研究実績の概要 |
本研究は第三者委員会がいじめを認定した事案について新聞報道を活用し、いじめが関連した自殺の実態を量的に明らかにすることを目的とする。また、それより明示的な知識を得る。 対象は2012年4月から2020年3月末までの8年間に起こった小、中、高校生のいじめが関連した自殺である。この「いじめが関連した自殺」とは,第三者委員会もしくは学校の設置者が「いじめを認定したもの」をいう。分析は,性別,学年,学期,自殺のあった月と曜日などの各項目について単純集計を行った。性別や学年ごとのいじめの有無を分析するためにカイ二乗検定を行い有意であった場合には調整残差分析を行った。 結果は,いじめが関連した自殺は72件あり,校種別では小学生5件,中学生45件,高校生22件であった。性別では中学生では男子26人(59.1%),女子18人(40.9%),高校生では男子14人(61.9%),女子8人(38.1%)で,中学生と高校生ともに男子が約6割と多かった。学年別では中学生で1年生13人(28.9%)、2年生20人(44.4%),3年生12人(26.7%),高校生では1年生6人(27.3%),2年生11人(50.0%),3年生5人(22.7%)であり,中学高校ともに2年生が約半数と多かった。カイ二乗検定の結果は中学生の学年間で有意差があり、調整残差分析を行うと中学3年生でいじめによる自殺が有意に少なかった(p<0.01)。このほか月別では7月が12件と多く3月と10月は2件と少なかった。曜日では水曜日が16件と多く土曜日が4件と少なかった。 本研究ではいじめが関連した自殺の実態を具体的に把握できた。これらより説明文やグラフといった明示的知識で示せる。これまでの教師らの自殺対策は、「サインを見逃さない」「気づく」といった経験知(暗黙知)に頼っていたが、データや根拠による形式知を導入が可能となった。
|