Rudi Vermote博士)。 三、理論研究は「ケアとコンパッション」について。1)精神分析・心理学とケアの関連に焦点を当て、スピリチュアルケア、グリーフケアの健闘。2)日本思想における「モラル形成」、とりわけ、前近代の「身体」に焦点を当てた自己形成の思想。3)日本思想の知恵を英文にして海外の研究者に発信。4)スピリチュアリティの位相を比較研究するエピステモロジー(存在・認識論的地平)の基礎研究。なお、依頼講演などの機会に、引き続き、研究の成果を発信する予定である。
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